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第28話
アルフの上半身が見えた。
服を着ている時は細く見えるが脱ぐと鍛えられてる事がわかる。
腕にも腹にもしっかりと筋肉がつき、バランスもいい。
ルキアは自分の着替えを忘れ見とれていた。
(なんて綺麗な体なんだろ…顔は綺麗で女の人みたいだけど、体は男の人なんだな…あの腹筋…触ったら気持ち良さそう…)
ルキアの視線を感じたのかアルフが振り返る。
「どうした? ルキア、着替えてないではないか? 」
「い、いえ、ちょっと…見とれてて…」
ルキアの素直な答えにアルフは嬉しそうな顔をする。
「お前は本当に可愛い奴だな? そんな可愛い事を言うな。我慢出来なくなるぞ」
ガウンを羽織っただけのアルフがベッドに腰かけルキアの頬を触る。
その姿だけでもルキアはドギマギしてしまう。
(目に毒だ…)
「すいません…」
「謝るな、私は嬉しんだよ。でも我慢出来なくなる前に着替えてくれ」
「は、はい! 」
ルキアは急いで自分も着替え布団に入った。
「ほら、おいで」
アルフはルキアを自分の所に抱き寄せ腕枕をする。
(こんな事されてゆっくり寝れる気がしないよ…)
ルキアは真っ赤になりながらも逆らわずアルフの腕の中で大人しくする。
「今日はゆっくり寝れそうだ。おやすみ、ルキア」
アルフはルキアのおでこに優しくキスをして言った。
「はい、おやすみなさい」
ドキドキして眠れないと思っていたルキアだが、アルフの腕の中はとても心地よくいつの間にか眠りについていた。
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朝になりいつも通りアルフを起こしに来たガフは、寝室に入り違和感を覚えた。
(ん? アルフ様が起きてない? いつもなら寝室に入ると気配に気づかれるはずなのに…)
アルフの警戒心は相手がガフでも寝室に入るとすぐ気づき目が覚めていた。
しかし、今日は起きてくる気配がない。
(まさか、何かあったのでは? )
ガフは心配して急ぎ足でベッドに近づく。
声をかけようとしてガフの足が止まった。
ガフの目にアルフとアルフの腕の中にいるルキアが目に入った。
(アルフ様、まさかルキア殿に手を出されたのですか! )
ガフは驚いて2人をマジマジと見た。
2人はガフに気づかず寝ている。
(なるほど…だから、さっき扉の護衛達が私を見て複雑な顔をしたのだな? )
護衛達の中にはまだアルフとガフの関係を疑っている者もいる。
ガフが尋ねて来て説明していいのか困ったのだろう。
「全く…関係ないのに、勝手に心配されるこっちの身にもなって下さいよ…」
ブツブツ文句を言いながら2人に声をかけた。
「アルフ様、ルキア殿、起きて下さい! 」
ガフの声に先に反応したのはルキアだった。
「ガ、ガフさん! す、すいません! 」
「ルキア殿、おはようございます。謝る必要はありませんよ。それより大丈夫ですか? アルフ様に無理強いをされたのでは? 」
「ガフ、言い方が酷くないか? 私をなんだと思ってるんだ? 」
アルフが機嫌悪い声を出しながら起きた。
「アルフ様、おはようございます。私は事実を申してるだけです。ルキア殿に何をされたのですか? 」
「何もしてないぞ? 人聞きが悪い、なあルキア? 」
「えっ? は、はい! 」
ルキアはアルフに促されコクコクと頷く。
「では、ルキア殿の首筋の跡はなんでしょうか? 虫にでもお刺されに? 」
ガフは嫌味っぽくアルフに問いただす。
「お前は本当によく気づく奴だな? その性格、恋人が出来たら嫌われるぞ? 」
ため息と共に言い返す。
「嫌われる位なら恋人はいりませんよ。それより、アルフ様でも無理やりルキア殿に手を出されたら…」
「だから、手は出してないって! ちょっと口付けしただけだ! 」
ガフの問いに、バカ正直に答えるアルフ。
「口付けだけでも手を出してますよ。それに合意の元でなければ…」
「ガ、ガフさん、私は大丈夫です! それに、もう仕事に行きますので、これで! 」
ガフとアルフのやり取りに耐えられなくなったルキアは、ガフの言葉を遮り着替えを抱えて隣の部屋に行った。
バタバタと音がしてルキアが部屋を出て行ったのがわかる。
ガフはその様子をため息をつきなが見てアルフの方へ向き再度聞いた。
「アルフ様、昨日何があったかお話下さい。そう出ないと私も対処出来ません」
「はあ、お前は本当に小姑みたいだな? 全く…」
そう言いながらもガフは強い味方なのは分かっているアルフは、昨日の出来事を説明した。
今まで王妃に言われた事もガフには黙っていたアルフはそこも踏まえて全部ガフに話した。
ガフはアルフの話を聞いて驚きの表情をする。
「まさか、そこまでの話とは想像してませんでした…アルフ様、王妃様のお話も私に黙っていたとは酷いですよ? 」
信用されてないのかとガフは文句を言った。
「そうではない、ルキアが現れる前に言うと、絶対幻覚とか、毒のせいとか騒ぐだろ? 私も確信が持てなかったのだルキアが現れるまで…」
「現れてから随分経ちましたけど? 」
「また、お前は嫌味を言う。ルキア本人から話を聞くまで本当かどうか分からないだろ? 」
「まあ、そうですが…」
「それで、昨日教えてくれたからお前にも話したんだ」
「分かりました。まさかルキア殿が違う世界の方とは…」
「この話は誰にも言うなよ? ルキアに危険が及んだら不味いからな」
「分かっていますよ。それより、ルキア殿が他の世界から来たのは分かりましたがどうしてアルフ様と口付けをする関係になるのですか? 」
ガフの問いにアルフはため息をつく。
「お前も少しは恋愛に興味を示せ。説明するのも面倒だ」
「私にそうゆうのは分かりません」
ガフの答えにアルフは少し意地悪そうな笑みをこぼしこう言った。
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