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俺達の記念日③

それでもここは快く行かせてあげたい。 こんなに嬉しそうにしているはるを見るのは久しぶりだし。 俺が『いいよ、行っておいで』と言えばもっと幸せそうな笑顔が見れるのは確かだから。 記念日はそれが終わってからでもいいか・・・ 俺ははるさんに甘い。その笑顔が見たいって思う気持ちが勝ってしまう。 「いいよ、行っておいで。こんな機会滅多にないんでしょ」 きょとんした顔で俺を見てにっこり笑う。 「行っておいでじゃないよ。あきも一緒に行くんだから。俺のアシスタントお願いね」 ええ??なんで俺?! アシスタントなら他のスタッフでもできるのに。 「これは命令だよ。それにパーティは一緒に出る予定だからスーツ持っていってね」 隣で俺の指を弄びながらパンフレットに恋してるはるはなんだか嬉しそうだったから、出来ることはしてあげたいってまた甘やかしてしまった。 そしてヘアショー当日の早朝。 俺にスーツを持って行けっていってたはるが、さっさと準備してお気に入りの赤いブランドバッグを持って俺の手を取った。 「東京まで運転お願いね。帰りは運転するから」 上機嫌にさせてるのが、俺じゃなくていくらファンだからってどこの誰だか知らない男に浮かれているのは面白くなかった。 せっかくのはるとのお出かけなのにテンション上がんないな・・・ 高速に乗って、ひたすらまっすぐな道を走る。 ヘアショーの打ち合わせをしながら、それでも時折デザイナーに話が飛ぶ。 いつもなら腿に置いてる手はそいつのパンフが握られている。 面白くない俺は、生返事。 横顔を見つめられてるのをわかっていても、敢えて知らん顔をした。 仕方ないじゃん。他の男話して喜んでるはるは見たくない。 「あき、具合悪い?」 気遣ってくれる言葉も首を振って応えた。 器が小さいんだよ。ごめん、気持ち良く相槌打てないや・・・ それからはるも口数が少なくなって到着までの車の中は最悪だった。

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