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第9話
しばらく考え込んだアルフはガフを見て、
「ガフ、これはやはり嬪妃の仕業なんでは? 」
「アルフ様、憶測でお話してはいけませよ。でも今回はそんな感じがします。最近運んでくるメイドは、アリーン様のお食事も運んでる者が多いです」
「そうだな…では、お前が信用出来る執事の誰かを運ぶ担当に変えさせろ。それなら嬪妃も毒を入れられないだろう」
「かしこまりました」
ガフは一礼をしてアルフの部屋を出ていく。
ルキアは2人のやり取りをポカンと見ていた。
(なんだ? このゲームは推理物か? )
ルキアは自分は一体どの立場なのかさっぱり分からずにいた。
(俺はこの人を国王にするんだよな? で、今この人が死んだら不味いと…だから止める方法を考えた。あってるよな? )
ルキアはブツブツ言いながら整理していく。
アルフが近づいて来てるのは気づかなかった。
(嬪妃って、アルフ様の継母だよな? アルフ様の実母は数年前に病気で他界したはず…嬪妃は正室を狙ってて、自分の第二王子を国王にしたい…と)
「ルキア、ルキア! 」
「えっ? わっ! は、はい! 」
考え事をしていて、アルフが横に来た事に今気づいた。
「君は考え事をしていると凄い集中するんだな? 刺客なら殺されてたぞ? 」
からかいながらアルフが言う。
その笑顔はとても魅力的でルキアはドギマギしてしまった。
(本当に綺麗な人だ。緑色の目を見てると吸い込まれてしまいそうだ…)
「す、すいません。昔から考え事をするとひたすら集中するようで、よく親に怒られてました」
「医者は変わり者が多いいと聞くが、ルキアもそうみたいだな? こんな可愛らしい顔をしてるのに眉間にシワは似合わないぞ! 」
そう言ってアルフはルキアのおでこを叩く。
「そ、そんな可愛いだなんて、私は男ですよ! 全然嬉しくありません」
おでこに手を当て慌てて仰け反る。
「そうか? 可愛い者に可愛いと言ったらダメなのか? ルキアはこの国では珍しく黒い髪に、黒い目をしている。それが黒ダイヤの様に綺麗だ」
アルフはルキアの目を覗き込む。
「そ、そんな、見ないで下さい! ガフさんにもアルフ様を見つめたらいけないと言われました! 」
ルキアは見つめられドキドキしながら目線を外す。
(アルフ様は俺が異世界から来た事知ってるのかな? あの夢はアルフ様が呼んだのではないのかな? )
ルキアは真相を聞いていいのか分からず、
「わ、私は隣国のどこかの者でしょう。昔の記憶は余りなく、気づいたら今の診療所の先生に拾われましたから…」
「ふ~ん、隣国ね~。まっ、しっかり仕事をしてくれたらどこの者でも気にしないよ。ルキアも魔法が使えるんだよね? 」
「はい、まだまだ習得中のもありますが簡単な怪我なら治せます」
「それは助かるな。ちょっと怪我をするだけでガフは心配するから、見えない所で治しといてくれ」
「はい、分かりました」
「では、君を宮殿の診療所に案内するよ。私についておいで」
そう言ってアルフはスタスタ部屋を出ていく。
「ま、待って下さい! アルフ様! 」
ルキアは遅れまいとアルフの後を追う。
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アルフと共に歩く宮殿はとても広く何人もの人が働いている。
(凄いな総合病院みたいだ。みんなそれぞれの部署みたいなのがあり、服装も違う)
アルフが歩いてるものだから、通る度にみんな仕事の手を止めお辞儀をしている。
お辞儀をしながらアルフの後ろにいるルキアを興味津々に見る。
アルフとルキアが去った後メイド達は話を膨らます。
「ねえねえ、新しいアルフ様の侍医の人可愛かったわね」
「ホントホント! 黒いサラサラの髪が素敵ね! アルフ様とお似合いだわ」
「アルフ様が自ら案内なんて相当気に入ったご様子ね! 」
「ダメよ、いくらお似合いでもアルフ様には隣のコバルト国のサンドラ王女という婚約者がいるのよ! 」
「婚約者って言ってもアルフ様はお喜びではないわ。だって、アリーン様の姪ですもの。この婚約もアリーン様が強引になさったんでしょ? アルフ様は納得されてないのよね? 」
「そうよね、アリーン様がアルフ様を手の中に入れようとあてがった婚約者ですもの。警戒するのも無理はないわ」
「他の隣国の王女も婚約者候補に上がってるからこれから変わるかもしれないし、あの侍医の方がアルフ様の側室になるかもしれないわよ」
「いくら可愛いからって男の人を側室にはダメでしょ? 」
「でも噂では前の国王は側近の執事を側室にしたとか言われてるわよ」
「それならアリよね。このアデウス王国は、同性婚に寛容だから」
「そうよ! もしかしたら、あの2人のイチャイチャが見れるかもしれないわよ! 」
「やだ! 楽しみが増えたじゃない! 私アルフ様の廊下の掃除担当になるわ!」
「ずるいわよ! 私は部屋の掃除担当になるわよ!部屋ならもっと素敵な光景が…」
「ゴホンッ! 」
メイド達がきゃあきゃあ騒いでると後ろで咳払いがした。
『ガ、ガフ様! 』
メイド達は一斉にお辞儀する。
ガフはため息をつきながら、
「君たち噂話は結構だがありもしない話を広めてはダメですよ! 」
メイド達を諭す。
『はい、申し訳ございません! 』
「では、持ち場に戻って下さい」
さぁーっとメイド達がいなくなる。
(はあ、メイド達も噂話が好きだな。ただでさえアリーン様に目を付けられてるのに、アルフ様も人が悪い。ルキア殿を気にいったのはいいが度が超えなければよいが…)
ガフはアルフの行動にため息をつく。
(本当にご自身で案内とは…全く…)
その時、遠くから「ガフ殿! 」と呼ぶ声がした。
ガフは振り返らずとも自分を呼ぶ声で誰かわかった。
ガフを「ガフ殿」と呼ぶ人物は1人だけだ。
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