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俺達の記念日⑩

仕事のことだから詳しくなくて当然だし。はるもちゃんと決まってからいうつもりだったかもしれないし。 でも、面白くない。 秘密を彼奴と共有してると思うとモヤモヤして面白くないんだ。 彼女達が話しかけては俺は愛想笑いで曖昧な相槌を打つ。 見たことも聞いたこともない演奏が終わって拍手が湧き上がった。 彼女達は知り合いに声をかけられ俺から離れて行く。 独りになって大きく溜息を吐いた。今日何回目の溜息だろう。 「見たことのない顔してるね、そんな顔もそそるよね」 ポンと肩に乗った温もりと聞き慣れた声に視線を向ける。 そこには俺の救世主が立っていた。 「・・・なんで?」 なんでこんな所にいるんだろう。いつも俺が悩んでる時に現れる。 「うちの会社も協賛なんだよ。そうなれば来るしかないよね〜」 肩から腕にかけてぴったりくっつけてそばに立つ。 「今日は面白いものが見れるよね。不機嫌の原因はあれかな?」 顎と視線で方向をさせば、彼奴がはるの背に腕を回して隙間なくへばりつき、愛想笑いをしていた。 「まあね、七井さんには初めての出版だし、花巻さんに世話になるしかないんだろうけど。気持ちいいものではないよな」 横目で俺を見ては苦笑いする。 「なんで俺がここにいるのか、連れてきたのか意味がわからない」 思ったままの感情を内田さんに愚痴る。 吐き出さないともうパンクしそうだ。 「あきら君、いくつだったっけ?」 なのに愚痴ったことに触れてこない。 「・・・もうすぐ24です」 「まだ若いね。でも、七井さんは33だよ。仕事に勝負かけてるのもわかるでしょ?俺にすればあの人は凄く努力してるし、将来、ビジョンをしっかり持って生きてるよ。なんのためだと思う?」

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