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第16話

「ルキア、遅かったな? 先に食べてたぞ! 」 ヨリムが食べながらルキアに座るよう促した。 「アルフ様に会ったので遅くなりました」 「アルフ様が来たのか? 本当にルキアを気にいってんだな? 」 「そんなんじゃないですよ。夜用事があるみたいで仕事終わったら行ってきます」 「おっ、逢い引きか? 」 「もうヨリムさんまでからかう…」 「もっ…って事は、またメイドにからかわれたのか? 」 「あの人達は噂話しかする事ないんですかね? 」 「それだけアルフ様の行動が意外なんだよ。基本優しいが誰とでも一線を引いて付き合ってるからな」 「そうなんですか? 」 「そうだろ? これから国王になるかもしれないお方だ。隣国からも我が娘と結婚をって話は耐えないぜ? 」 (そっかこの時代じゃあアルフ様の歳でもう結婚の話が出るのか…) 「一応隣国コバルト国のサンドラ王女が婚約者らしいが、アリーン様の姪御さんだかなんかでアルフ様は乗り気ではないそうだ」 「乗り気じゃない? 」 「ああ、サンドラ王女をアルフ様の妃にすれば情報が入りやすいだろ? 妃となれば夜の営みの時に口が滑る事もあるだろう」 チクッ! (イタッ! なんだ、急に胸が痛いぞ…アルフ様の恋愛の話を聞くといつもモヤッてするんだよな? ) ルキアはこの痛みの理由にまだ気づけずモヤモヤしていた。 「サンドラ王女だけじゃなくてもアルフ様を狙ってる皇族はいっぱいいるからな。今度の社交界も大変だろうな」 「社交界があるんですか? 」 「ああ、社交界って言っても、王子達の妃候補を見つける場だ。私達には関係ない話だ。具合が悪くなる人がいたりするから脇には控えてるがな」 「社交界…」 (大勢がいる場所ならまとめて誰が誰か分かるか…まだ会ってない人達もいるからな。毎日忙しくて、ついミッションを忘れそうになるよ) ルキアはアデウス国に来て毎日を過ごすうちに、本来の目的を忘れそうになっていた。 (アルフ様や、ガフさん、カオ様と戯れてると裏の陰謀とか忘れそうになる。でも確実にアルフ様に毒を盛った人はいるから早く突き止めないと…) ルキアは色々考えていて背後に人が立ったのに気づかなかった。 「おい、ルキア! ルキア! 」 「は、はい! なんですか? 」 ヨリムは顎で後ろを見ろと合図した。 ルキアは振り返りそこにフルークの側近ファーストがいる事に驚いた。 「ファ、ファーストさん! どうしたんですか? 」 この2週間フルークから声もかからなかったので、ルキアはあの出来事を忘れかけていた。 なのでファーストの登場には突然でびっくりしたのだ。 ファーストは無表情のまま、 「フルーク様がお呼びだ。直ぐに来るように」 と、ルキアに言った。 「えっ? 何用で? 」 「私は知らない。ただ連れてくるよう言われただけだ」 ぶっきらぼうに返事をして「早く来い」と言い立ち去る。 「ルキア、午後はいいから行ってこい」 「はい…」 ヨリムに言われて嫌だったがファーストのあとをついて行く。 フルークの所に行く間ファーストは話もせず無表情のまま歩いている。 (フルーク様は何の用だろう? ファーストさんに聞いても教えてくれないだろうな…) フルークの部屋に来てファーストは扉をノックして声をかけた。 「ファーストです。ルキア殿をお連れしました」 「入れ」 声がしてファーストは扉を開ける。 「ルキア、久しぶりだな」 声をかけながら机から立ちルキアの方へ近づいていく。 「ご無沙汰してます。本日は何か御用でしょうか? 」 「まあ固くなるな。こちらに来て座ってくれ。紅茶とお菓子を用意した」 「はあ…」 ルキアは困惑しながらも指示に従う。 (急に呼び出して紅茶とお菓子だと? 何が目的なんだ? ) 椅子に座り目の前に置かれた紅茶を見た。 そこには4種類のティーカップに入っている紅茶があった。 (なんで、1人に4種類もあるんだ? ) ルキアは不思議そうにフルークを見た。 「ルキアを呼んだのには訳があるんだ。実はこの紅茶のどれかに毒が入ってるらしいんだが分からなくてな。侍医のお前なら分かると思ってな」 「毒ですか? な、なんでそんなものがここに? それになんで毒だと分かったんですか? 」 ルキアは益々不思議そうにフルークに尋ねた。 「実はこの紅茶は私の母上の所に毎日出されているのだが、最近母上が体調を悪くしてきてな。このどれかに毒が入ってると申すのだ。でも我々にはどれか分からないし、公に捜査すると母上の立場上まずいからな」 フルークはルキアを見て、 「だから内密にルキアに見てもらおうと思ってな。お前は毒草に詳しいと聞いたぞ? 」 「左様でしたか…」 ルキアは考えた。 (フルーク様の本当の狙いはなんだ? ここで俺を毒殺しようと思ってるとか? それならヨリムさんがファーストさんと一緒に居たのを知ってるからすぐバレるよな? ) ルキアは少し考えて紅茶の匂いを1つずつ嗅いでいく。 (なるほど、果物をベースに作ってるから香りが強いのか…少量の毒草ならバレないだろうな…) 更にルキアは1口ずつ紅茶を飲んだ。 その様子をフルークとファーストは黙って見ている。 ルキアは全部味見してまたしばらく考え込んだ。 見かねてフルークが尋ねた。 「ルキア、黙ってるが分かったのか? 」 (さてこの後どうなるか…) ルキアは覚悟を決めて口を開いた。

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