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第54話
「アリーン様、本日も体調がよいですね。脈も安定しています」
コーンの言葉にアリーンはニッコリ笑う。
「ありがとう。色々な事が計画通りに進んでるわ。コーンのお陰ね」
「いえいえ、私はアリーン様の言う通りにしているだけですから」
謙虚に言うが貰える報酬が高く、金に目が眩んでるだけだ。
ギャンブルが好き過ぎて出来た借金をアリーンが肩代わりにしてくれた。
それだけに留まらず違法麻薬を手に入れたら給料の倍をくれると言うので飛びついた。
コーンにとってギャンブルが全てで誰が麻薬でどうなろうがどうでもいい事だった。
アリーンはそれを見抜いてコーンを侍医にしたのだ。
「強いて言えば、カオね。あの子は消極的過ぎるのよ。女王をあてがっても避けてばかり。アルフの所ばかり行って、ガフとも噂になるし…早く婚約者を見つけないと! 」
アリーンの話にコーンは首を傾げる。
「カオ様がですか? 私が聞いた話では結構遊んでると…」
「あの子が? それはないわよ! 」
断言するアリーンにコーンは先程の事を思い出す。
確かに冷静に考えればカオはそんなタイプではない。突然のお願いにびっくりして特に考えもせず薬を渡してしまった。
コーンはふと不安になり立ち上がった。
「アリーン様、本日はこの辺で…ちょっと用がありまして…」
「また、賭け事に行くの? 程々にしなさいよ? もう、借金の肩代わりはしないわよ! 」
「も、もちろんです! 今のお給料の範囲でしかやっておりません! では、失礼します」
コーンは頭を下げ急いで部屋を出て自分の部屋に向かう。
「もしかして、何か意味があって私の部屋に来たのか? まさか…診療記録か? そんな、カオ様は興味がないはず…しかし…」
万が一、診療記録が持っていかれたら自分の失態だ。そうなるとアリーンからもクビになってしまう。
それだけは避けたかった。
アリーンにああは言ったが実は借金があった。前回より多額ではないが今回の給料で返す予定だった。
「大丈夫だ…大丈夫だ…」
繰り返し呟き自分の部屋に急ぐ。
部屋の扉に手をかけちゃんと鍵がかかっているのを確かめ安心する。
「ほら、大丈夫だった。なんでもないではないか」
安心して鍵を開けようとした時、中から音が聞こえた。
コーンの心配は一気に戻ってきた。
「まさか…嘘だよな? 」
鍵を開けそーっと部屋に入る。
「おい、誰かいるのか? 」
怖々声をかけながら部屋を見渡す。
部屋には誰もいないコーンはそのまま奥の部屋に向かう。
「誰も居ないのか? 」
そう言って奥の部屋に入った。
そこには…
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ガチャと扉が開きコーンが入ってきた。
《まずい、戻って来たぞ! 隠れないと! 》
《は、早くないですか? 》
アルフとルキアは慌てて扉を閉め鍵をかける。
ルキアは鍵を机の引き出しに入れアルフと共に机の下に潜り込む。
「おい、誰かいるのか? 」
向こうの部屋でコーンの声がする。そのまま出て行ってくれたらいいが奥の部屋に入ってきたらおしまいだ。
《ルキア、お前はここにいろ? 私が出て、こっそり薬を取りに来たと説明する》
《それはダメです! アリーン様に疑われてしまいます! 》
《しかし、一緒だとお前は重罪になるぞ? 》
立ち上がろうとするアルフを引き止める。
《ま、待って下さい! 私に任せて下さい! 》
《どうゆう事だ? 》
ルキアは深呼吸をしてアルフを見つめる。
《アルフ様、私を信じてくださいますか? 》
ルキアの真顔にアルフは頷く。
《私がルキアを信じない訳ないだろ? 》
《ありがとうございます! では、失礼します! 》
ルキアが突然アルフに抱きついた。
《ル、ルキア? 流石にこんな時は…》
《黙って! 》
ルキアはアルフに抱きつ全集中をする。いつも以上に体に力をいれる。
2人同時は難しいかもしれないが絶対出来ると信じ力をこめる。
最初にルキアの体が薄くなる。
《ル、ルキア…》
アルフは言葉を失った。目の前の光景に目を疑う。ルキアが少しずつ消えていくのだ。しばらく見ていると、そのうち自分の腕が透けていくのが分かった。
《ま、まさか…》
アルフはルキアのやっている事を理解しじっとしている。
「誰も居ないのか? 」
コーンが部屋に入ってきた。
そこには…誰も居なかった。
「なんだ、やっぱり私の思い過ごしか…でも念の為…」
コーンが机の方にやってくる。
ルキアとアルフは息を殺す。姿が見えなくても音を出すのはまずい。
机の引き出しから鍵を取り出し扉を開けようとしている。
ルキアはその隙にアルフの腕を取りながらそっと立ち上がる。
2人は静かに歩きながら音を出さない様に部屋の外に出ていった。
そんな事には全く気づかないコーンは扉を開け、診療記録がある事にホッとしていた。
「よかった、全部ある。考え過ぎか…」
扉を閉めようとして下に落ちているある物に目を止めた。
「これは…何の薬だ? 」
床に少しだけ葉っぱの欠片が落ちている。
コーンは拾って匂いを嗅いだ。
あまりに少量すぎて何の葉か確定は出来ない。
「いつ落とした? 掃除は毎日しているぞ? まさかな…カオ様の薬を出す時に落としたのかな? 」
少し考えたが誰も居ないし鍵もかかっていた。
荒らされた様子もないコーンは思い過ごしと結論づけた。
「被害もないし診療記録もある。何も無かったって事だな」
大事にしてアリーンから首にされたら困るのはコーンだ。
自分を納得させいそいそと金を持って出かけた。
その時のコーンの頭には賭け事の事しかなく、さっきの出来事は既に頭に無かった。
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