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第26話

アルフの問いにルキアは驚き固まった。 その表情を見てアルフは確信した。 「やはりそうなんだな? ルキア、教えてくれ」 ルキアは体が固まったままパニックになっていた。 まさかこんなに突然言われるとは思って無かったから言い訳とか何も浮かばない。 (ど、どうして? アルフ様は最初から知っていたのか? やっぱりあの夢は現実だったのか? でも、それならどうして今頃? それに王妃がどうして? ) どうして? どうして?ばかりで益々何も思いつかない。 (どうしよう…何も言えない。アルフ様に嫌われて、俺はこの世界でどうすれば? ) ルキアの体の硬直にアルフは再度抱き寄せ背中をさすった。 「ルキア、落ち着いて。私は怒ってない。初めて会った時の事を覚えてるか? 緊張するルキアに背中をさすってやったな」 「アルフ様…覚えていたのですか? 」 「勿論だ。自分の夢が現実として現れたからな。想像以上に可愛い子で驚いたがな」 アルフはからかいながらルキアの強ばりを解いていく。 アルフの腕の中で恥ずかしそうにするルキアに、 「ルキア、聞いてくれ。ある夜、母上が私の夢に出てきたのだ…」 と、以前の夢の話をした。 話をするうちにルキアの体の強ばりが解けていくのが分かった。 「と、いうわけで、半信半疑だった私の元にルキアが来てくれたのだ。母上の話を聞いた時はルキアの顔も性格も分からなかった。母上の死因を調べるためならと、少しの希望にもすがったが…」 ルキアの顔をあげ頬を触りながら、 「こんなに可愛く、優しい子が来るとは思わなかったよ。一目で私はお前に惹かれたよ。だから怒ってないから教えて欲しい。ルキアにはなんの得もないこの世界にどうして来たのか…」 アルフの説明にルキアは緊張の糸が溶けボロボロ涙がこぼれた。 こんなに泣いたのは人生で初めてじゃないかという位、涙が溢れてくる。 「ル、ルキア、泣かないでくれ。私は怒ってないぞ? 」 「はい、分かってます。安心して…ヒック…つい涙が…みんなに黙ってるの…ヒック…が辛くて…」 1度出た涙は中々引っ込まなく、ルキアは泣きじゃくりながらアデウス国に来た経緯を説明した。 本当の世界では陰キャでゲームばかりしている事、人付き合いも好きではない事、どこか違う所に行きたかった事、本当は21歳で医者ではなく学生だと言う事、全部隠さずアルフに説明した。 アルフは黙ってルキアの話を聞いていた。怒ってると思われないよう、泣くルキアの背中を擦りながら話話の途中でうんうんと頷いてルキアを安心させた。 「で、アルフ様の言葉の通りにボタンを押したら、こちらに来ていました…」 「そうだったんだな…」 ルキアの説明に納得がいったように頷いた。 「それに、実際は私より年上なのか! そこに1番驚いたぞ? 本当に童顔なんだな! 言われても全然年上に見えない。年上の敬意を払った方がいいか? 」 からかうように言った。 「そ、そんな、からかわないで下さい。21でも現実世界でアルフ様の様に若くから政治に関わる事はしてないので、今まで通りでお願いします! 」 ルキアの訴えにフフっと笑った。 「でも凄いなルキアは。全然知らない私の為に飛び込んでくるなんて、相当の勇気だぞ? 」 アルフの問いにルキアは顔が赤くなる。 「えっと…それは…ゴニョニョ…」 言葉が濁る。 「えっ? なんだ? もう隠し事はなしだぞ? 」 アルフに詰め寄られ、 「ゲームのパッケージのアルフ様のお顔が余りにも綺麗で…ついボタンを…」 と、白状した。 その言葉にアルフは笑った。 「アハハ、そうかそうか! この顔も役にたつことはあるんだな」 面白そうに言いながらルキアの顔を見て「もう隠し事はないか? 」と、尋ねた。 (どうしよう…消える魔法の事は言っていいのかな? 誰にも言うなって…) ルキアは少し考えて答えた。 「私がここに来た経緯に嘘はないですが、1つだけ言って良いのか分からない事があります。言う事によってアルフ様にも危険が及ぶかも…少し待ってもらってもよいですか? いつか必ず話しますから」 「そうか、分かった。話してくれるのを待つよ。それより、ルキアは私が国王になったら元の世界に戻るのか? 」 アルフは気になっていた事を聞いた。 「そ、それは…私にも分からないです。ゲームをクリアすると戻れると思っていましたが、そんな事も言われてないし…戻りたいと…思わなくなってきてるし…」 ルキアの素直な気持ちにアルフは嬉しくなった。 「ルキアが、そう思ってくれてるのは嬉しいな。しかし今は先の事は考えず母上の死因を調べ、アリーン様を王妃の座につかせない様にしないと! 」 「はい、私もお手伝いします! 」 ルキアは嬉しそうに言った。 アルフはルキアの涙に濡れた頬を触り、 「元気が出たな? よかった。今度お前の世界の話も聞かせてくれ」 「アルフ様…私を受け入れてくださりありがとうございます」 「ルキア、そんな可愛い事言うな。我慢してるのも限界なんだぞ? 」 アルフはしかめっ面な顔をして文句を言う。 「そ、そんな…」 ルキアは困って顔を下げた。 アルフはもう一度ルキアの顔をあげ、 「ルキア、嫌なら逃げなさい。殴られても怒らないから」 そう言ってルキアに顔を近づけていく。 ルキアは少し驚いたが、黙って目を閉じた。 アルフはそのままルキアにキスをした。 初めてのキスは自分の涙で味が分からなかったが、凄く胸がドキドキして心臓が飛び出しそうだった。 アルフの唇は凄く柔らかく、触れるだけのキスなのにルキアの体の中から込み上げてくるものがあった。 少したってアルフが唇を離した。時間にして5秒程だろうか? それでもルキアには刺激が強く心臓がバクバクしていた。

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