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第21話
立ち去ったルキアの後ろ姿を見ながら、
(ルキア、ありがとう! 今度埋め合わせするね! )
カオは心の中で手を合わせた。
「カオ様、2人のお話の邪魔をしてすいませんでした。私で良ければお話は聞くので言って下さい」
真面目なガフは自分が代わりにカオの話を聞いてあげようとした。
「ガフ殿、ありがとうございます。ちょっとルキアと話てて昔を思い出しただけです。昔は母上も私を可愛がってくれましたが、今では兄上ばかりと怪しい話をしています…」
「そんな事は…アリーン様はカオ様をとても大切にされてますよ」
「ガフ殿、慰めは大丈夫ですよ。さっきルキアから聞いたのですが…」
カオは歩きながらさっきのルキアの話をガフに伝えた。
「母上と兄上が何か企んでるのは分かりましたが、一体何をしようとしてかは…様子を見ながら探ろうと思います」
「カオ様、それはかなり危険ですよ。無茶はお辞めに! カオ様に何かあれば私はアルフ様に怒られます」
「ガフ殿は心配し過ぎですよ。今度家族の食事会があるので少し動向を見るだけです。危険な事はしませんよ」
カオはガフを安心させるように言った。
(でも、心配してくれてありがとうございます)
カオはガブに気にかけてもらい嬉しかった。
「ガフ殿、送って頂きありがとうございます。まだお時間あるようでしたらお茶でもしていきませんか? 話も聞いてもらいたいですし」
「私で良ければお話は聞かせて頂きますよ」
珍しくOKをだした。いつもなら仕事と言って帰るのにルキアとの事を勘違いされた甲斐があったなと思うカオだった。
「では、どうぞ。お茶とお菓子を持って来て下さい」
入口のメイドにお願いしてガフを部屋に案内する。
ガフはソファに座らせてもらって少し周りを見渡した。
「そういえば、カオ様のお部屋に入らせて頂くのは初めてですね。とても素敵なお部屋です」
(そっか、いつも私が会いに行くからガフ殿を招いた事は無かったんだ…)
「ありがとうございます。ガフ殿のお部屋はどんな感じなのですか? 今度招待して頂けますか? 」
「私の部屋にカオ様をお招きしても大したおもてなしは出来ませんよ。とても狭いので」
カオの思いも知らずアッサリと断る。
(狭くても汚くてもガフ殿の部屋ならなんでもいいのに…本当にガフ殿は鈍感であられる…)
心の中でため息をつき持ってきてもらったお茶を1口飲む。
(どうにか違う方法でも私の事を意識してもらえないだろうか…)
カオは頭の中で色々考えていた。
「カオ様? お黙りになられて体調でも悪いのですか? 」
心配そうにガフが聞いてきた。
「いえ、違いますよ。えっと…そういえば、ガフ殿はなんでルキアを怒ったのですか? 」
「えっ? 先程の事ですか? 本当に誤解してすいませんでした」
「あっ、そうじゃなくて…その事に怒ってるのではなく、ガフ殿が怒るのは珍しいので、そんなルキアに意地悪されてる様に見えたのかな? と…」
「そうですね…怒ったつもりはないのですが、余りむやみに皇族の方にお触りにはなってはいけないとルキア殿にご説明はしていたのですが、カオ様にお触りになろうとしていたのでとっさに声が出てしまいました」
(もう、なんだよ! その模範解答みたいなのは! )
カオは少し拗ねたように、
「ではガフ殿は私が泣いてても手を差し伸べはしてくれないのですね? 」
と、ガフを睨みながら言った。
「そ、それは…」
カオの要求に珍しく詰まるガフ。
「私共がむやみに触れるのはご法度なので…」
「でも、アルフ兄上はよくルキアを抱き締めてますよ? 」
「あ、あれは、アルフ様が勝手にでルキア殿から抱きつく事はないと思いますが…」
「なら私がガフ殿に触るのは大丈夫なんですか? 」
ガフの言葉を遮るようにカオが被せて言った。
「そ、それは大丈夫ですがカオ様が私に触る理由もないと思いますが? 」
カオの言っている意味がわからず当たり前の回答をする。
「ある時もあります! 今だって落ち込んでる私を慰めて欲しいですよ! 言葉だけではなくて! 」
カオの要求にびっくりした顔をしたガフ。珍しくグイグイくるカオにどうしていいかわからず困った顔をする。
いつも冷静沈着なガフにしては珍しい事だった。
(あ、ガフ殿の困った顔、貴重だ。よし!)
「そ、そうですか? では、私はどうすれば? 」
ガフに訪ねられカオはガフの顔を見つめる。ガフは少し困った顔をしていたが、カオは決意して両手を伸ばしガフに抱きついた。
「カ、カオ様? 」
突然の抱擁にガフは驚き体が固まった。引き離す訳にもいかない、抱き返す訳にもいかない、ガフの両手は中に浮いている状態になっている。
「カオ様…」
ガフの問に、
「ガフ殿…少しこうさせて下さい」
と返され、とりあえずガフは体の力を抜いた。
ギュウッと抱きつくカオにガフはどうしたら良いか悩んでいた。
(カオ様は何かお悩みになり人肌が恋しいのだろうか? 私はお返しした方が良いのだろうか? でもむやみに触れるのは…いや、もう触れてはいるのだが… )
その時、ガフは前にアルフに言われた事を思い出した。
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