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俺達の記念日⑧
なんだよ。結局、俺との記念日より憧れの奴との約束を取るのか。
頭の中ではわかっててもどうにも感情ってやつが渦を巻く。
「パーティ行けないよね・・・」
楽しみにしてたのもわかってる。俺もはると行くのを楽しみにしてた。
嘘を嘘で上塗りして最初の嘘に後悔する。
「もう少し休んだら大丈夫、一緒に行こう」
これ以上、はると彼奴の並んだ姿は見たくない。
「本当に?」
不安そうに振り返るはるを見て、昔なら『誰にも触らせちゃダメだから』って言ってたと思う。
その言葉さえ出てこない。
寛容な大人はそんなことは言わない。
縋りたくても縋れない俺の変なプライド。そんなものを作ってしまった。
ふぅっと溜息を吐いたはるが頬を撫でる。
「わかった。折角来たんだもんね、でも無理しないでよ、明日が本番だから」
その溜息にさえ、疑ってしまう。面倒くさいって思ったかなって。
ああ、こんな感じで楽しめるのかな。
時間ギリギリまで休んで、スーツに着替えて支度をする。
その間、ずっとそばにいてくれたことで気持ちは穏やかさを取り戻していた。
嘘で練り固めなくて良かった。そう思うことと、はるが俺を見ていてくれることが堪らなく嬉しかった。
俺のネクタイを直してポンと喉元を叩く。
「かっこいいね。あき素敵だよ」
可愛く笑うはるを抱きしめる。
「はるもいい感じ。はるのスーツ姿好きなんだ」
細身で綺麗なラインが妙にそそる。男の姿なんてなんとも思わないけど、はるのスーツ姿は好きなんだよな。
「ありがとう。スーツで言えばあきのほうが似合ってる。素敵だよ。俺の旦那様は」
ふふって笑ってキスをしてくれる。
「今日はね、次の仕事に繋げる接待だと思ってるんだ。だから協力してね」
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