37 / 88
第37話
ガフは急いで宮殿の裏に向かった。昔使われていた執事用の家は今宮殿内に移動したので誰も使っていない。人を連れ込むのにはもってこいだ。
家に着き扉を叩く。
「ルキア殿! いますか? 」
ドンドンと叩きながら叫ぶ。
中からは返事はない鍵がしまってると思いながらドアに手をかけるとすんなり空いた。
「ルキア殿! 」
急いで中に入り叫びながらルキアを探す。
対して大きい家ではない。一通り見たがルキアは居なかった。
「いない…ここでは無いのか? では一体どこに? ルキア殿に何かあればアルフ様になんて言えば…他に連れ込めそうな所は…」
ガフは肩で息をしながら考えた。
「ルキアは私の部屋にいる」
後ろから突然声がした。ガフが振り返るとファーストがいた。
ガフは驚きながらも近づき力任せにファーストを殴った。
「おい! ファースト、お前何をしたか分かってるのか? ルキア殿をどうする気だ? 」
ファーストの襟を持ち上げつめよる。
「そりゃフルーク様が手をつけるだろうよ! 」
「クソッ! 」
ガフが踵を返しファーストの部屋に行こうとした。その後ろからファーストが羽交い締めにする。
「離せ!! 」
ガフは力の限りファーストを殴りつける。
1発、2発、3発と殴りファーストがやり返してこない事に気づいた。
ガフは肩で息をしながらファーストを地面に叩きつける。
踵を返し行こうとした時、
「ガフ!! 」
アルフが向こうからやってくる。
「アルフ様! どうしてここに? 」
「カオがヨリムを呼びに来て聞いた! ルキアの身に何かあるかもしれないのに、じっとしてられるか! 」
アルフは執事用の家を見ながら「ここにはいないのか? 」と聞いた。
「はい、どうやらファーストの部屋に居るようです」
ガフはファーストを見ながら説明する。
「クソッ! ガフ、急ぐぞ! 」
「はい!! 」
2人が走り出そうとした時ファーストが絞り出す様に言った。
「お願いだ…フルーク様を止めてくれ…」
「ファースト、どうゆう事だ? 」
アルフが足を止め尋ねる。
「フルーク様はアリーン様に利用されてるだけなんです…彼は悪くない…アリーン様にそそのかされて…」
ファーストはポタポタ涙を流しながら苦痛の表情をする。
「私には止める権利はありません…お願いです…これ以上フルーク様に罪を犯して欲しくないんです…」
泣きながら懇願するファースト。アルフはその様子を見て、
「お前まさか兄上の事を? 」
尋ねるアルフにファーストは涙を流しながら苦悶の表情をする。
「私にそんな権利はありません…お傍にいられるならそれで良いのです…ただファースト様が利用されてるのが見てて辛いのです…」
アルフとガフは黙って見ていたがルキアを助ける事の方が先だと走り出す。
アルフとガフは急いでファーストの部屋に向かう。
ファーストの部屋はフルーク宮殿の裏手にあって目につきにくい。
特に今は警備も大広場に集中してるので手薄になっている。
「クソッ! こんな近くに居たとは! 間に合ってくれ! 」
2人はファーストの部屋に着き扉を叩く。
「ルキア! ルキア! いるのか? 」
ファーストの部屋の扉は頑丈で体当たりしただけでは壊れない。
「クソッ! ガフ、どけ! 」
アルフは手を扉にかざし集中する。
「アルフ様! まさか、風をお使いになるのですか? フルーク様にバレたら…」
「うるさい! そんな事どうでもいい! ルキアが無事なら! 」
アルフは手の平に全集中をし「フンッ! 」と力をこめる。
風が竜巻の様にアルフの手の平から出て扉に体当たりした。
バキッ!! と鈍い音がすると共に扉が変形し吹っ飛ぶ。
「ルキア! 」
アルフが部屋に飛び込み寝室に急ぐ。ガフも後に続く。
アルフは手をかざし寝室の扉も吹き飛ばす。
「兄上…」
寝室に入ったアルフの目にはルキアを羽交い締めにしているフルークが入った。
「アルフ? 」
「ンンッ!! 」
その様子を見たアルフの顔はみるみる変わる。
「兄上、ルキアを返して貰えますか? 」
そう言いながら手を払い、ルキアの布を飛ばす。
突然の扉の破壊と共に入って来たアルフに、フルークは唖然としている。
「ア、アルフ…今、何を使った? 」
「そんな事はどうでもいい! ルキアを渡せ! 」
「お前兄に向かってなんて口の聞き方だ? 」
「あなたを兄だとはもう思っていない! 」
「近づくな! 」
近づいて来たアルフにフルークはルキアを抱き上げ手を払う。
それと共にアルフの前に炎の柱がたった。フルークの魔法だ。
「クソッ! 」
アルフは自分も手を払い水をだし火を消していく。
フルークはルキアを抱き上げルキアに手をかざした。
「これ以上近づきとルキアに火をつけるぞ? 」
「あなたはどれだけ卑怯な事を? 」
アルフは怒りで体が震える。アルフの周りもビリビリと音を出し振動しだした。
「こ、これは、一体? 」
フルークの足元まで振動が伝わる。
フルークは振動で立っているのがやっとでルキアを落とした。
「ルキア、来い! 」
アルフの声と共にルキアの周りに風がまといフワッとルキアが浮く。そのまま凄いスピードでアルフの腕の中に入って来た。
アルフはルキアを固く抱きしめ大丈夫か? と確かめた。
「は、はい、大丈夫です…」
ルキアもこの状況に戸惑い驚いている。
「お前…風も操れるのか? 」
フルークが驚きの顔をしている。
「それがどうしましたか? もうあなたにバレても問題ありません! 言いふらしたいならどうぞ。怖くもありません! 」
アルフの強気な態度に驚きながらも分が悪いのも理解しているので窓に手をかける。
「とりあえず、ルキアは取られたから、退散するよ」
「待って下さい! 」
ルキアがフルークを引き止めた。
「フルーク様、お願いです! さっきの事考えて見て下さい! 」
ルキアの言葉にチッと舌打ちをする。
「お前はうるさい奴だ! 」
そう言ってフルークは窓の外に消えた。
ともだちにシェアしよう!