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第7話

ヤンデレとルキアは直ぐに宮殿に着いた。 ヤンデレの顔は覚えられてるのか門に着くと直ぐに扉が開いた。 「さっ、ルキア、馬を置いて吾輩についてこい。アルフ王子の所に案内する」 ヤンデレは相当早く帰りたいのか早足で宮殿の中に入っていく。 「ヤンデレさん、待って下さい! 」 迷わない様にヤンデレの後を追う。 「ヤンデレさん、宮殿って広いんですね? 色々扉がある…」 「早く宮殿内を覚えるんだぞ。入ってはいけない所がいっぱいあるからな。間違えて王女の部屋とか王様の部屋とか入ったら打首だからな? 」 「打首? こ、怖い…」 「まあ、その部屋の外には必ず護衛の物が立ってるから、間違える事はないがな」 ヤンデレは早足で歩きながらルキアにここは調理場、ここは入浴場と案内しながら歩いて行く。 (記憶力がなければ覚えられないな。よかった、暗記力の魔力(?)があって) ルキアはヤンデレの言ったことを全て頭に入れた。 早足で歩いていたヤンデレが急に止まる。 勢い余ってルキアはヤンデレの背中にぶつかる。 「痛! ヤンデレさん、急に止まらないで下さい! 」 「ほらここが第三王子アルフ様のお部屋だ。まずはここで挨拶しろ。その後、宮殿内の診療所に案内する」 「は、はい…」 (ここに、アルフ様が…あの日の事は覚えてるかな? ) トントン 「ヤンデレです。ルキア殿をお連れしました」 ルキアはドキドキしながらヤンデレの後に続き、部屋に入っていく。 「ああ、ヤンデレご苦労だったな。無理を言って済まない」 奥からアルフの声が聞こえる。 ルキアは部屋に入り見渡す。 部屋は広く入って直ぐにリビングみたいなソファとテーブルがあり、奥に執務をするデスクがあった。 そのデスクにアルフが座っている。横にはこないだアルフを探していた側近のガフがいた。 「本当ですよ、アルフ王子! 吾輩は本日休みで、意中の女と出かける予定だったんですよ! 振られたらアルフ王子のせいですからね! 」 ルキアは驚いた。ヤンデレは護衛、親衛隊長とは聞いたが、アルフにこんなに気さくに文句も言うとは思わなかったからだ。 「はは、悪い悪い! もう大丈夫だから早くその子の所へ行って上げなさい。診療所へはガフに案内させるよ」 「お願いしますよ! ではガフ様よろしくお願いします」 「分かりました」 そう言ってヤンデレはさっさと扉を開けて出ていった。 そのやり取りを見ていたルキアは、 (アルフ様はこんなに気さくなんだ…だから皆親しみを込めて話すのか! ヤンデレさんも文句は言っても仕事はちゃんとしている。よかった、自分が国王にするならいい人の方がいい) ルキアはホッとしてアルフを見た。 (本当に綺麗な顔をしている。男の俺でもドキドキしてしまう) 「ルキア殿、余り王子の顔を見てはいけません。基本国王一家を長く見つめるのはいけないとされています。宮殿内ではお気をつけを」 ガフに諭される。 「す、すいません。余りにもお綺麗なお顔をしていたので見とれてしまいました」 ルキアの発言にガフは呆気に取られ、アルフは大笑いをしだした。 「アハハ! そこまでストレートに褒められたのは、初めてだな。いつも皆チラチラ見ながら囁くだけなのに」 「アルフ様、そこは褒める所ではございませんよ」 ガフはアルフも諭す。 (ガフさんはアルフ様の側近だけど、しっかり意見は言える間柄なのか…) 「ガフ、そこまで堅くなる事はない。私の侍医になれば顔色を見る事もあろう」 アルフの発言にガフはため息をついた。 (多分…ガフさんは色々苦労してそうな気がする) 「さて、ルキア殿。あなたは今日からアルフ様の侍医になります。毎日脈をとり、健康状態を把握してください。それ以外は宮殿内の診療所で働いてもらいます」 「はい、分かりました。よろしくお願いします」 ルキアは膝をつき感謝のお礼をした。 「ルキア、そう堅苦しくなくてよいぞ。楽にしてくれ。さて、1つ君に尋ねたい事があるんだが…」 アルフに言われ顔をあげる。 「はい、なんでしょう? 」 「君の試験の解答用紙を見たのだが、最後の問題について君はどうしてこの答えを? 」 「えっ? アルフ様が解答用紙を見られたのですか? 」 ルキアは内心焦った。 (まずい、まさかアルフ様が見てるとは思わなかった…怒られるかな? ) 「もちろん、私の侍医を選ぶのに私が見なくてどうするんだ? ガフ! 」 「はい、ここに」 そう言ってガフはルキアの解答用紙をアルフに渡した。 「えーっと、主の為に死ねますか? の問題に君は(2人とも死なない方法を考えます)って書いてるけど、死にたくないって事かい? 」 (どうしよう! なんて説明すれば…そうだ! ) ルキアは深呼吸をして、 「い、いえ、死にたくないなんて全く思ってないです。ただ私がアルフ様の変わりに死んだとしても、その後にアルフ様が死んでも私には分かりません。もしアルフ様が死んでいたなら、私が死んでも意味がないので、それでしたら2人とも死なない方が良いのでは? と考えました! 」 「ほう、なるほど…そうゆう考えもあるな。確かに死に直面してると、君が死んだだけで私が生き残るとも限らないしな。面白い」 アルフもガフも納得した様な表情をしたので、ルキアは心の中で息をはいた。 (ふぅ~、何とか誤魔化せた! 先が思いやられるぜ! ) 「この、(2人とも死なない)って書いたのは君以外にもう1人だけだったよ」 「えっ? 他にもいたんですか? 」 ルキアは驚いた。この国の民なら絶対死ぬを選択すると思ったからだ。 「その方もアルフ様の侍医に? 」 「ああ、その子は女だから私の妹サニーの侍医になったぞ。確かチヒロって言ったかな? 」 アルフは言いながらガフを見る。 「はい、左様で。チヒロ殿はサニー様の侍医になっております」 「そうなんですね…」 (チヒロ…か。俺と同じ考えなんだ、どんな子なんだろう? ) 「さて、一通り説明もしたし、早速脈を測ってくれ」 「は、はい! 失礼します」

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