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第34話

アルフとガフが他の国の人と話してる時、カオは母親のアリーンにある女の子を紹介されていた。 「カオ、こちらはシュリム国の第二王女のローレンよ」 「初めまして、カオ王子」 まだ幼い表情が残るローレンは笑顔でカオに挨拶をする。 「初めまして、カオです」 カオも母親の手前礼儀正しく挨拶するが、なぜアリーンがこの子を紹介したのか不思議に思っていた。 「カオ、ローレン王女は今16歳で初めての社交界デビューなんですって。あなたダンスのお相手をして上げて」 「私がですか? そんな…」 「カオ、シュリム国は我が国と友好関係の国なのよ。その王女が社交界デビューなら、馴染める様にご協力しないと。歳的にフルークよりあなたの方が近いでしょ? ほら行ってきなさい」 にこやかに言いながらもアリーンの目は笑ってない。 目で逆らうなとカオに訴えかける。 (母上一体何をお考えなんだろうか…) カオは逆らっても無理だとわかりローレンをダンスに誘う。 「ローレン王女、私で務まるか分かりませんが、ご迷惑でなければ最初のダンスのお相手をさせて下さい」 お辞儀をし手を差し伸べる。ローレン頬を赤らめながら嬉しそうに頷いた。 「カオ王子、よろしくお願いします」 手を取り2人で踊りに行く。 その様子を離れた所から見ていたフルークが近づいてきた。 「母上、急にどうされたのですか? カオに王女をあてがって…ダンスなら私が相手しますよ? 」 「いいのよあの子で。私に考えがあるから、黙ってなさい」 「母上、何をお考えで? 」 「フルーク、決まったら説明するから。あなたにやってもらう事があれば言うわ」 フルークはアリーンの言い方にカチンときたが、反論せず黙って頭を下げ後ろに下がった。 「最近フルークもうるさいわね。さて、上手くやるのよ…」 ローレンを見ながら呟く。 __________________ ガフはカオとローレンが踊り出したことに気づいた。 アルフやフルークよりは背が低いが、スタイルも良く、身についた仕草、スマートにレディーファーストをする姿は、周りの令嬢達もため息をもらしている。 ガフは他の女の子とダンスをしているカオの姿に違和感を覚えた。 何故か分からないがモヤモヤする。 (なぜカオ様を見てるとモヤモヤするんだろうか? いつもお話してる時は何も感じないのに…) 感情に説明がつかずガフはイライラしていた。 「おい、ガフ! 何をイラついてる? 」 アルフはガフがイライラしてるのに気づきガフの視線を追った。 カオとローレンが踊ってるのを見たアルフは、ハハーンと言いながらガフを見る。 「なんですか? その分かりましたっていうお顔は? 」 「そりゃ分かったからな! お前、カオが王女とダンスしてるのにイライラしてるんだろ? 」 「別に私はイライラなどしておりません! 」 「そうか? じゃあなんでカオを見ながらら顔を顰めてるんだ? 」 「そんな、顔を顰めてなどおりませんよ? 」 「いや、嫌そうな顔してたぞ?」 「してません」 ガフの頑なな拒否にアルフはため息をついた。 「はぁ~お前はルキアと同じで自分の事には疎いな? とりあえず私は事実を言ってるから、少し真面目に考えろ! カオを悲しませるなよ? 」 「悲しませる…なぜ私がカオ様を悲しませるのですか? 失礼な事はしてませんよ? 」 ガフの問にアルフはガフの両肩に手を置き、分かった分かったと頷いた。 もう言っても意味がないと気づいた。 「もう言わないからカオの望みを叶えられるなら、聞いてやれ」 「はぁ…私で出来る事なら…」 「そう、それでいい。嫌ならカオが相手でも断っていいからな! 」 「分かりました」 アルフの言っている意味がイマイチ分からないガフだったが、カオを悲しませる事はしないと思っているので素直に返事をする。 2人が言い合っていたら突然会場の入口がどよめいた。 人々が入口に詰め寄る。 みんな、驚きと感嘆の声をあげている。 「ガフ、なんだあれは? どこかの王女でも来たのか? 」 あまりにも入口に人が詰め寄るのでアルフも興味を引いた。 「そうですね、アルフ様がお喜びになる方が来たんだと思いますよ? 」 「私が? 」 ガフの意味深な発言にアルフは怪訝な顔をする。自分が喜ぶ相手なんてルキアしかいない。 それを知ってるガフが何を言ってるのか、不思議に思う。 「早く行かれないと、他の王子や伯爵の息子達に取られますよ? 」 珍しくニヤニヤしながらガフがアルフを入口の方へ促す。 人混みでお目当ての王女が見えない。 「凄い人気だな? 余程可愛らしいのか? 」 少し興味を持ったアルフが近づいていく。 人混みを進むとようやくその女の子が見えた。 スラッとしたスタイルに、可愛らしいピンク色の花のドレスを着ている。黒い髪をアップにしたヘアスタイルで、ドレスと同じ花を彩った髪飾りをつけている。 化粧をした顔には黒い目がキラキラと映えている。 本人は恥ずかしそうに下を向いていた。 そしてその女の子の横にはアルフのメイド達がドヤ顔で立っていた。 「ま、まさか…ガフ、あの子は…ルキアか? 」 唖然としてガフを見ると流石に分かりましたかと笑った。 「そのまさかでございます。メイド達がサンドラ王女に対抗したようで…」 「そ、そうか…それにしても本当に女にしか見えないな? 」 「本当に私も今見てビックリ致しました。元々色も白く、華奢でいらっしゃいますので。ところで…」 ガフはビックリして動かないアルフを見ながら、 「良いのですか? あのままで? 」 と、伝えた。

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