29 / 88

第29話

「お前、分からないと言っているが昨日カオとルキアが揉めてると思ってルキアの腕を掴んだんだろ? 」 「それは皇族のカオ様にルキア殿がお触りになっているから問いただしただけですよ? ルキア殿からお聞きになったのですね? 」 「昨日教えてくれたよ」 「その事については私からもご報告しようと思っていたのですが、ルキア殿が言わなくてもよいと言っていたので悩んでました。言ったのであればどうぞ処罰を」 ガフが頭を下げて説明する。アルフは呆れた顔をしながらガフを眺めた。 「お前は本当に真面目だな? 誰も怒ってないぞ? ルキアにアザがあったのはムッとしたが、ルキアの説明で悪気がないのはわかったし、カオを守ろうとしたんだろ? 」 「それはそうですが…」 「という事はお前はカオを…」 言いかけて途中で止める。 昨日ルキアに言われた事を思い出したのだ。 __________________ 「アルフ様、ガフさんに絶対カオ様の事好きなんだろ? とか言ってはダメですよ? 」 「なんでだ? その話を聞くとガフもカオの事好きに聞こえるぞ? 」 「そうかもしれませんが本人がちゃんと自分で気づかなきゃ! 」 「そうゆうもんか? ガフが自分の気持ちに気づくのは時間かかりそうだぞ? アイツは恋愛に疎いかなら…」 「ヒントをあげるのはいいと思いますが、最後は自分で気づかなきゃ! 」 「そんなもんかな? わかったよ、言わない」 __________________ 「私がカオ様を…なんですか? 」 途中で止めるアルフに怪訝な顔をする。 「いや、なんでもない。とりあえず処罰はしないから、私が忙しい時ルキアを守ってくれ」 「かしこまりました。では、明日の社交界の流れですが…」 __________________ 急いでアルフの部屋を出たルキアは診療所に戻る。 まだヨリムは起きてないと思いそ~っと自分の部屋に戻ろうとした。 「お、ルキア。朝帰りか? 」 突然ヨリムに話しかけられ驚く。 「ヨ、ヨリムさん、なんでもう起きてるんですか? 」 「いやーお前が朝帰りすると分かって早く起きてからかってやろうと思ってな」 ニヤニヤしながら近づきルキアの顔を覗き込む。 「アルフ様の所に泊まったんだろ? 」 「な、なんで、そんな事を? 」 「昨日の夜のうちに知ったぞ? 部屋の護衛から広まったからな」 「早! 早すぎませんか? だってあの人達、朝もいましたよ? 」 「あ、認めたな? 」 墓穴を掘ったルキアはしまったと手で口を覆う。 「それはな…」 扉の護衛⇒見回り⇒執事、メイド⇒ヨリム、と説明した。 「そ、そんな…だから戻って来る時チラチラ見られてたのか…」 (変だと思ったんだよな…広まるの早すぎ…) 「そうゆう事だ。で、どうだった? アルフ様は優しかったか? 」 「ヨ、ヨリムさん! 下品ですよ! ただ泊まっただけです! アルフ様の体調が優れないから、侍医として…」 苦しい言い訳にヨリムは苦笑いをした。 「お前なー、そんな言い訳通用しないぞ? アルフ様は今まで誰も泊めた事ないんだぞ? 今までの侍医やガフさんでさえ、アルフ様の体調が悪い時は皆扉の前で待機だったと聞いたぞ? 」 「そ、そうなんですか? 」 「そう! そんなアルフ様が初めて人を泊めた! 挙句にほらこんな物までつけて」 ヨリムはルキアの首筋のキスマークをチョイチョイとつつきながらからかう。 「こ、これは…でも何もありません! ただ寝ただけです! 」 言い訳は出来なさそうだが誤解はされたくなくてルキアは強調した。 「ふ~ん、ま、そうだろうな。もし何かあったらお前はもっとフラフラだろうからな」 「えっ? なんでですか? 」 キョトンとして聞いてくるルキアにヨリムはため息をついた。 「こんな無知ではアルフ様もお可哀想に…お前男同士の営みを知らないのか? 」 ため息まじりにヨリムが説明をしてくれる。 ヨリムの話が進むにつれてルキアの顔はどんどん真っ赤になっていく。 「と、もし何かあったらこんなに元気じゃないって事だ。ま、そのうち分かるよ」 「そ、そんな~…」 情けない顔のルキアを笑いながらなだめる。 「まあまあ、その時の為にいいモノをアルフ様に届けとくよ。それより、色々言われたくないなら、ガーゼやるから首筋隠しときな」 「はい…」 ルキアは少々怖くなりながらもガーゼでキスマークを隠す事にした。 (男同士のエッチって大変なんだな…っていうか、俺とアルフ様がするとは限らないだろ? 昨日のキスもアルフ様の気まぐれかもしれないし…でも、それはそれで嫌だな…俺、アルフ様の事好きなのかな? いや、好きは好きなんだけど…) ルキアは自分の感情が恋愛の好きなのか、ゲームの中にいるからそう思ってるのか、人として好きなのか分からなかった。 (現実世界でも恋愛した事ないから分からないや…) 「好きってなんだろ…」 ルキアが考えていると、バタバタと音がしてカオが入ってきた。 「ルキア、兄上の所に泊まったって本当か? 」 「一言目がそれですか? 」 ルキアは顔を顰めため息をつく。 「だって、メイド達から聞いて気になって気になって…」 「みんな気になってるのさ。午前中はいいから、カオ様と話しておいで」 ヨリムが笑いながら許可をだす。 「ヨリム、すまないがルキアを借りるぞ! 」 カオはそう言ってルキアを引っ張って行った。 「ハイハイ、行ってらっしゃいませ」 送り出してため息をつく。 「今日は、宮殿内がバタバタしそうだな…」

ともだちにシェアしよう!