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第8話
ルキアは急いでアルフの元に向かい、
アルフがいるデスクの横に立とうとした。
しかし、急いで向かったせいでアルフにあと少しの所でコケてしまった。
「お待たせしまし…あっ! 」
「おっと! 」
ちょうどアルフに被さる形でコケてしまったので、アルフに抱きとめられる。
「ルキア、大丈夫かい? 」
「す、すいません。足元につまづいて…」
「ふふ、君は余程私に抱き締められたいのかな? 」
小さい声でアルフが言った。
「そ、そんな事は…すいません」
(もしかしてアルフ様、こないだの事おぼえてるのかな? )
「ゴホンッ! ルキア殿、アルフ様から離れて下さい」
ガフが咳払いをしながらルキアに離れる様に促す。
「は、はい! すいません! 」
「ルキア殿、もう少し落ち着いて下さい。むやみに皇族の方に抱きついたり、触ったりするのは重罪ですよ? 」
「もうガフはすぐ脅かす。私が良いと言えば良いのだ。なあルキア? 私はいつでも歓迎だぞ? 」
「アルフ様! お戯れはお辞めに! 」
「ハイハイ、ガフはまるで小姑だな」
反省の色のないアルフにガフは再度ため息をついた。
「ルキア殿、とりあえず落ち着いて下さい。それから、アルフ様の脈を…」
「は、はい! 」
アルフから離れてルキアは一呼吸する。
(ガフさんに怒られないようにしなきゃ! )
ルキアは真剣な顔になりアルフの腕を取り脈をみる。
(この元気な様子だと特に問題はなさそうだけど…ん? あれ? )
ルキアは脈がやけに乱れてる事に気づく。
(なんで? もしかして、アルフ様は元気な様に振舞ってるのか? )
「ルキア殿、どうかしましたか? 」
ガフは黙ったままのルキアを見て問う。
「えっと…もしかして…ですが、アルフ様体調悪いですか? 」
ルキアの発言にアルフとガフの顔色が変わる。
「ルキア、わかるのか? 」
さっきまでの陽気な感じではなく鋭い表情になる。
(えっ? なんかいけない事言ったかな? )
アルフとガフの変わり様にルキアは少し怯えた顔をした。
「悪い、ルキア。怒ってるんではなく驚いてるんだ」
アルフは一呼吸置いて、ルキアを怖がらせないように話しだした。
「実は、最近よく立ちくらみをする事があってな、何回か他の侍医に診てもらったんだが、特に問題ないと言われてな」
ガフも続けて説明する。
「他の侍医達は、みんな公務の疲れでよく眠れる薬や、精神を落ち着かせる薬とかを出されたのですが、一向に改善しないのですよ」
(体調が悪いのは、睡眠不足や、公務疲れではない…だとすると…イヤ、まさか…)
ルキアの頭にある考えがよぎる。
(よく、時代劇ドラマなどで、食べ物や飲み物に毒を入れて、少しずつ弱らせるのはあるけど…でも現実は毒味役のメイドや、執事がいるはずだが…)
「…キア? ルキア? ルキア! 」
余りにも黙ってしまったルキアにアルフは何回も声をかける。
「えっ? あっ、はい! 」
「どうした? 黙って? 何か思い当たる病名でもあるのか? 」
「いえ病名ではないのですが…まだ確信がもてず…」
「もしかして、毒を入れられてるって考えてるのか? それなら毒味がちゃんといるから違うと思うぞ? 」
「あっ、やっぱり毒味をする方がいらっしゃるのですね! じゃあ…」
また、ルキアは考え込む。
(毒味がいる…でも少量の毒なら摂取しても対して害にはならない。ただ少量の毒を同じ人間が毎日摂取すると、時間はかかるが体調に変化はあるはず…)
(もし、アルフ様が公の場で立ちくらみなどしてしまったら、周りは体が弱いと噂をするはず…)
(そうなると王位継承権にも影響がする…毒味が毎回同じ人間なのかによるのか? 毎回違う人間だと、その物達には大した影響はないはず…よし! )
「えーっと、ガフ様、アルフ様のお飲み物お食事はどのように運ばれるのですか? 」
「そうだな、宮殿の調理場で作られたのをメイドか、執事の者がこちらに持ってくる。その者たちが毎回毒味をしてるが? 」
「では、その方達は毎回同じ人ですか? 」
「そうではないですね。その時手が空いた者が運んで来ます」
「そうですか…その運ぶ人を毎回同じ人にする事は可能ですか? 」
「それは…言えば大丈夫でしょうが、何故ですか? 」
ガフとアルフはルキアの糸が読めずに不思議そうに尋ねた。
「私の憶測ですが、多分アルフ様のお飲み物やお食事に少量の毒が入ってると思われます。少量なので、毎回毒味をする人を変えると、その人達の体調に変化はないと思います。最悪お腹を壊すくらいで。ただ、毎日少量でも同じ人間が摂取すると健康を害する恐れがあります。最悪、死に至ることも。死を免れても…」
ルキアは言葉に詰まる。
(この続きを言っていいものか…)
「免れても…なんだ? 」
アルフは気になって次の言葉を急かす。
「いや、その…」
ルキアはチラッとガフを見た。
ガフは安心させるように、
「ルキア殿、大丈夫です。お考えをお話下さい」
と、優しく言った。
「では、失礼して…どの毒草が使われてるかは、分かりませんが、物によっては生殖機能に問題が生じまして…」
言い淀むルキアにアルフとガフは顔を見合わせる。
「ルキア、お前が言ってるのは、私が妃達と交合えないと言うのか? 」
(妃達って…やっぱり王子だもんな。お妃様は1人ではないんだな…)
なんだかショックを受けるルキアだが、
「いえ、そちらには問題ないかと思いますが、お子様を授かるのが難しくなる場合があります」
なんとか自分の考えを話す。
「なるほど…」
アルフは考え込んだ。
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