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第56話
突然のアルフの発言にルキアは更に驚いた。
「ア、アルフ様…それは…どうゆう事ですか? 」
あまりにもびっくりして声が掠れる。
確かにアルフが自分から積極的に国王になりたいと聞いた事は無かった。
今まで自分がしてきた事に意味が無かったのかと、自分勝手な行動で逆にアルフを追い詰めていたのかとルキアは思いだしていた。
「ルキア、違うぞ? ちゃんと話を聞いてくれ」
そう言ってアルフは自分の考えをルキアに説明しだした。
今の国王はアリーンの言いなりになり、ハイハイと言う事を聞いている。そのお陰で国民から税を絞り取り、払えなくて家を追い出される者悪事に働く者が増えてきている。
武装部隊の維持費にも文句を言い辞めて行く者も増えた。
このままでは隣国に攻められたらアデウス国はもたないだろう。
今の制度を見直すためにも誰かがアリーンを引きずり下ろさなければいけない。
オームは体が弱い、フルークは野心家でアリーンと同じ道をたどる。
その次の自分が何とかするしかないと。
だから今アリーンを引きずり下ろす材料を集めている。
自分が国王になって政権を建て直したら、別の者に譲ろうと思っていたと。
アルフの話を聞いてルキアは恥ずかしくなった。自分が考えているよりアルフは先を見ていたのだ。
「アルフ様、すいませんでした。アルフ様の考えを理解しておらず…」
ルキアは涙を流しながら謝った。
「ルキア、泣かないでくれ。私はお前の涙に弱いのだ」
アルフはルキアの涙を拭きながら話を続ける。
「ルキア、プレーンを知っているだろ? 」
「プレーン様ですか? 」
プレーン・シート・アデウス第四王子だ。社交界で会っただけだが、13歳にしてはしっかりした印象があった。
「ああ、あいつはまだ13歳で政務には関わってないが、昔から頭が良くてな。武道も呑み込みが早い。国王の素質もある。私はプレーンを私の次の国王にしたいと思っている」
「アルフ様…」
「私が国王になってから、色々教えながら育てようと思っている。それまでは私が責任持ってやるが死ぬまでとは思ってない」
「そうだったんですね…」
「だから、ルキア。自分ではとか言わないでくれ。私はお前に出会えて感謝している。本気の恋を教えてくれたからな。私にはお前しかいない。プレーンに譲ったら宮殿を出てゆっくり暮らそう」
「アルフ様…」
また涙があふれてくる。
「ルキア、私と結婚してくれるか? 」
アルフの問いにコクコクと頷く。
「はい…もちろんです」
泣きながら、返事をする。ルキアの返事を聞いてようやくアルフもふぅーと息を吐く。
アルフではあるがらやはりプロポーズは緊張する。断られたらと、少しは考えていたようだ。
安心したようにルキアを抱き締めキスをした。
「さ、指輪をはめてくれ」
アルフは、ルキアの左手薬指に指輪を入れた。
その指輪はルキアに授けられた様にピッタリ収まる。
「この指輪がお前を守ってくれるだろう」
「アルフ様、ありがとうございます。大切にします」
2人は寄り添い星空を眺める。2人を祝うようにいつも以上に光輝いて見えた。
「本当に綺麗ですね…」
ルキアは、うっとりと幸せを噛み締めていたが、ふと思い出して顔を上げた。
「そういえば、オーム様の事はどうなったんですか? 」
今が夜だから随分時間が経っている。
ルキアの質問に顔を顰める。
「おい、もう甘い時間はおしまいか? ガフに薬のルートを調べてもらっている。ルートが分かれば記録も残っているから、コーンが入手したのがわかるだろう。侍医を首にし診療記録を公にするよ」
「オーム様はどうしますか? 」
「それが悩む所だ。私が言っても今の兄上には響かないだろう。しばらくは様子を見るしかないが…薬を飲むのは止めさせたい」
「そうですね、どうにかすり替えますか? 」
「お前…また魔法でやろうとしてるだろ? 」
「だってそれしか方法が…」
「そうだがお前の体調が心配だ! 」
「大丈夫です! 一瞬ですからそんなに負担はないですよ! 」
「全く…すり替えたらすぐ出てこいよ! 傍にいるから」
「分かりました! 」
少しずつだがアリーンを追い詰めている事にルキアは嬉しかった。
「さて、戻るか。今日は私の所で寝なさい」
「えっ? 」
顔を赤くするルキアに、アルフはまたデコピンをする。
「何を考えてる? 今日倒れたお前に何かするほど飢えてはないぞ! 失礼な! それとも…」
アルフは、ルキアの腰に手を回し耳元で囁く。
「ルキアがして欲しいなら、遠慮はしないぞ! 」
「ア、アルフ様! からかわないでください! 」
「全く、ようやく婚約したのにお預けか。一体いつになったら許可がおりるのかね? 」
からかいながらルキアを抱き風を使って下に降りる。
部屋に戻るとガフが待っていた。
「ルキア殿、体調は戻りましたか? 」
「はい、もう大丈夫です! 」
「突然倒れてびっくりしましたよ? まさか、ルキア殿が…」
「ガフ、誰にも言うなよ? 」
「はい、もちろんですがカオ様にはどうされますか? 」
ガフはカオの恋人だがアルフとの約束でルキアが異世界から来た事なども言っていなかった。
「ルキアが決めなさい。私が決める事ではない」
アルフに託されルキアは頷いた。
「カオ様は私にとっても大切な人です。私はカオ様に嘘はつきたくないので話て大丈夫です」
「そうか、分かった。ガフ、カオに全部説明してくれ。多分凄いショックを受けるだろうから、お前が支えてくれ」
「かしこまりました」
ガフは、頭を下げ部屋を出ていった。
「大丈夫ですかね? 」
ルキアは心配そうな顔をする。アルフの全部とは、アリーンとオームの事もだと思ったからだ。
「そうだな、前のカオだったら無理かもしれないが、今はガフがいる。愛する者がいると人は強くなれるんだよ。ガフに任せよう」
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