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第31話

--社交界当日-- コンコン ガフがアルフの寝室をノックする。 「アルフ様、ルキア殿がいらっしゃいましたよ」 「そうか入れ」 ガブに促されルキアはアルフの寝室に入る。 そこには正装したアルフがいた。 いつもは下ろしている髪を後ろで1つに結び、アデウス国の紋章が入ったスーツを着ている。 いつもピシッとしているが正装はまた一味違う。 ルキアはしばし見とれて言葉もなくアルフを見つめていた。 たまらずガフが声をかける。 「ルキア殿、見つめすぎです」 ガフの声にハッとしてルキアは、慌てて謝る。 「す、すいません! 」 「おい、ガフ! いいではないか! 私は構わないと言ってるだろ? 」 「私が居ない所では構いませんがいる時はダメです」 「全く…ルキア、お前も着替えろ。白衣で私の横にいるのは私が具合悪いみたいで目立ってしまう」 「そ、そうですか…でも私は正装など持ってないですよ? 」 「知ってる、だから作らせた。ガフ、持って来てくれ」 「かしこまりました」 (作らせたって…いつの間に…) ガフが持って来たスーツを渡されてルキアはそれに着替えた。 (ピッタリだ…なんで? って聞くのが怖いけど…) なんで? って顔でアルフを見た。 「うん、似合ってるぞ。なんでサイズが分かったか、不思議そうな顔をしてるな? こないだ寝てる時に触って…って言うのは嘘だ。今赤くなったな? 」 「な、なってませんよ! からかわないで下さい! 」 「アハハ、悪い悪い。お前の反応が可愛くてな。これはヨリムに聞いたんだ。制服作るのにサイズ測ったろ? 」 「あ、そういえば…」 赤くなった自分を呪った。 (考えれば分かるのに俺ってばアホか! 恥ずかしい…) 「さっ、もうすぐ始まるから行くぞ。最初私は父上達と一緒に壇上にいるからその後合流してくれ」 「は、はい。分かりました」 「ガフ、ルキアをよろしくな。くれぐれも変な奴を寄せ付けないように! 」 「はいはい、かしこまりました」 言い返す気も失せたガフがため息混じりに返事をする。 3人は会場の大広間に移動する。 ルキアはガフに小さい声で話しかけた。 「ガフさん、今日は皇族の方が全員お集まりになるのですか? 」 「はい、そうです。ルキア殿はカオ様とフルーク様はお会いはしてますが、国王陛下や嬪妃のアリーン様、アルフ様の兄上第一王子オーム様、妹殿第一王女サニー様、弟殿第五王子プレーン様は初めてお会いする形になると思います」 「そうなんですね、それは緊張しそうですね…」 (アリーン様はもう見たけど、オーム様、サニー様、プレーン様は初めてだよな? そういえば…サニー様の侍医になったチヒロって子が俺と同じ回答したって言ってたよな? その子も今日いるのかな? ) 「大丈夫ですよ。アルフ様の侍医としてお役に立ってるのは国王陛下もご存知ですから。最近アルフ様がご健康で国王陛下もお喜びになってます」 「それはありがたいですが…」 (アルフ様と俺の関係を知ったら、怒るんじゃ…とりあえず大人しくしとこう。それよりチヒロって子、ガフさんは知ってるのかな? ) 「あの、ガフさんはサニー様の侍医のチヒロって子知ってますか? 私はまだあった事ないので…診療所にも来ないし…」 「ああ、チヒロ殿ですね。彼女は侍医ですが、サニー様のお世話係もしていますので診療所では働かず、サニー様のお傍にいるんですよ」 「だから、診療所には居ないんですね! どんな子なんですか? 」 ルキアの質問にガフは怪訝な顔をした。 「ルキア殿、急にどうされたんですか? チヒロ殿の事を知りたいなんて。アルフ様に聞かれたら怒られますよ? 」 前を歩くアルフを見ながら小さい声で言った。 「ち、違いますよ! そんな名目ではなくて同じ侍医として初めて会うからどんな子か知りたいだけで! 」 慌てて言い訳する。 「それならよいですが、どんな子ですか…そうですね、ルキア殿に少し似てますかね? 黒い瞳に黒い髪ですから」 (俺に似ている? 俺に似ていて試験の時俺と同じ回答をした…まさかな? ) ルキアがブツブツ考えながら歩いてると、 「ルキア、着いたぞ」 アルフに言われて顔を上げたルキアの前にはいつもと違う大広間があった。 「す、凄い…」 豪華絢爛とはこの事か! と言わんばかりの装飾が施された大広間は想像を超える位豪華だった。 「では私は父上の所に行くからな。ルキア、ガフとゆっくりしててくれ」 「は、はい。行ってらっしゃいませ」 ルキアとガフに送り出されたアルフは颯爽と歩き、国王がいる壇上に向かった。 (あれが、国王陛下か。アルフ様を少し老けさせた感じだけど、似てるな…) 「ルキア殿、余り見てはいけませんよ」 小さい声でガフが諭す。 「は、はい、すいません…」 「とりあえず私達は壇上の近くにいましょう。何かあった時にすぐ対処出来るように」 「はい、分かりました」 ルキアはガフと壇上に向かいながら大広間の様子を見た。 (本当に豪華絢爛だな。女の子達もドレス姿だし、みんな可愛いな。アルフ様はこんなに可愛い子達に言い寄られてるのか…なんで俺なんかに構うんだろ? もしかして、綺麗な子見すぎておかしくなったとか? ) またマイナスな事を考えながらキョロキョロする。 (チヒロって子はまだ来てないのか? サニー様らしき子も壇上にいないし…) その時「サニー様よ」と声が聞こえた。 ルキアは入口の方を見る。 そこにはドレス姿の可愛い女の子がいるた。 アルフの妹とあって顔が整っている。招待されてる隣国の王子がザワザワしだした。 サニー王女も年齢的に婚約をしていい年だから、今日はお披露目といった所だろうか。 サニーは周りのざわつきなど気なならない様子で一例をして優雅に歩いて行く。 その後ろにメイド服と似た格好の女の子がいた。 (あれがチヒロって子か! 確かに黒髪に黒い目…パッと見、日本人に見える…チヒロって名前も日本名みたいだし…でもまさか…) ガフとルキアの横をサニーとチヒロが通って行く。 その時チヒロがルキアを見た。 その目には敵意みたいなのが見えた。 (なんだ、なんで睨まれたんだ? 初めて会ったはずだぞ? まさか、あの子もガフさんが好きとか? ) ルキアはガフと初めて会った時の事を思い出していた。 「全員集まりましたからそろそろ始まりますよ! 」 ガフの声にハッとする。 (とりあえず今はこっちに集中しよう! 変な動きをしてる人か見ないと! ) ルキアは気持ちを切り替え社交界に挑む。

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