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第45話

ゼイゼイしていた息を整えチヒロは続けた。 「私のゲームはサニー様を結婚させて終わるの。終わったら元の世界に戻れるって書いてたわ。なのに全くその気配がないから私が戻れないって訳なの」 「そうなんだ…えっと、なんか分からないけど、ごめんね…」 とりあえず謝る。 ルキアが素直に謝ったのでチヒロも少し落ち着きを取り戻す。 「まあ、今更あなたに謝ってもらっても仕方ないけど、あなたがゲームをクリアしたら私のゲームが先行されるかもしれないし、一緒に元の世界に帰れるかもしれない。だからあなたのゲームの内容を知りたかったの」 「そうなんだね、俺のはアルフ様を国王にするゲームなんだけど中々難しくて…それに俺は元の世界に戻りたいか正直分からないんだよね…」 ルキアの発言にチヒロは驚いた。 「あなた…まさか、このままこの世界にいたいの? アルフ様がいるから? 」 「うん…それもあるけど、元の世界にいい思いもないし友達もいないもちろん恋人も。自分が必要とされてるかも分からなかった。でもここの人達はみんな優しくて俺を必要としてくれてるんだ…だから、まだここにいたい。もちろん、アルフ様を国王にしたいとは思ってるけどね」 「そう、あなたの思いは分かったわ。とりあえずアルフ様を国王にしたいと思っているなら、先の事は考えずそのミッションとやらをやりましょうよ! それから考えればいいじゃない? 」 チヒロの発言にルキアは思わず笑う。 「何よ? 」 「いや、立川さんってそんなキャラなんだと思って。いつも真面目で教授の手伝いとか率先してやってるし、優等生かと思ってた」 「あれは点数稼ぎよ! いい大学病院紹介してもらおうと思って。中身は恋愛ゲームオタクよ」 ふふっと笑って答える。 「意外なんだね」 「あなたも意外だったわよ? 最初は本当に同じ人か不思議に思ってたわ。ゼミのあなたは静かで暗くていつも下を向いてて…とごめんなさい」 言いすぎたと口を押さえる。 「はは、その通りだよ」 「でも、ここでのあなたは生き生きとしている」 「立川さんも楽しそうだね」 「立川さんはやめてよ。他の人に聞かれたら困るわ。チヒロって呼んで」 「分かった、チヒロさんはメガネなくても大丈夫なの? コンタクト? 」 「いやいやこっちの世界にコンタクトの液ないでしょ! それが転生したら視力が良くなってるの。びっくりしたわ」 「そうだよね、俺も馬に乗れたり、ダンス踊れたり、本当は21なのに18になってるし…」 「えっ? あなたは18歳なの? 」 「うん、君もだろ? 」 「違うわよ! 21のままよ! お陰で婚期を逃した人扱いだわ! 」 アデウス国では20歳前に結婚するのが普通らしく20歳過ぎると行き遅れ扱いをされるらしい。 「そっ、そっか…それも微妙に違うんだね」 「なんで、この世界はあなたに優しすぎるのよ! 私も18が良かった! うわっ、ムカつく、この肌! 私よりスベスベじゃないのよ! 」 突然チヒロがルキアのほっぺを両手で触る。 上に下にと触り張りが自分よりある事に嘆く。 「う、うん…なんか、ごめんね…」 申し訳なくなって謝るルキア。 その時突風が2人の間を突撃した。 「きゃっ! 」 突然の強い風にチヒロは思わず目を瞑る。 「うわっ! 」 ルキアはそのまま体が浮くのが分かった。浮いた体は後ろに飛ばされ誰かに抱きとめられ止まった。 「ア、アルフ様? 」 「ルキア、私が居ない間にもう浮気しているのか? 」 「う、浮気ってそんなんじゃありませんよ! 」 「では、何故あの子に顔を触らせていたのだ? 」 ルキアとアルフが話しているとようやく風から解放されたチヒロが目をあける。 「うわ~凄い風だったわね。こっちでも竜巻とかあるのかし…えっ? アルフ様? 」 目を空けたらルキアを抱き締めているアルフが目に入った。 「いつの間に…」 驚くチヒロ。 「私の大事な人にちょっかいをかけていたのかい? 」 アルフの言葉に唖然として笑いだした。 「アハハ、もう勘弁して下さいよ! そんな訳ないです! ハーバカらしい」 チヒロはヤレヤレと言った感じに首を振る。 「あのね、アルフ様。私は彼の事なんてなんとも思ってません! 私のタイプは逞しくて筋肉マッチョが好きなんです! 」 「タ、タイプ? マッチョ? 」 聞きなれないワードに首を傾げる。 チヒロはため息をつきながらルキアの方を見て言った。 「あなたから、誤解を解いといてちょうだい。バカらしくて説明する気もないわ。とりあえずさっきの事は協力するから。なんかあったら言って頂戴。ではアルフ様、思う存分ルキアを堪能して下さい。私は戻りますので」 頭を下げてチヒロは戻って行った。 チヒロのやましさゼロにアルフはルキアを見た。 「あの子は一体…サニーの侍医だろ? なんであんなに、ふてぶてしいのだ? 」 「すいません、アルフ様。1から説明しますね」 ルキアはチヒロが自分と同じ世界の同じ大学で顔見知りだった事、全然違うゲームでこの世界に転生してきた事、アルフを国王にするのを協力する事などを説明した。 「そうだったのか、あの子も転生して来たのか…だからあんなに仲良く見えたのだな? 私に隠れて逢い引きしてるのかと思ったぞ? 」 ルキアの頭にキスをしながら文句を言った。 「ち、違いますよ! あまりにも違う世界だから不思議に思って聞いてきただけです」 「余りにも違うとはあの子の世界はなんだったのだ? 」 ルキアはサニー王女の話をした。 アルフはルキアの話を聞いて大笑いをする。 「アハハ、それは気の毒だったな! サニーが虐められてる? フフ、見てみたい物だな。むしろ勝気だからやり返しそうだがな」 「で、ですよね…」 ルキアも社交界の時のサニーとサンドラの言い合いを思い出した。 「まあ、サニーに婚約者を見つけてくれるなら、兄として助かるがな。あいつは他人の恋人ばかりに、興味をしめしているから」 アルフはため息をついてサニーの日頃の行動を嘆く。 「でもサニー様は楽しそうですよ? 」 「まあ、サニーが幸せなら私はそれで良いんだがな。それよりルキア、久しぶり会ったんだから私にも幸せをおくれ」

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