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第55話

ルキアはアルフの手を取ったまましばらく歩き、人影がない角に来た時に全身の力を抜いた。 徐々に2人の姿が見えてくる。 アルフはルキアの魔法に驚きが隠せずルキアを見た。 ルキアはハアハアと息を切らし立っているのもやっとだ。 「ルキア、大丈夫か? 」 アルフはルキアを支えながら聞いた。 「ア、アルフ様は…大丈夫ですか? 体に異変は? 」 息を切らしながらルキアが心配そうに質問する。 「私は大丈夫だ。どこも痛くもないし、疲れていない。それより顔色が悪いぞ? 早く戻ろ…ルキア!? 」 アルフから大丈夫だという言葉を聞いたルキアは安心したのか崩れ落ちる。 ガクンと力が抜けて崩れ落ちるルキアを慌ててアルフは支えた。 「ルキア! ルキア! 」 アルフの呼ぶ声が遠くなっていく。 「よかった…アルフ様が…なんともなくて…」 そのままルキアは意識を失った。 __________________ 目を開けたらまず一面の星空が目に入った。 とても綺麗な星空だ。前にアルフと見た星空と同じ感じがした。 「綺麗だ…」 呟くルキアに今度は心配そうなアルフの顔が見えた。 「気がついたか? 」 「アルフ様…ここは…」 ルキアは起き上がろうとしたがアルフに止められる。 「まだ寝てろ。急に立つとまた立ちくらみするぞ? 」 アルフはルキアを横にさせる。自分の膝の上に乗せ頭を撫でる。 「すいません…」 「謝るのは私の方だ。私と一緒だったためにお前に負担をかけさせた。1人だと意識を失う程ではないんだろ? 」 アルフに図星をつかれ顔をそむける。 「やっぱりな…無茶して…」 「アルフ様…黙っててすいませんでした」 ルキアの謝罪にアルフは首を横に振る。 「ルキア、謝るな。驚きはしたが怒ってはない。まさか、この国にこの魔法が使える者がいたとは…噂はされていたが見た者は居なかったからな」 アルフはルキアのおでこにキスをする。 ルキアは恥ずかしそうに赤くなった。 「言わなくて正解だぞ? この事実が分かれば、悪用する奴が出てくるのは間違いない。だから他の者も黙っているのであろう」 「すいません…」 「だから謝るな。全く…」 少し怒ったように自分の体を大事にしろと諭す。 ルキアは起き上がりアルフの隣に座る。 「大丈夫か? 」 「はい、大分良くなりました。でもお陰でコーンさんにバレなかったのでよかったです」 「お前は意外に無茶をするんだな? 」 呆れた顔でアルフに言われる。 「そ、それは、アルフ様を国王にしなければいけないし、アリーン様の悪事を黙ってみていられません! 」 「それはそうだか…」 「大丈夫です。この魔法は直後が凄く疲れるだけで、しばらくすると回復しますので」 両腕を上げ力こぶを作ってみせる。 アルフはため息をついてルキアにデコピンをする。 「いた! 何するんですか? 」 「全くどれだけ心配したと思っているんだ? このまま意識が戻らないか心配したんだぞ? ヨリムに色々聞いて大丈夫だと言われるまで安心出来なかったんだからな? 」 睨みながら不貞腐れるアルフにルキアは嬉しくなった。 「へへ、そんなに心配してくれたんですか? 」 おでこを擦りながら嬉しそうな顔をする。 「ヘラヘラするな。こっちの気も知らないで。お前にまだ言ってない事があるのに、そのまま意識が戻らなかったら後悔しかしない」 「ありがとうございます、アルフ様。私は本当に嬉しいんです。前の世界では私を心配する人なんて居なかったのですから」 「お前の両親はどうなんだ? 」 前から気になっている事を聞いた。ルキアの話で親の話が出てきた事は無かったからだ。 「私の両親ですか? 母は5年位前に亡くなりました。父はその後再婚をしましたが、元々私と合わないので高校を卒業と共に家を出て一人暮らしをしていました。それからは会ってません」 「お前も母親を亡くしていたのか? 知らなかった…」 「大分前の事ですし病気だったので覚悟は出来ていました。私にとっては一番の味方でしたが…」 少しだけ思い出し目が潤んできた。 アルフはルキアを抱き寄せ頭を自分の肩に乗せる。 「素敵な母上だったのだな。1度会って見たかった」 「私もお妃様にお会いしたかったです」 「そうだな。もしかしたら天国は他の世界とか関係なく繋がっていて、私の母上とルキアの母上が会っているかもな」 「アルフ様…きっとそうですよ! お妃様が私の母に会って、アルフ様の話や私の話を聞いてアルフ様の役に立つと思って呼びに来たんですよ! 」 ルキアの発案にアルフは思わず笑ってしまう。 「はは、それなら嬉しいな。ルキアの母上に私の事知ってもらって」 「絶対そうですよ! 」 嬉しそうに話すルキアにアルフは目が綻ぶ。 そして自分の胸元から何かを取り出す。 「ルキア、これを受け取ってくれ」 「えっ? これって…」 アルフの手の中には指輪があった。 「ルキア、これは母上の物だ。亡くなる前に私にくれたのだ。本当に大切に出来る子が現れたら渡しなさいと…」 「アルフ様…」 「ルキア、私の恋人になってくれとは言わない。私と結婚してくれ」 突然のプロポーズにルキアは驚いた。 驚きすぎて目がまん丸になる。 「アルフ様? 本気ですか? 」 「もちろんだ。私なりに考えたがお前相手に恋人で終わる関係は嫌だ。一生共にしたいのだ。もちろん側室になんてしないし、側室を置く気もない。私にはルキアだけだ」 アルフの本気の告白にルキアの目からボロボロ涙がこぼれ落ちる。 「ア、アルフ様…私はこの世界の者でもないし…男です…」 「分かってる」 「それに…それに…国王になる方には…王位継承権を譲る子供が…」 一番自分が叶えて上げられない事を口にする。 「それも分かっている。ルキア、私の考えを聞いてくれ」 アルフはルキアをまっすぐ見て言った。 「私は、国王になりたい訳ではないのだよ」

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