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第18話

「とりあえず、その薬は今度サンドラに使わせるわ。次の社交界でアルフの同伴者だから。その薬を使って今度こそ一夜を共にしてもらわないと」 アリーンの当たり前に言う言い方にルキアは驚いた。 (この人なんなんだ? なんでこんなにアルフ様を貶めようとしてるんだ? ) 「しかし、アルフは警戒してますよ? サンドラが思い通りにならないってイライラしてましたよ」 フルークは以前サンドラに会った時の様子をアリーンに説明した。 「婚約者になった途端距離を置かれてるって。それまでは誘えば抱いてくれたのにって」 ルキアはフルークの言葉にショックを受けた。噂では、アルフの奔放は聞いていたが、婚約者であるサンドラとも関係を持っていた事は初耳だった。 (なんか、ショックだな…そりゃあんなに綺麗でモテる人が童貞だとは思わないけど…サンドラ王女とも関係があったなんて…) ルキアはこれ以上聞くのが辛くなり立ち上がった。 「そこを何とかしないと! 元々アルフは人と距離を取るから、関係は持っても一緒に寝る事はないと聞いてるわ。女をアルフにあてがっても抱いたら追い払う。本当に警戒心が強いんだから!」 アリーンは忌々しそうに唇を噛んだ。 (そうなんだ、なんかアルフ様らしいな) ルキアはアリーンの話を聞いて少しホッとした。 「しかし、薬を使うとなればかなり危険が伴いますよ? 母上、そんなに急がなくても…国王が王位を譲るのはまだ先だし、証拠を残す事をしない方が…」 フルークの言葉にルキアも納得する。 (確かに普通に考えればフルーク様の言う通りだ。何故アリーン様は急いでるんだろう? ) ルキアは気になりまた座って話を聞くことにした。 「私も危険は承知よ。ただアルフが王妃の死を疑って独断で調べてると聞いたのよ。真相にたどり着く前に何とかしないと…」 「まさかあの件は完璧に終わりましたよ? どこを探しても分からないはずでは? 」 「もちろんよバレる事はないわ。でも念には念を入れて探らないと。アルフの弱味を握るか、子供でも設けてそちらに集中させるか…」 (おいおいこの親子は何を言ってるんだ? まさかとは思うが王妃の死にも何か関わってるのか? 聞いてないぞ! このゲームはミステリーなのか? ) ルキアは益々後悔をしだした。 (俺にこのゲームクリア出来るのかな? なんかショックな事が多くて俺にメリットがあるのか分からなくなってきた…) 現実世界がつまらなさ過ぎて転生物にハマったが、こっちはこっちで大変そうで結局どこの世界も何かしらあるって事だと悟った。 (でも、ここではアルフ様達は俺を必要としてくれてるし…まだマシなのかな? ) ドクン!! ルキアは体に違和感を覚えた。 (やばい! そろそろ時間切れだ! ここを出ないと! ) ルキアは慌てて扉の方へ音を出さないように歩いていく。 扉の前でルキアはある事に気づいた。 (しまった!! ) いくら透明になっても物体はあるから、扉の外に出るには扉を開けなければいけない。 入って来る時はアリーンの後ろから入ったから特に考えて無かった。 (俺ってホントにバカ! なんで出る時の事考えて無かったんだよ! ここで開けたら絶対おかしいし、でもこのままじゃ限界がきて姿が見えてしまう! ) 己のバカさ加減をなげいてルキアは頭を抱えた。 ドクン!!! 体内から湧き上がる衝動に思わず膝をつく。 (グッ! クソッ! この魔法は体力の消費が凄いから余り持たないんだよな。他に出口はないかな? ) ルキアは部屋をキョロキョロして他の出口を探した。 その時扉をノックする音がした。 「フルーク様、もうすぐ会議のお時間です! 」 扉の護衛の兵が声をかけた。 (よし! 開けろ! お願いだ、開けてくれ! ) ルキアは祈るように扉を見る。 ルキアの願いが通じたのか扉が開き執事が入ってきた。 (よし! 今しかない! ) ルキアは最後の力を振り絞り扉の隙間から外にでた。 体がフラフラになりながらも走ってフルークの部屋からなるべく離れる事にした。 廊下の角を曲がり誰も居ないことを確認して、全身の力を抜く。 次第に自分の体が見えてきた。 「ハア…ハア…辛! 」 ルキアは座り込み顔を上げた。 (この消える魔法は体力の消耗が凄い…しばらく立てなさそうだ…) ルキアは体力が回復するまで少し休む事にした。 「あれ? ルキア? 」 名前を呼ばれて顔を上げるとカオがいた。 「あっ! カオ様! 」 慌てて立ち上がり挨拶をしようとしたが、体力の消耗が激しすぎて立ちくらみをする。 「わっ!大丈夫? いいよ、無理に立たなくて。具合悪いの? 」 「す、すいません。ちょっと疲れて…」 「じゃあ、私の部屋で休んで行きなよ!すぐそこだし」 「そ、そんなご迷惑…」 「もう、ルキア! 私とは友だろ? そんな遠慮しないでよ」 カオはほっぺを膨らませ怒った。その顔に疲れてても笑みがこぼれる。 (ふふ、本当にカオ様は可愛らしい) ルキアはカオに支えられカオの部屋に入りソファに座らせてもらった。 「すいません、カオ様…」 「大丈夫だよ、気にしないで。ところでなんでこんな所にいたの? 」 「それはフルーク様に呼ばれて先程までフルーク様のお部屋にいました」 「兄上の所に? またルキアを呼び出したの? 兄上はなんて? 」 (カオ様にはどこまで話していいんだろう? きっとアリーン様とフルーク様の企みとかは知らないだろうし、知ったらさすがにショックだよな…血の繋がった母親と兄だし…) ルキアが言い淀んでると、 「大丈夫だよルキア。兄上の腹黒さはは知ってるし。私はアルフ兄上と一緒で余り好きではないんだ」 だから気にしないでとカオはルキアを安心させるように言った。 「気をつかってもらってすいません。実は…」 ルキアは紅茶の所だけカオに説明してアルフに毒を飲ませていた事は黙ってようと思った。 (さすがに親が人を殺そうとしてるって知ったら嫌だよな…)

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