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第24話
ルキアとアルフは診療所を出て歩き出した。
(ハア、やっぱりガフさんはアルフ様に説明しようとしてるんだな…う~ん…)
ルキアはガフとの事をアルフに言おうか悩んでいた。
(でも、悪気がないのに罰を与えるのも…)
「…ア…キア、ルキア! 」
「は、はい! なんでしょう? 」
(ヤバイ、また集中して聞こえて無かった! )
ルキアは慌ててアルフの方を向いた。
「本当にお前の集中力は凄いな? 」
アルフは呆れた顔をしながら「ガフと何かあったのか? 」と聞いた。
「大した事ではないので後でお話さそますね。ところで、どこに行かれるご予定ですか? 」
ルキアは今日の夜どこに行くかは聞かされてないのを思い出した。
アルフはルキアの顔を見ながら「いい所だよ」と含みを持たせた言い方をする。
(いい所…どこなんだろう? )
ルキアはサッパリ分からずアルフについて行く。
アルフはいつも動いているエリアの隅の壁の所に行き立ち止まった。
その壁は何も変哲のないただの壁だった。
「アルフ様、何故ここで立ち止まるのですか? 」
ルキアは不思議そうに尋ねた。
「ああ、ここに扉があるからな」
「えっ? ここにですか? 」
ルキアはキョロキョロしながらドアらしき物を探す。
そこは全て壁で覆われドアの取手の様な物はない。
益々不思議そうな顔をするルキアを笑いながらアルフは説明した。
「ここは私しか開けない扉なんだ。まあ見てなさい」
そう言ってアルフは壁の一部に手を当てた。
「えっ? あっ…」
アルフが手を当てた壁がギィっと音を立て開いたのだった。
驚くルキアにアルフはいたずらっ子みたいな笑みをしながら「ほら、開いただろ? さあ入ろう! 」とルキアを促した。
「は、はい…」
ルキアはアルフに言われておずおずと扉の中に入る。
そこには上へ続く石の階段があった。
「さっ、ここを登るぞ! 着いておいで」
アルフが先に登りルキアは後ろを着いていく。
階段は50段ほどあるだろうか? 螺旋状になっており、細長い塔の様に感じた。
(ここは宮殿の端にある1番高い塔なのかな? )
ルキアは考えながらアルフの後を着いていく。
「もうすぐだぞ? ほら、見てごらん」
「うわ…」
階段を登りきった所には窓があり外を見れるようになっていた。
そこから見る景色はルキアにとって感動するに値する位綺麗だった。
アデウス国を見渡せる夜だから各々の家に灯りが見える。
それが幻想的でとても美しかった。
「アルフ様! 凄い綺麗です! ここがアデウス国で1番高い所なんですね? 」
嬉しそうにルキアが興奮気味にアルフに言った。
「そう思うだろ? 実はここより高い所があるんだよ? 」
「えっ? ここよりですか? 」
「そう、ここの屋根の上だ! 」
アルフが指を上に指しながら天井を見る。
「そ、それはそうかもしれませんが、屋根の上までは行けませんよ? 」
ルキアの問いに、
「そう思うだろ? でも行けるんだよ? っと」
突然アルフが窓に飛び乗った。
「ア、アルフ様! 危ないですよ! 降りてください! 」
ルキアは慌ててかけよる。
「ルキア、大丈夫だ」
「ダメです! アルフ様に何かあったら、ガフさんに殺されてしまいます! 」
「アハハ、ルキアはガフが怖いのか? 大丈夫だ、ルキアもおいで」
アルフに手を差し出した。
「そ、そんな、私までそこにいくとアルフ様が落ちてしまいますよ」
「ルキアは心配性だな? 私を信じなさい」
再度言われてルキアはアルフの手を取る。
(だ、大丈夫かな? )
「えっ? わっ! 」
アルフの手を取った瞬間ルキアは体がフワッと浮いた感覚になった。
気がつくと窓際にアルフと一緒に立っていた。
「えっ? ア、アルフ様、これは一体…」
戸惑うルキアに、
「さっ、私に捕まりなさい」
アルフは自分の手を広げ胸の中に入るようルキアに言った。
「そ、そんな、ダメですよ! 」
仰け反るルキアに、
「全く、ルキアは真面目な奴だな」
アルフはため息をついて自らルキアを抱き寄せた。
「ア、アルフ様…」
ギュッと抱き締められルキアは真っ赤になりながらアルフに抱きつく。
「そう、それでよい。ルキア、外を見ててご覧」
そう言ってアルフは窓際を蹴って飛んだ。
「うわっ! 」
アルフに言われ外を見た瞬間体が浮いたのがわかる。
アルフとルキアはそのまま落ちることなくフワッと塔の上へ飛び乗った。
塔の上へ降りたルキアは今起こった出来事に信じられない様子でアルフを見る。
「アルフ様…まさか、水だけではなく風もお使いになられるのですか? 」
「ハハ、驚いたか? だから大丈夫って言ったろ? 」
悪びれもせず笑いながら説明した。
「もう、アルフ様は人が悪い! 先に言って頂けたらこんなに肝を冷やしませんでしたよ? 」
ルキアはふくれっ面になりながら抗議した。
アルフはルキアのパンパンの頬をつつきながら、
「先に言ったら感動が減るだろ? それに風が使えるのはガフしか知らないからな」
「えっ? そうなんですか? 」
「ああ、基本皇族の人間は大きな魔法は1つしか使えない。そんな中、私だけが2つ使えると知られると悪い事も起こるからな。アリーン様やフルーク兄上に聞かれたら直ぐに暗殺されるだろう」
「そ、そんな…そんな危険なら私にも言わなくても…もちろん誰にも言いませんが…」
ルキアは呑気に怒っていた事に反省した。
(そうだった…アルフ様は死と隣り合わせなんだった。俺への少しの意地悪なんか息抜きの1つでもあるんだ。本気で怒ってバカみたいだ…)
「ルキア、そんな気にするな。この国の王子に産まれたら、警戒しながら生きるのは当たり前だ。その中でもルキアと戯れるのは私の楽しみでもあるんだ。許してくれ」
アルフに言われてルキアは頷いた。
「本気で怒ってませんよ。本当に大丈夫ですか、私に教えて? 」
「ん? ルキアの事は信用してるし、好きな子には嘘をつきたくないだろ? 」
「す、好きな子って、またからかって…」
あまりにもサラッと言われてルキアはどもって反論した。
「ハハ、ほらルキア、上を見てごらん」
アルフに言われて上を見た。
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