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第19話

「そっか…紅茶ねー」 カオはルキアの話を聞いて怪訝な顔をした。 「でも、ここ数日の母上は特に体調悪そうには見えなかったけど…その話は本当なのかな? また変な事を企んでんじゃあ…」 (さすがにカオ様もおかしいと思うか。でもこれ以上話すのも…) 「さあ、私は聞かれた事に答えただけで…ただ、あそこはとても緊張するので部屋を出て休んでた次第です」 何とか辻褄を合わせてカオを安心させる。 「そっか無理をさせたね。私も少し兄上の様子を探ってみるよ。何かわかったら知らせるね」 「そ、そんな、カオ様が怒られてしまいますよ? 」 「大丈夫だよ私が近づく方がルキアやアルフ兄上が近づくよりかは探りやすいでしょ? 」 「そうかもしれませんが…無理はしないで下さいね? 」 「うん、分かってるって! 」 カオは自分も役に立てると嬉しそうだ。そんなカオを見てルキアも笑顔になる。 (ホント、カオ様って可愛いな。俺一人っ子だけど、弟がいたらこんな感じかな) ルキアはふと現実の世界の自分を思い出していた。 「あ、ルキアの顔色も戻ってきたね。よかった! じゃあ診療所まで送るよ」 「そんな、カオ様大丈夫ですよ。カオ様に送ってもらったらアルフ様に怒られますよ! 」 「大丈夫だよ兄上はそんな事で怒らないし、それにルキアと一緒ならガフ殿にも…」 カオが恥ずかしそうに、「ガフに会いたい」と言った。 「あ、そうでしたね! ではお言葉に甘えて行きましょうか? 」 ルキアはカオと一緒に戻ることにした。 (それにしても、カオ様はガフさんをいつから好きなんだろう? 聞いてもいいのかな? ) 「ん? どうしたの? 私の顔ばっか見て? ダメだよ私に惚れたら。私はガフ殿一途だから! 」 カオの冗談に思わず吹き出しながら、 「違いますよ! カオ様は可愛らしいですが、弟の様な感じですので」 「そうだよね、どちらかと言うと私もルキアも受けだろうしね」 「カオ様! う、受けって、どこでそんなお言葉を…」 急にエッチのワードが出てきてルキアは動揺した。 「はは、ルキアは純情だな! その様子だと経験ないな? 」 覗きこむようにルキアの顔を見ながらカオがからかう。 (な、なんで? ) 図星をつかれて、動揺が隠せない。 「カオ様! からかわないで下さい! そんなカオ様はおありですか? 」 ほっぺをぷうっと膨らませながらルキアが言い返す。 「悪い悪い、私もないから同じだよ。5年もガフ殿に片思いしてるからあるわけないだろ? 」 「ご、5年? 随分長いですね? 」 「そうだね、最初に会った時からだから…」 __________________ カオが12歳の時アルフの部屋に遊びに行ったら知らない男がいた。 「兄上、こちらの方は…」 「ちょうどよかった。カオ、紹介するよ。今日から私の秘書になるガフだ。元々学友だったが、私が14になったから秘書としてお願いしたのだ」 ここアデウス国では皇族の男は14歳になると政務に関わり出す。 1人でこなす物もいるがアルフは期待されているので人より仕事量が多く把握しきれないので、ガフにお願いして秘書になってもらったのだ。 「そうなんですね」 カオはガフを改めて見た。 身長はアルフと同じ位だが綺麗な顔立ちのアルフとは対象的で、細い切れ長の目、茶色の瞳、短髪でスマートないでたちだ。 (カッコイイ…兄上はとても綺麗だとは思ってたけど、こんなカッコイイ人初めて見た) カオはしばらくガブに見とれていた。 「ガフ、私の弟のカオだ」 「カオ様、ガフと申します。よろしくお願いします」 「あ、は、はい! カオです。よろしくお願いします! 」 慌てて、挨拶をする。 「カオ、落ち着け。ガフのカッコ良さに見とれていたのか? 」 アルフにからかわれカオは真っ赤になった。 「ち、違いますよ! 兄上、からかわないで下さい! 」 (ん? カッコ良いって言った。兄上もそう思ってるって事は…) 「カオどうした? 赤くなったと思ったら今度は青くなって? 」 「あの…もしかして、お2人は恋人同士ですか? 」 カオの質問にアルフとガフは顔を見合わせ、アルフは爆笑し、ガフは心底嫌そうな顔をした。 「あはは、カオはませてるな! 大丈夫だよ私とガフはただの友だ」 「カオ様、ご冗談はおやめに。アルフ様と恋人同士なんて鳥肌しかたちません! 」 「おいおいガフ、それは言い過ぎだろ? 私の美しさは人を魅了するんだぞ? 」 「そうですね、そのお陰で私は学生時代から迷惑を被ってますが…」 アルフの美しさに学生の時から色々言い寄られ、近くにいるガフに嫉妬する者がいっぱいいた。 「トゲがある言い方にだな? 」 ガフの言葉にアルフは不貞腐れる。 「いえいえ、アルフ様は大変お優しいので来るもの拒まずで…」 「わかったわかった! 私が悪かった! 」 ガフの言葉を遮り話を終わらす。アルフはカオの方を見て、 「ガフは、信用出来る者の中で唯一私になびかない男でな、だから秘書にしたのだ」 と言ったあと、ガフに聞こえない様にカオの耳元で囁いた。 「カオ、ガフは鈍感だから手強いぞ」 「兄上! わ、私は別に…」 「分かってるって! なんでも言いなさい。手伝うぞ」 「アルフ様、カオ様のお手伝いなら私が…」 「だ、大丈夫です! 兄上また来ます! 」 そう言ってカオはアルフの部屋を出た。 「アルフ様、よろしんですか? 」 ガフはキョトンとしながらカオが出て行った扉を眺めた。 アルフは笑いを堪えながら、 「よいよい、また遊びに来るから時間があるなら相手をしてやってくれ」 ガフはアルフの笑いの意味が分からず、 「はあ…分かりました」 と言った。

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