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第22話

「なあガフ、もし誰かに抱きつかれたらその子は相当の勇気を出しているから、黙って抱き返してあげるんだよ」 ある日突然アルフに言われた。 何故急にそんな話になったかガフはさっぱり分からなかったが、 「でも、私がその者をなんとも思ってない場合は期待を持たせるだけではないでしょうか? 」 と、当たり前の答えをした。 「ガフはなんとも思ってない子を自分の近くに近づけさせないだろ? ガフに抱きつける距離にいるなら、ガフも少しは気を許してるって事だろ? 」 「なるほど…そう言われたらそうですね」 今まで好きだと言われた事はあるが、抱きつかれる距離にいた者はおらず、勿論抱きつかれた事もない。 常に気を張り警戒心を持っているガフに勢いでも抱きつく強者はいなかったのだ。 女であれば綺麗に交わすし、男であれば殴り倒しているはずだからだ。 __________________ (でも、アルフ様。これは想定外でございます) まさかカオに抱きつかれるとは思って無かったので全く警戒してなかった。 (これも気を許してるというのでしょうか? 確かに不快感は全くないですが…それならカオ様を抱き締め返せと? ) 自分の胸に抱きついているカオを見下ろしガフは考えていた。 (急に抱き締めたら、カオ様も驚くのでは? ) 力は抜いたが宙に浮いている手にも疲れてきた。 (アルフ様、言った責任はとってもらいますよ? ) そう呟きガフは自分の腕をそうっとカオの背中にまわした。 カオに力をかけないように優しく抱き返した。 一瞬カオがピクっとしたがそのまま抵抗する事も無かった。 (なんて華奢な体なんだろう…) 初めて抱き締めたカオの体は想像以上に華奢で力を入れたら壊れそうだった。 (こんな小さな体で色んな事に耐えて…) ガフの中に不思議な感情が湧いてきた。この小さな体で頑張っているカオをとても愛おしく思えてきたのだ。 その時、カオが力を抜いて顔をあげガフを見た。 カオの顔は少し恥ずかしそうに赤くなり、潤んだ目はとても綺麗に見えた。 ガフはカオの顔を見たら体の奥から何か湧き上がる感じがした。 今まで感じた事のない不思議な感情が奥から湧き上がってくるのがわかる。 「ガフ殿、甘えさせてもらってありがとうございます。もう、大丈夫です」 そう言って離れようとするカオをガフは無意識のうちにもう一度抱き締めた。 「えっ? ガ、ガフ殿? 」 ガフの突然の行動にカオはびっくりした。 ガフはさっきよりも強く抱き締めカオの肩に顔を埋める。 その反動で2人はソファに倒れ込んだ。 ガフはソファに倒れ込んだ勢いで我に返った。 「カ、カオ様! すいません! お怪我は無かったですか? 」 慌ててカオを起こして怪我がないか確認する。 「は、はい…大丈夫です…」 カオは今起こった事が現実なのか頭がパニックになっていた。 (今、何が起こった? ガフ殿が私を抱き締めた? 夢か? 現実か? ) 「カオ様、すいません。そろそろ私は仕事に戻ります」 いつもの冷静なガフの声に戻っている。 「あ、は、はい。引き止めてすいません」 (やっぱり、夢だったのか? ) 「では、また」 頭を下げガフは部屋を出ていった。 カオはガフが出ていった扉を眺めながらしばらく放心状態になっていた。 (今のはなんだったんだろう? 確かにガフ殿は私を抱き締めた様な…最初のは私の抱きつきへのお返しだろうけど、2回目のは一体…) さっきの出来事を思い出し、顔が真っ赤になってきた。心臓がバクバクして張り裂けそうだ。 (早くルキアに言って相談しなくちゃ! あっでもその前に母上の事も…あー、頭が働かない! ) カオは一度に色々考え益々頭がパニックになっていた。 __________________ 「ガフ、どこに行ってたんだ? 探したぞ? 」 アルフの部屋に戻ったガフにアルフが近づきながら声をかけてきた。 近づいてアルフはガフの様子がいつもと違うのに気づく。 ガフは複雑な表情をしていた。アルフは直ぐに何かあったと感じたが、政務関係のトラブルの時の険しい表情ではなく、どうしたらいいか分からない様な少し困った顔に見えた。 「ん? ガフどうした? 何かあったのか? 」 「いえ…何もないですよ」 ルキアの腕のアザの事、カオとの出来事、どこからアルフに説明したら良いのかガフは悩んでいた。 「こらっ! なんでもないって顔じゃないぞ! 何があった? 」 アルフは何がなんでも吐かせようと、ガフの首に腕を回し力をいれる。 「ちょっ、アルフ様! おやめになって下さい! 」 ガフは力を入れて押し戻そうとするが、アルフも鍛えており中々離せない。 「やだね! ほら言わないとお前に口付けするぞ? 」 ん~と、口を尖らせガフに顔を近づける。 「ア、アルフ様! お戯れは程々に! 」 絶対されまいとガフも力いっぱい顔を背ける。 「やだね、言うまで嫌がらせしてやるぞ? 」 アルフはニヤニヤしながら口を尖らせガフに近づいていく。 その時、扉をノックしてヒョイッとルキアが顔を覗かす。 「すいません、アルフ様いっらっしゃいます…す、すいません! つい開いていたので! 失礼しました! 」 ルキアは扉が開いていたので不用意に覗いてしまった。慌てて頭を下げ、クルッと向きを変えて走り去った。 ルキアの目に入った光景は、アルフがガフを抱き締めキスをしようとしてる所だった。←不正解 正解→アルフが首を絞めガフの嫌がる事をしていた。 「ルキア! 」 「ルキア殿! 」 2人は慌てて離れルキアを引き留めようと声をかけるが、ルキアは走り去ったので2人の声は届かない。

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