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第6話
ルキアは問題用紙を見て驚いた。
そこに書かれていたのは自分が大学時代にした医療の試験問題に良く似ていたからだ。
(これって…やっぱり…俺仕様なのかな? )
ルキアは考えながらも問題を解いていく。
その時試験官が、
「この問題は、第三王子アルフ様がおつくりになりました。今回の試験の合格者はアルフ様、第一王女サニー様の侍医になります。心して書くように」
更に広場がザワつく。
町民にとってこの上ない出世に繋がる職種である。
改めて皆真剣な様子で問題に取り組んでいく。
(そっか、なんで女の子も? と思ってたけど、王女の侍医も募集してるのか)
この国では女も仕事を持っており、昔の時代みたいに女は家庭に入るという風習はない。
(本当に不思議な世界だ、現代と似ている所もいっぱいある。日本の昔なんて女の人が医者なんて余り聞かなかったもんな)
ルキアは自分が学んだ歴史を思い返していた。
(とりあえずこれをクリアしないと、次に進めないから頑張るしかない! )
ルキアは集中し問題を解いていく。
周りでは解いたもの達が帰っていく。
ルキアも最後の問題にたどり着いていた。
(えーっと、これで最後か、何何? えっ? 主の為に死ねますか? だって? )
(多分ハイが正解なんだよな? でも、俺死んだらゲームクリア出来ないし、そもそも異世界で死んだら現代に戻れるのかもわかんないし…イイエは許されないだろうな…)
ルキアはしばらく考えて覚悟を決めて答えを書いた。
(よし! 後はどうとでもなれ! )
ルキアは解答用紙を試験官に渡し、帰路につく。
診療所に戻るとディーンと妹のメイカがいた。
「メイカちゃん、帰ってきてたの? 」
「ルキアさん、お久しぶりです。先程戻ったのよ。試験はどうでした? 」
「う~ん、とりあえず全部は埋めたけど、受かるかはわかんないな…」
「大丈夫だよ! ルキアなら医療の覚えもいいし、魔法も使えるから! 」
「そうね、宮殿で働いて更に魔法を習得出来ると幅も広がるわよ」
2人に応援されてルキアも笑うしかなかった。
「本当に2人はポジティブだな。ありがとうございます! こんな俺を住まわせてくれて」
ルキアはこの診療所にきた経緯を思い浮かべていた。
どうやらルキアは天涯孤独、フラフラしながらケガ人を見つけると、治療してご飯をもらっていたらしい。
たまたまディーンの患者もいたようで、その患者から話を聞いたディーンがルキアを診療所で雇ってくれたらしい。
縁もゆかりもないルキアを引き取って医者に育ててくれたディーンには感謝しかない。
ゲームの中だろうとルキアはこの2人が大好きだった。
「やめろよ、照れるじゃないか! もし受かって宮殿で働いても、診療所には遊びに来てくれよ? 」
「まだ、受かってもないのに気が早いですよ」
「ルキアなら、大丈夫! なんせ俺が育てたんだから! 」
ディーンは自信を持って胸を張った。
「もう、兄さんったら」
メイカは久しぶりに戻ってきて相変わらずの兄に嬉しそうだ。
(兄妹っていいな、俺は一人っ子だったから羨ましい…)
ルキアは兄妹のやり取りを羨ましそうに眺める。
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試験から1週間がすぎた。
ルキアは相変わらず診療所で働いている。
(やっぱり無理だったのかな? でも落ちたなら、今後どうしたらいいんだろう? )
その時、
「ルキア! ルキア! 早くこい! 」
ディーンの慌ててた声が聞こえる。
「兄貴、どうしたんです? 急患ですか? 」
ルキアは診療所の受付の方に走って行った。
そこには騎士の格好をした兵士が、丸めた紙を片手に立っている。
「ルキア、来たぞ! 来たぞ! 宮殿から使いの人が! 」
ディーンが上擦った声でルキアを呼ぶ。
(まさか…本当に? )
ルキアは驚きを隠せず兵士の顔を見る。
「お前がルキアか? 吾輩は、アルフ王子の護衛ヤンデレと申す。お前を宮殿に案内する為に参った。早く準備をしろ」
「えっ? 今から? という事は…私は侍医に合格したのですか? 」
「そうだ、だから迎えにきた。アルフ王子から早く行けと言われてな」
「アルフ様が? 」
「全く、アルフ王子は人使いがあらい。吾輩は休みだったのに、急に呼び出された。お前を連れて行ったら、仕事は終わりだから早くしてくれ! 」
(ヤケに機嫌悪いと思ったら休み返上だったのか )
ルキアはこのヤンデレが不憫に思えてきた。
(アルフ様は結構ワンマンなのかな? )
ルキアはヤンデレの為にも急いで準備をする。
「兄貴、急ですが行ってきます! 」
「ああ、達者でな…」
ディーンも呆気に取られながらルキアとヤンデレを送り出す。
「ルキア、馬には乗れるか? 」
ヤンデレに聞かれルキアは分からなかった。
「さ、さあ? 乗った事はないので…でも運動神経はよい方なので、多分…」
「じゃあ、吾輩の後についてこい! 急いで宮殿に戻るぞ! 」
「は、はい! 」
有無を言わさない感じでルキアは馬にまたがる。
(お願いだ! ちゃんと走ってくれ! )
ルキアは馬の首元を擦りながらお願いする。
馬はルキアの願いを聞き暴れる事もせず走り出した。
(よかった! やっぱりゲームの中は出来る事が多い! )
ルキアはヤンデレの後ろを追いかけながら、これから始まる宮殿の生活に胸を踊らせた。
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