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第25話
そこには一面の星空があった。
澄み切った空には東京に居た時には考えられない位1つ1つの星がハッキリと見える。
「凄い…」
言葉にならない。ルキアは黙って星空を眺めていた。
(こんな美しい星空を見たのは初めてだ…)
「今日、星を見たいって言ってたろ? それならこの国の1番高い所で見せてあげたくてな。気に入ったか? 」
「聞いてたんですね? はい、とっても綺麗で感動しました! 本当にありがとうございます! 」
嬉しそうに話すルキアにアルフの顔も綻ぶ。
「さて、ゆっくり座って眺めようか? 」
アルフに言われて後ろを見ると、ベンチが置いてあった。
「アルフ様はよくこちらにおいでになるのですか? 」
座りながらルキアが尋ねる。
「そうだな、1人で考えたい時や、嫌な事があった時など利用してたな。最近はルキアのお陰で笑う事が多いから来てなかったがな」
「また…でもお役に立ててるなら嬉しいです」
「本当だぞ? 私は嘘はつかないぞ? 」
そう言ってアルフはルキアを抱き寄せた。
「アルフ様…」
ルキアは拒みはせず真っ赤になりながらもアルフの肩に頭を乗せる。
それと共にチクッとルキアの胸が傷んだ。
(嘘か…俺はここに来てる理由を嘘ついてる事になるんだよな? 俺にとってはゲームでも、その中の人達は一生懸命に生きてるんだよな? )
ルキアは、アルフやガフ、カオに黙っている事が辛くなってきた。
(こんなによくしてくれてるのに、誰にも言えないなんて…)
ルキアが落ち込んでるとアルフが話しかけた。
「なあルキア、2日後に社交界がある。ルキアは私の侍医だから参加はするが、ヨリム達と一緒の所で待機の予定になっている」
「はい、ヨリムさんから聞きました。毎年具合悪くなられる方がおいでなので、すぐ対応出来るようにと」
「うん、そうだ。そうなんだが、ルキアは私の側に居てくれないか? 」
「えっ? 」
アルフの問いに驚いて顔を上げた。
「今回は隣国との政治に専念したいのだ。いつも色々な娘を紹介されて全く時間が取れない。ダンスばかりしてては隣国の政治状況がわからない。断るためにも自分の周りの人を増やしたい」
「そうなんですね、私は大丈夫ですが…批判とかされないんですか? 」
「では、ルキアは私が娘達とダンスをしていてもいいのだな? 」
アルフに皮肉を言われ詰まる。
「そ、それは…私が言える立場ではないので…」
「嫌か? 」
更に聞かれ、ルキアは「は、はい」と答えた。
その答えに満足そうにしたアルフはルキアの頭をポンポンする。
「そうそう、ちゃんと素直に気持ちを言ってくれ。まあ、サンドラだけは相手しないと後でアリーン様に言われるからな」
アルフはため息をつく。
(サンドラ…アルフ様の婚約者で、以前は関係があった子か…アルフ様は婚約者ではなかったら、今でも関係を続いてたんだろうか? )
「サンドラと踊るのも直ぐに終わらせるから待っててくれ 」
アルフに言われルキアはフルークとアリーンから聞いた話をアルフに尋ねた。
「あ、あのサンドラ様とは以前恋人同士と聞いたのですが…よいのですか? 」
ルキアの質問にアルフはバツの悪そうな顔をした。
「隠すつもりはないが、恋人同士では無い。誘われたから相手をしただけだ。こう言うと聞こえは悪いな。嫌な話かもしれないが聞いてくれ。母上が亡くなる前までは結構自由にしててな…」
アルフは母王妃がいる時は自由奔放で遊ぶ事も多かったと説明した。
誘われたら男でも女でも相手にしていた。
大体1回限りで2度目以降は誘われても断る事が多かったと言った。
しつこくされたりもしたが、王子の立場上アルフにしつこくすると罪に問われると知っている者も多く、皆思い出の1回と諦める者が殆どだった。
そんな日を続けている時、王妃が病で倒れたと聞いた。
「母上は、具合が悪いのに私には黙っていた。こんな遊びほうけている息子に心配かけまいと…私はそこで目が覚めたよ。母上の看病をしながら、政務にも以前より積極的に参加した。その直後母上は亡くなられた…」
アルフの顔には後悔の色が見えた。
ルキアはそっとアルフの手を握りアルフを見つめる。
アルフは再度ルキアを抱き寄せ、続きを話し出した。
「母上が亡くなられたのが急で私は不審に思い、調べたのだ。だが、その時の執事やメイドに話を聞いても分からないと言うばかり、その後母上の元で働いていた者はアリーン様が全員辞めさせた。私は辞めた者を1人1人尋ねたのだが…」
一呼吸ついた後「全員死んでいたんだよ」と言った。
「そ、そんな…」
「益々怪しいと思い、調べていたら母上の最後の食事に毒が使われていた可能性が出てきたのだ。私はその器を調べようとしたが、アリーン様の手元にあって中々手に入れられないのだよ」
「なんで、アリーン様が持っていると分かったのですか? 」
「その器は国王父上が妃にしか差し出さない器で、国王の紋章が入っている。だから、出された時も母上は疑いもしなくて飲んだんだろう。父上が看病に訪れた後だったし…」
「そうなんですか…それなら国王の手元にあるのでは? 」
「普通はそうなんだが、父上がその器を見ると母上を思い出すからとアリーン様に預けてるらしい。国王の紋章がついている器を捨てる事はないだろうから、どこかに保管してあるはず。もちろんその器から毒が今でも付着してるかは分からないが、見ると何かわかるかもと探してるんだよ」
「そうだったんですね…アルフ様、私で良ければなんでも言って下さい! なんでもやります! 」
ルキアの言葉にアルフは複雑な顔をしてルキアを見た。
「ありがとう、ルキア。私もそうしようと思っていた。母上に言われた時は…」
「えっ? 」
(母上に言われたって、どういう事だ? 俺は王妃の事は知らないし、王妃も俺の事なんて…)
アルフの言葉の意味が分からずそのまま黙ってアルフを見た。
アルフもルキアを見つめる。アルフは思い切った様に言った。
「ルキアはこの世界の人間ではないのだろ? 」
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