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第53話
廊下の奥から覗くアルフとルキア。
少し覗いてると、コーンが薬セットを持って出てきた。
2人は慌てて壁に隠れる。
2人の横をコーンが通り過ぎて行く。
《よし、行くぞ! 》
《はい! 》
2人は小声で話しながらコーンの部屋に向かう。
コーンの部屋の前に着き扉に手をかける。
予想通り鍵がかかっている。
《やはり、鍵がかかっているな…よし! 》
アルフが扉に手をかざし開けようとする。
《だ、だめですよ! 音が響きますし万が一鍵が壊れたらバレてしまいます》
《しかし…》
《大丈夫です。私が開けます。私の想像通りなら、開きますから》
ルキアはポケットから鉄の針金をだした。
それを適当な形に曲げ鍵穴に入れた。
そして適当にカチャカチャやってみる。
《私の考えが正しければ…アッ! 》
その時ガチャと音がし鍵が開いた。
アルフは驚いた。
《ルキア、それは一体…》
《とりあえず、中に入りましょう! 》
ルキアはアルフを促し中にはいる。
「ふう、まずは一安心だ」
「ルキア、今のは何の魔法だ? 」
アルフが不思議そうに聞いてきた。
「魔法ではないですよ。実は私の世界ではこの方法を使って扉を開け侵入する泥棒がいるのです」
「えっ? ルキアは泥棒だったのか? 」
「ち、違いますよ! 」
慌てて否定する。
ルキアは自分がこの世界にいると出来ない事が出来るようになったと説明した。
「だからやり方は知りませんが、適当にやったら開いたって訳です」
ルキアの説明にアルフは感心した様に頷いた。
「随分待遇がいいゲームだな。それなら私が寝てても夜這いにこれるな? 」
ニヤニヤしながらルキアの腰に手を回す。
「ア、アルフ様、おふざけしてる場合ではないですよ! 早く診療記録見ないと! 」
「分かってるよ。お前も段々ガフに似てきたな? 」
ハイハイとルキアの後について行く。
2人は奥の部屋に入りカオから聞いていた机から鍵をだす。
その鍵で扉を開けた。フワーっと薬の匂いがした。その中にルキアの鼻を刺激する匂いが紛れていた。
「ん? この匂いは…」
「どうした? 」
「い、いえ…」
ルキアは気のせいかと思い。首をフルフルと振る。
「ルキア、これが診療記録か? 」
アルフが何冊も積み上げられている本を指差す。
「はい、多分そうだと…とりあえず端から全部見てみて、オーム様の名前を見つけましょう! 早くしないと戻ってきてしまいます! 」
「分かった。とりあえず兄上の名前があったら、お前に見せる」
2人は端から診療記録を見ていく。
想像より本の数はあった。手早くめくりオームの名前を探す。
早く探さなければコーンが健診を終えて戻って来てしまう。
しばらく探しているとアルフが声を上げた。
「ルキア、見てくれ! ここに兄上の名前が…」
「どれですか? 」
ルキアは、アルフに渡された診療記録を見る。
そこには、オームの名前が書いてあった。
「本当ですね! オーム様の診療記録です。数ヶ月前から始まっていますね。えーっと、飲んでる薬は…えっ? 」
ルキアは、書いてある薬の名前を見て驚いた。
「ま、まさか…」
ルキアは、さっき鼻に違和感を覚えた理由が分かった。
並べられている薬の1つを手に取り匂いを嗅いだ。
「やっぱり…」
「おい、ルキア。どうした? 何の薬なんだ? 」
アルフが心配そうに聞く。
「アルフ様、これは違法麻薬です 」
「ま、麻薬だと? 」
「はい、このアスキロのいう薬草は違法麻薬の1つです。興奮作用、高揚感を与えるもので、使用は禁止になっています」
「違法麻薬を兄上が飲んでいるのか? 」
アルフの問いにルキアは診療記録を端から端まで目を通す。
「多分ですが、オーム様はご存知ないのではないでしょうか? この量なら飲んだその日に効果がすぐ出る訳ではないので…」
「そうなのか? 」
「はい、少量のアスキロといつものお薬を併用してれば最初は少し元気になっ? と思う位です。ただ、数ヶ月も飲んでるとなると…」
言葉を濁すルキアにアルフが急かす。
「なると、どうなるのだ? 」
「予想ですが、既に体中にアスキロが回ってるので、このままでは倒れるかと…」
「倒れるだと? 」
「はい、違法麻薬を長く飲み続けると…幻覚症状や、平衡感覚がなくなると思います…」
「そ、そんな…まさか…兄上が? 」
アルフがよろめく。
「ア、アルフ様! 大丈夫ですか? 」
「す、すまない…大丈夫だ」
「ごめんなさい…私の言い方が…」
「違う、ルキアのせいではない! 」
アルフの言葉には怒りが出ている。アリーンがオームを陥れている事に腹を立てている。
「あんな穏やかだった兄上になんて事を…」
「はい、でもアリーン様は何故オーム様にこのような事をしたんですかね? 」
ルキアの疑問にアルフも頷く。
「私もそれは考えた。アリーン様に何のプラスがあるか…むしろ父上にバレたら妃にもなれないが、嬪妃の立場も剥奪されるだろう…」
「そうですよね? オーム様が国王陛下に言わない保証もないし…」
「いや、それは言わないと分かっていただろう。兄上は体が弱かったので、夜の営みをすれば倒れると禁止されていた。アリーン様はそこに漬け込んだんだろう。自分の体を使って…」
「そ、そんな…酷い…」
「あの人は平気で人を殺める。それくらい気にしないさ」
アルフの顔に悲しさが見えた。殺された母親を思い出している様だ。
「アルフ様…」
ルキアはそっと手を握る。アルフは少し微笑んでルキアの頭を撫でた。
「大丈夫だ。ありがとう、ルキア。とりあえずこと事をガブに伝えなければ…」
その時、部屋の扉が開く音がした。
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