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俺達の記念日⑤
だって、面識があって話だって対等にしてる。
憧れる芸能人とは訳が違う。相手もちゃんとはるのことを知っていて許してる態度。
イラつきはドンドン膨らんでそのまま帰ってしまおうかって踵を返す。
・・・とりあえずはホテルに戻ろう。
ここにいても俺には要はなさそうだし。
これ以上あのはるのナメた態度は見たくなかった。
俺の目の前で・・・あれはない。
入ってきたドアに戻ろうと早足で歩く。
今もしはるに呼び止められても、振り向きたくないから。子供じみてるのはわかってるけど、許せないものは許せないから。
ドアに手を掛けて重い扉に力を入れた。
なのに左肘あたりが急に重くなる。
今引き止めたって笑顔で「会えて良かったね」なんて言えない。
また言わなくてもいいことまで言ってしまう。
でもその手の力は緩まずグッと引っ張られた。
「はる・・・」
振り向いた表情は嫌そうだったと思う。
振り返ればそこにいたのは見たこともない女性2人だった。
「「AKIRA」さんですよね?モデルの・・・」
俺を見る目はさっきのはると同じキラキラした目。
「そうですけど・・・」
seputoのモデルとしてきてる訳じゃないからドギマギしてしまう。
「わぁぁ、そうかなって思って・・・ファンなんです!サインとかもらえますか?」
2人は顔を見合わせきゃっきゃとはしゃぐ。
手元に出された手帳の表紙に白い油性マジックでサインをした。
「今回のポスター凄くカッコよくて・・写メ取って、待ち受けにしてるんです!」
そう言いながら2人は代わる代わるスマホ画面を見せてくれた。
それぞれに加工して画面を飾ってる、俺。
本当にファンでいて下さってるんだ・・
「ありがとうございます。待ち受けって恥ずかしいですけど、これからもよろしくお願いします」
手を差し出され、両手で握り締める。
「今夜に前夜祭いらっしゃいますか?」
「はい、参加させて頂きます。ただ、モデルとして来てるわけではないので・・」
「わかりました。でも少しお声かけてもいいですか?」
「少しなら・・連れがいますので・・」
「はい、ご迷惑おかけしないようにします!」
「よろしくお願いします」
前夜祭だってはるはどうせあいつといるんだろうし・・
少しくらいはいいよな。
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