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第40話
会場に戻ったアルフの元にアリーンとサンドラが近づいてきた。
「あらアルフ王子、今までどこにいらしたの? 社交界とはいえ色々な国の方とのご挨拶があるのに放棄するなんて。王位継承権を持つ方がする事ではありませんよ? それとも余程のご用でもあったのかしら? 」
「そうですよ、アルフ様。変わりに婚約者の私がご挨拶して参りましたわ」
アルフは2人に笑顔で答えた。
「それはありがとうございます。ちょっと大事な用がありましてね」
「あら、それなら別にお戻りにならなくても良いのですよ? そちらに行かれては? 」
「アリーン様、もう大丈夫です。解決しましたので。今からは私がご挨拶にまわりますのでゆっくりお休みになられて下さい。もう若くは無いのですからご無理をされず」
アルフの言葉にアリーンは怒りを顕にした。
「アルフ王子、あなたは私が年老いたと言いたいのですか? 」
「そうですね、怒りっぽい所とかその通りでは? 侍医が言ってましたよ。歳を重ねると怒りっぽくなると。よいお薬をお届けしましょう」
アルフの嫌味っぽい言い方にアリーンは体を震わせる。
「お、叔母様落ち着いて下さい! 」
サンドラは慌ててアリーンを抑える。
「アルフ王子、それ以上言ったら許さないわよ? 」
「いいですよ。私もあなたがされた事を許すつもりもないですから」
「なんですって? 」
アリーンがアルフに詰めよろうとした時。
「アルフ、アリーン様になんて口の聞き方だ! 謝りなさい」
突如現れた人物がアルフを叱った。
「あ、兄上? 」
アルフは驚いた。そこに登場したのは、第一王子オーム・シート・アデウスだったからだ。
「アルフ、聞こえなかったか? 早く謝りなさい! 」
「兄上…」
アルフは突然のオームの登場に言葉が出ない。第一王子のオームは体が弱くこうゆう会にも出席しない事が多い。
今日の出席にもアルフは驚いたが、それ以上にアリーンを庇っている事に驚きが隠せない。
何も言わないアルフを見て、
「アリーン様、アルフがご迷惑をお掛けしました。まだ若いので我慢が効かないのです。私が代わりに謝るので許してやって下さい」
代わりに謝り頭を下げる。
「兄上! 止めて下さい! 」
「オーム王子、いいのですよ。私の言い方も良くなかったのでしょう。オーム王子こそ体調は大丈夫ですか? 」
「はい、最近は調子もよく政務にも少しですが参加しております」
アリーンに気にかけてもらって嬉しそうに笑顔になる。
「では、私はアルフ王子の言う通り下がるとしましょう。サンドラ、行くわよ! 」
「ま、待って下さい! 叔母様! 」
2人が立ち去ったあとオームはアルフの方を向いてため息をついた。
「アルフ、お前はアリーン様に敬意を示せないのか? 父上の妃だぞ? 何故そんなにアリーン様に突っかかる? 」
「お言葉ですが、兄上。父上の妃は母上だけです。アリーン様は嬪妃にすぎません」
「母上は亡くなられたではないか。アリーン様は母上が亡くなられた時から、父上や私の事をとても心配してくれたのだぞ? 今はこの国の政務にも参加されてる。お前の言葉は侮辱罪に当たるぞ! 」
「兄上…」
アルフはオームが何故アリーンを庇ってるのか理解しがたかった。今までオームは体調を崩す日が多いので余り政務に参加はしてこなかった。
そのオームが今日はアリーンを庇いアルフに楯突いている。
何かおかしいと思ったがここでオームを追求しても無理だと思い、アルフは下がる事にした。
「兄上の言いたい事は分かりました。私と意見が違うようですが、今ここで議論しても父上にも迷惑がかかるので、この話は後ほど…」
頭を下げアルフはその場を後にする。
(おかしい…以前の兄上らしくない。今までアリーン様にも特に関心が無かったのに。兄上とアリーン様の間に何かあった筈だ。後でガフに伝えて調べて貰わなければ…)
アルフが考えていると向こうからプリプリ怒っているカオが入ってきた。
(あれはまたガフが鈍感な発言をしてカオを怒らせたな? )
アルフは苦笑いを浮かべながらカオに近づく。
「カオ、顔に出てるぞ。ここではわきまえなさい」
「兄上…分かってます…」
「また、ガフに何か言われたのか? 」
優しく頭を撫でながら怒りを静める。
カオは不貞腐れながらアルフにさっきの出来事を説明した。
「ガフ殿、鈍感過ぎます! 私がこんなにアピールしてるのに! 」
「まあまあ、そう怒るな。ガフは手強いと前に教えただろ? 周りの事ばかりに機敏になり、自分の事は後回しだからな」
「でも、鈍感なルキアでも兄上の気持ちに気づいてるではないですか? 」
カオの言葉にアルフは苦笑いをする。
「気づいてるのかな? あの子は。手強いからな、ルキアも。相当我慢してるぞ、私は? 」
「兄上でも我慢するのですか? いつもなら…」
「こら、人聞きが悪いな! 本気で惚れた相手には嫌われたくないと思うのは一緒だ。私はルキアに嫌われるのが1番怖いのだよ。だからカオも思いを言ってないのに、思い通りにならないと怒ってはいけないよ? 」
なっ?と言ってカオの頭をポンポンした。
「はい」
「ルキアの様子はどうだ? 大丈夫そうか? 」
「あっ、着替え渡した後にガフ殿と言い合いになったので…すいません…」
自分勝手に怒ってルキアを置いてきたことを正直に謝る。
「分かった、謝らなくてよい。ガフが傍にいるなら大丈夫だろ」
カオを怒らず慰め背中を押す。
「さっ、父上の所に行こ。しばらく席を外したから、この後は仕事だぞ! 」
「はい、お供致します」
アルフとカオは気持ちを切り替え自分達の役割に徹する。
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