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第10話

「ガフ殿、こちらでしたか? 」 振り向いた所に立っていたのは、アデウス王国第四王子カオ・シート・アデウスだった。 嬪妃アリーンの次男である。 「カオ様、何度も言いますが私を殿とお呼びはおやめになって下さい。ガフで結構です」 「だって、ガフ殿は兄上の側近にあたる。私が尊敬する兄上の側近を呼び捨てなんて出来ません! 」 「では丁寧語はおやめに」 「だって、ガフ殿は私より年上です。年上の方には丁寧語で話すよう指導されてますよ? 」 「それは一般の市民の話で、皇族の方は違いますよ」 ガフはため息をつく。 カオには何回も話してるが一向に改善してくれないので、半ば諦めつつも毎回諭しているのである。 「とにかく、何かご用事ですか? 」 「はい。先程兄上のお部屋に伺ったのですが、いらっしゃらなかったので探していました」 「そうでしたか、アルフ様は本日からお入りになった侍医のルキア殿を診療所にご案内されています」 「えっ? 兄上自らがですか? ご自身で案内とは余程ルキア殿を気に入ったんですね」 「そうですね、しつこすぎてルキア殿が嫌がらないと良いのですが…」 ガフはアルフの気に入ったらグイグイいく性格を知っているのでルキアの心配をする。 「ふふ、ガフ殿は兄上の事でお悩みが多いですね」 「カオ様、笑い事ではありませんよ。アルフ様は、お仕事や政務にはその性格はとても効果的ですが、恋愛になると…相手の気持ちもあるわけで…」 「相手の気持ち…」 カオは少し考えて、 「ガフ殿はどうゆうのがお好きですか? 」 「どうゆうのとは? なんの事でしょう? 」 ガフはカオの質問の意味が分からず質問返しをする。 「ガフ殿はどうゆう形で来てくれると嬉しいですか? 恋愛相手に…」 (なんか告白してるみたいだけど、ガフ殿は気づかないよね? ) カオは興味本位で聞く感じに質問した。 「そうですね…特に考えた事はないですが自然が1番ですかね? それに今は恋愛よりアルフ様の相手でせえいっぱいですから」 「えっ? ガフ殿は兄上のそちらのお世話もしてるんですか? 」 カオは夜の相手に誰も居ない時はガフが相手をしてるのかと心配になった。 「カオ様! どんな誤解をされてるんですか? 違いますよ、アルフ様が仕事熱心なんで私も休む暇がないという話です! 」 ガフが呆れたように答えた。 「そ、そっか、そうですね。びっくりしました! 」 「全く、カオ様にはまだ少しお早いのでは? 変な本に影響されませんように」 「もうすぐ子供扱いをする! 私はもう17です。魔法もだいぶ使えますよ! 」 「ハイハイ、わかりました」 ガフはカオの膨れっ面に思わず笑みがこぼれる。 その時歩きながら声をかけてくる人物がいた。 「おい、ガフ! アルフはどこだ? 」 その男は不機嫌そうに言った。 「これは、フルーク様! アルフ様は今手が離せませんが、どうされましたか? 」 その男…アデウス王国、第二王子フルーク・シート・アデウスだった。 嬪妃アリーンの長男である。 カオの実の兄になる。 「ちっ、居ないのか? では後で俺の部屋に来るように言っとけ! 」 「かしこまりました」 ガフは頭をさげる。 フルークは隣にいたカオに、 「おい、カオ。余りアルフのエリアに来るな! お前は俺の仕事を手伝え! 」 「すいません、兄上。アルフ兄様に用事がありましたので」 「ふん、あんな奴を様呼ばわりしなくていい! アルフはどこに行ってるんだ? 」 フルークは再度ガフに聞いてきた。 「新しく来た侍医と出かけております」 「新しく来た侍医…ふーん、そいつはアルフ専属か? 腕はいいのか? 」 フルークは興味を持った顔でガフに詰め寄る。 「はい、アルフ様専属でございます。試験に満点合格しましたので才能はあるかと…」 「そんなの文字だけではわからんだろ? 俺も会って見たいから後で連れてこい! 別に24時間アルフの所にいる訳ではないだろ? 」 ガフは困った。アルフ専属とは言ってもフルークの言う通り毎日ずっとでは無い。 アルフの対応をしない時は宮殿の診療所にいるから、フルークを診察しても問題はない。 ただ、アルフを目の敵にしているフルークにルキアを会わせるのは不安だった。 ルキアはまだフルークの性格を知らないから、アルフの事を悪く吹き込まれてフルーク側に行かれては困るからだ。 ガフは少し考えて、 「一応アルフ様に確認を取り、許可が得られましたらルキア殿をお連れします」 「侍医に会うだけでアルフの許可がいるのか? ふん、とりあえず後から連れてこいよ! 」 そう言ってフルークはその場を去って行った。 カオはガフの表情を見て心配する。 「ガフ殿、大丈夫ですか? 無理に兄上に会わせなくても兄上はすぐ忘れますよ? 」 「いえ、アルフ様の事だとそうは…とりあえずカオ様はお戻りを。これ以上居てはフルーク様に怒られます」 「わかりました。では戻りますね」 カオはもう少しいたかったが、ガフに迷惑かけると自分の部屋に戻ることにした。

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