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俺達の記念日⑨

接待ってこういうことかよ・・・ 人の波をすり抜け渡るように、はるは次々と今後の仕事に繋げる為に、知り合いから知り合いに営業をかけて回ってる。 そばに彼奴を置いて。俺は置き去りで。 彼奴が顔つなぎをしてるのはわかる。 ・・・俺がきた意味あんの? これなら部屋で寝てても良かったんじゃないの? わざわざスーツまで着てここにいる意味がわからない。 手に持ったシャンパンを面白くなく、ちびちびと口をつける。 ずらりと並んだ料理も食べる気になんないし。 この中で1番白けた面でいるのは俺だけかもしれない。 目の前にいる数百人の人達はみんな美容師で志しを高く持った人達だ。 場違いなんだよな・・ そんな面白くない思考で会場内を見渡す。 そこに数時間前にあった女性がさっきとは打って変わった綺麗な洋服を纏って俺に前にキラキラした笑顔で近寄って来た。 「先ほどは・・・」 そこそこ可愛い2人は多分俺と同じくらいの年格好だと思う。 俺のファンだと嬉しいことに待ち受けにまでしてくれてseputoを応援してくれてる。 だって着てる洋服はseputoの新作だ。 高階さんが自慢気に見せてくれたのを覚えてる。 「お連れの方は・・・?」 キョロキョロ見渡して俺の返事を待ってる。面白くない俺は投げやりに言い放つ。 「今、花巻さんとご挨拶に回ってます」 そう言えば、一人がキョロキョロとして花巻さんを探して見つけたようだった。 「嘘・・・haruさんですか?お連れの方って」 「・・・そうですけど・・はるを知ってるんですか?」 「知ってるもなにも・・・超有名ですよ。業界誌で引っ張りだこですし。それにしても・・・花巻さんとharuさんって絵になりますよね・・」 見惚れるようにふたりの視線は彼奴とはるを追う。 1番聞きたくない言葉。俺のモノなのに誰かとお似合いだって言われる屈辱。 俺達の関係を知らないから聞く言葉に虫酸が走る。 「そう言えば、噂なんですけど、花巻さんとharuさんってコラボしてセット本出す予定とか・・・」 セット本?! 「そうそう、基本からアレンジまでの凄い本が出るって聞いた!」 聞いてない。俺は一言もそんな話は聞いてない。

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