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第33話
振り返るとサンドラ王女がいた。
サンドラはニコニコしながらアルフの腕を取りながら甘えた声をだす。
「アルフ様、お約束ですよ? 早く行きましょ」
「サンドラまだ後でよいではないか」
アルフがぶっきらぼうに腕を払う。
「でも私の最初のダンスが違う方では婚約者として示しがつきませんわ。私の事も考えて下さい。それとも…」
サンドラはルキアを横目で見ながら、
「こちらの方と踊るんですか? 男同士で? 」
嫌味たっぷりの言い方をする。
その様子を見ていたサニーは話を遮る。
「サンドラ王女、お兄様は今私達とお話してたのよ? 邪魔をしないでくれる? 別にお兄様じゃなくてもあなたには踊ってくれる王子がいっぱいいるじゃない! 」
「それはどうゆう意味かしら? 」
「あら、聞いてるわよ? お兄様に相手されないから手当り次第色々な王子と遊んでるって! 」
サニーの言葉にサンドラは怒りを露にした。
「あなたどこからそんな噂を? アルフ様、誤解でございます。他の王子と遊ぶなんて…私に振られて嘘の噂を広めてるんですわ! 」
「またそんな嘘を! 」
「サニー王女、いくらアルフ様の妹でも許しませんよ? 」
「私は本当の事を言ってるだけですわ! 」
「よくもそんなデタラメを! 」
サンドラが手を挙げた瞬間アルフがそれを止める。
「2人とも止めなさい! 人前でみっともない。」
アルフはサンドラの手をさげルキア達の方を見ながら、
「私はサンドラと踊ってくるから待っていてくれ」
と言って、サンドラと広場の中央へ歩いていった。
サニーはその後ろ姿にべぇーと口をだす。
「サニー様、それは皇族の王女として恥ずかしいですよ」
ガフが注意する。
「構いませんわ! 全くお兄様もお優しい! ね、ルキア! あなたも腹が立つでしょ? 」
今まで女の戦いみたいなのを見た事がないルキアは呆気に取られていた。
(いや、どちらも怖いわ! 女の子って大変なんだな…)
「は、はい…そうですね…サニー様の意見に賛成です! 」
ルキアを従わせ満足のサニー。ガフとカオはいつもの事とため息をつく。
その時アリーンの執事が傍には来てカオに声をかけた。
「カオ様、アリーン様がお呼びです」
「母上が? 分かりました。では私はこれで」
一礼してカオはその場を去る。
「私もチヒロとゆっくり過ごしますわ。ガフとルキアも楽しんで」
『はい、ありがとうございます』
サニーが去りルキアとガフはため息をついた。
「本当にサニー様は威勢が良すぎて困ります」
「ガフさん達はいつもこんな感じなんですか? 」
「そうですね、サニー様も昔から存じ上げていますが、いつも誰と誰がイチャイチャしてると、お話になってますね…全く…」
(どこの世界にも腐女子っているんだな…)
ルキアが感心していると広場がウワッと沸いた。
アルフとサンドラの登場にみんな場所を空ける。
周りの娘達からため息が漏れる。
「アルフ様とサンドラ王女だわ」
「やっぱり美男美女よね! とても美しい2人だわ」
「本当ね。見て、あんな優雅に踊って見つめあってるわ! 」
「素敵…私もアルフ様に見つめられたいわ」
「私も、妃は無理でも側室にしてくれないかしら? 」
「本当ね、サンドラ王女だけなんてずるいわ! 」
その様子を少し離れた場所で見ていたルキア。
娘達の会話がグサグサと刺さる。
(本当にそうだよね、俺もそう思うもん…アルフ様も、サンドラ王女がアリーン様の姪じゃなかったら普通に婚約してたんじゃないのかな? )
マイナスな事ばかり考えてると、傍にアルフのメイド達が近づいてきた。
「ルキア、何悲しい顔してるのよ! 」
「そうよ、アルフ様は嫌々踊ってるのよ? 国王陛下の手前アリーン様と揉めるのは良くないから」
「見て、あのサンドラ王女の勝ち誇った顔! あームカつく! 絶対ルキアの方が可愛んだから! 」
メイド達の励ましに自然と笑顔がこぼれる。
「みんな、ありがとうございます。私は大丈夫ですので。あの2人はお似合いですよ? 」
「ルキア、そんな事ないわよ! ルキアだってアルフ様と踊ったらとても可愛いわよ? 」
「でも、男同士で踊るのは変ですよ? 」
「そうよね、いくらルキアが可愛くてもスーツ姿だしね…」
「そうね、ルキアは可愛くても男子だしね…」
「でも、ルキアの顔の女子がいたらいいのにね」
1人のメイドの発言にみんなハッとした顔をする。
「そうよ! ルキアが女子だったらいいのよ! 」
「そうね、その手があったわ! 」
「やる? 」
「やりましょ! 」
メイド達だけで完全に盛り上がり話が完結してしまった。
(なんだなんだ? 嫌な予感しかしないぞ? )
ルキアはメイド達の会話が自分抜きで進んでる事に危機感を募らせ、後ずさりする。
「ルキア! 待って! いい事思いついたのよ! 」
「そうよ、一緒に来て! 」
「いや、私はガフさんと…」
「ガフ様、ルキアを少しお借ります!
」
ガフはこの後の事が予想出来てるのでため息混じりに許可を出す。
「ハイハイ、行ってらっしゃい」
「ガフさん、私は行きたくないですよ? 」
「大丈夫です。とって食われる訳じゃないので…」
「そ、そんな…」
ルキアの意思はみんな無視してメイド達はルキアを連れて会場を後にする。
「本当に、あのパワーを仕事に活かしてくれないものか…」
ガフは諦めながらルキアを送り出した。
その様子を踊りながら見ていたアルフは、
「もう、よいだろ? 私は仕事に戻る」
「えっ? ア、アルフ様、待って! 」
サンドラの言葉は待たずダンスを止めてガフの元に行く。
「おい、ガフ! ルキアはどうした? なんでメイド達に連れて行かれた? なんで止めなかったんだ? 」
アルフの攻撃にガフは益々ため息をついた。
「アルフ様、落ち着いて下さい。危険なら私が行かせる訳ないですよ? 大丈夫と許可をしたのです」
「なぜその様な事を? 」
「不本意ですがアルフ様を喜ばせる為です」
「??」
アルフはガフの言っている事が分からず困惑した顔をする。
「とりあえず、私を信じてお待ち下さい。しばらくかかりそうなのでその間に他の国々の方にご挨拶に行きますよ! 」
「わかった…」
納得行かない顔をしてるが、ガフが自分騙さないのは知ってるので渋々後をついて行く。
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