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俺達の記念日16

咄嗟に立ち上がろうとした内田さんの腕を掴んだ。 「待って下さい。はるは仕事してますから」 対処出来なければその時は・・・今ははるの気持ちを尊重したい。 立ち上がろうとするはるは足も立たない様子で座り込んでしまう。あんな酔い方するのは初めてで見たことがない。 抱え上げようとする彼奴とバーテンが示す方向。 それは入り口とは違う方向。 「あれはやばいんじゃないの?」 普通なら帰るはずだけどどうやら違うみたいだ。 はるは男で彼奴も男。でも、俺みたいに男のはるを好きになった。普通なんてない。人それぞれ嗜好がある訳だし。 内田さんに"待ってて"と伝え、立ち上がった。 奥へ連れていかれそうになるはるが目で何かを訴えるように俺を見た。 「はる!」 そう叫べば支えられた右手を俺へと伸ばした。 「すいません。連れが酔ってしまったみたいで」 駆け寄り、伸ばした手を取り身体を引き寄せる。腕にスッポリ収まったはるは離さないと言わんばかりに力なくしがみついた。 「仕事は終わった?」 胸元に顔を埋めるはるに聞いてみる。微かに"うん"と頷く。 「七井君、具合悪そうだから介抱しようと思ってね」 悪びれた笑みを浮かべているように見える。見えるだけかもしれないけど目配せをしたあの様子は企みがあるように見えた。 「連れて帰ります。お世話かけました」 頭を下げれば後ずさり『気をつけて、明日よろしく』とだけ言い残し立ち去った。 内田さんはカウンターに移り、バーテンと何かやりとりをしている。きっと俺が見た同じ場面を見てたんだろう。 はるを抱え直してBARを後にする。エレベーターの前で内田さんが追いついてきた。 「大丈夫?七井さん」 貸してくれようとする手を柔く遮った。今は誰にもはるを触らせたくなくて膝を救いはるを抱え上げた。 部屋までついて来てくれた内田さんが何度も振り返りながら、キーを開けてくれる。 「ありがとうございます。内田さん」 「いいよ、なんか大変だったよね。バーテンはさ、金摑まされてたみたいだ。花巻さんには幻滅だわ」 ベッドに寝かせたはるの髪を撫で、溜息を吐いた。

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