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第50話

「アルフ様、ガフ様、お帰りなさいませ」 自分の部屋の前で執事が出迎える。 「ああ、居ない間に変わった事は無かったか? 」 「はい、平穏無事でございます。先程ルキア様がいらっしゃったので中にご案内しております」 その言葉にアルフの顔がパァっと明るくなった。 「ルキアが来てるのか? 」 「はい、先程…」 「そうかそうか、後で会いに行こうと思っていたが向こうから来てくれるとは」 ニヤニヤ嬉しそうなアルフはにガフがため息をつく。 「アルフ様、まだ政務は終わっておりませんよ? 挨拶したら政務に戻りませんと…」 「お前はうるさい奴だな? お前もその間カオに会いに行ってこい! 」 そう言って部屋の扉を開ける。 ルキアがソファに座っているのが見えた。 「ルキア! 会いたかったぞ! 」 アルフは一目散にルキアの元に行き抱き締めた。 「ア、アルフ様! ちょっとお待ち下さい! 」 「ヤダね、しばらく会えなかったんだ。これくらい許せ! 」 そう言ってルキアにキスをした。 「ンッ…ま、待って…」 ルキアはアルフを押し返そうとしたが力が強く叶わない。 アルフはルキアの抵抗を無視して何回もキスをする。そと時後ろで咳払いが何回も聞こえた。 「お兄様、ルキアをお離しになって下さい! 私達もいますのよ? 」 サニーが呆れた様に言った。 アルフがルキアを抱き締めたままルキアの後ろを見ると、隣のソファに、サニー、チヒロ、カオが座っていた。 「なんだお前達も来ていたのか? 何の用だ? ルキアだけで良かったのに…」 仕方なくルキアから離れソファに座る。 「久しぶりの再会をお邪魔して悪かったわ。でもお話があって来たの。少し我慢して下さい。後で、思う存分ルキアを堪能なさって下さい」 「サ、サニー様! 」 ルキアの意思はよそに勝手に差し出す。 「それは当然だ。なんだ、話とは? 」 「実はオームお兄様の事でお話が…」 サニーの言葉にアルフとガフは顔を見合わせる。 「サニー、どうして急に兄上の事を? 」 「ルキアが気になる事があるみたいなの。それで私に質問してきたのよ」 「そうなのか? ルキア? 」 「は、はい。最近お薬を減らした変わりにアリーン様の侍医から何か頂いているようなんです」 「アリーン様の侍医から? 」 アルフはガフを見た。ガフはルキアの意見は正しいと頷く。 「それでその診療記録が見たくて、カオ様と相談したのですが…」 ルキアはカオと計画した話をアルフとガフに説明した。 その話を聞いて最初に否定したのはやはりガフだった。 「カオ様、そんな危険な事はおやめになって下さい。もしバレたらどんなお怒りをもらうか分からないんですか? 」 「ガフ殿、落ち着いて下さい! 」 カオが慌てなだめる。 「確かに危険な賭けだな。バレたらすぐアリーン様に話がいくだろう。ただ最近の兄上の様子がおかしいのは私も知っている。原因がアリーン様にあるなら調べたい…カオ、大丈夫か? 」 「はい、私は平気です」 カオの返事にガフは黙って腕を組む。 「仮にその診療記録の場所が分かったとしても、ルキアとチヒロだけは危険だ。万が一バレたら2人とも重罪になってしまう。その役目は私とルキアでやろう! 」 「アルフ様が? でも、アルフ様でも見つかれば何か言われるのでは? 」 「確かにな、でも罪に問われる事はないだろう。それに私とルキアなら密会していた位の言い訳は使えるかもしれないしな」 「アルフ様、それはかなり無理な言い訳ですよ? 」 ガフは半分呆れてでも反対もしなかった。言っても聞かないと分かっているから。 「では、次のアリーン様の健診の前にカオに行ってもらおう。話は終わったな。では、帰ってくれ」 シッシッとみんなを手で追い払う。 「アルフ様、まだ政務が残ってますよ? 」 ガフの引き止めに、 「ガフ、少しだけだ。後で行く。それにお前もカオと久しぶりだろ? その間2人でイチャイチャしとけ」 と、被せ気味に言うとルキアを連れて寝室に行った。 「お兄様はさすがね、私達も帰りましょう。ガフ、カオをお願いね」 サニーはガブにカオを託しチヒロと出ていった。 「かしこまりました」 頭を下げ見送る。サニーが出ていくと「さて」と言ってカオの方を見る。 「ガフ殿、ごめんなさい。怒ってますか? 」 「怒ってませんよ心配してるだけです。さっ、アルフ様がお戻りになるまで私の部屋で待つとしますか? 」 「ガフ殿の部屋に入ってもよいのですか? 」 カオが嬉しそうに聞く。 「もちろんです、対して広くはないですが…」 「全然、気にしません! 早く行きましょ! 」 ガフの腕を取り嬉しそうに部屋を出て行った。 __________________ 「ようやくみんな帰ったな? ルキア、会いたかったぞ! 」 アルフはもう一度強くルキアを抱き締めた。 「はい、私もです」 ルキアも、アルフの背中に腕を回してギュッと抱きつく。 しばらくルキアを抱き締めたあと、アルフはルキアを離し顔を覗き込んだ。 「ルキア、何か話があるのだろ? どうしたんだ? 」 アルフの問いに驚いた顔をする。 「ア、アルフ様、分かってたんですか? 」 「そうだな、カオが話している時チラチラ見るから、カオの前では言えない事があるんだろなってね。だから人払いをした。さっ、言ってくれ」 ルキアはアルフの洞察力に改めて脱帽した。 「実は、こないだアルフ様の所から帰る途中…」 オームとアリーンの逢い引きの様子その時聞いた会話をアルフに説明した。 その説明にアルフの顔は険しくなる。まさか、オームとアリーンがそうゆう関係だったとは思っていなかった。 「なるほど…そうなると兄上の所にアリーン様の侍医が訪問してるのも理解が出来る…でも、兄上はなぜ? 父上のと分かっているのにアリーン様に手を出されたのか…」 「アルフ様、どうされますか? 」 心配そうなルキアを抱き寄せ背中をなでる。 「大丈夫だ、カオには言うのはやめよう。まだ、受け止められないかもしれない…頃合いを見てガフから伝えてもらうよ」 「そうですね…早く落ち着けば良いですね…」 ルキアはカオの事が心配だった。自分の母親が浮気してる上に、犯罪に関わってる可能性もある。 自分が暴こうとしてる事はカオを傷つけるだけなのでは? ルキアが落ち込んでいるとアルフが優しく抱き締める。 「ルキア、大丈夫だ。カオはああ見えて強い奴だ。それに今はガフが傍にいてくれる。それに私達も、なっ? 」 「はい」 「さっ、あと少しだけ傍にいてくれ」 そう言うとルキアのおでこにキスをして抱き寄せた。

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