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第60話

夜遅く酒を飲んでイライラしている人物がいる。 全身からイライラが隠せず、物にも当たっていた。 「クソッ! 最近の母上はなんだ? なんで私を除け者にする? 」 そう言ってまた酒を飲む。 「フルーク様、それ以上お飲みになるとお身体に…」 「うるさい! もっと持ってこい! 」 メイドに命令し取りに行かせる。 「フルーク様、アリーン様は何かお考えがあってだと思いますので、一度お伺いしてみれば…」 「ファースト、それはもうやった! なのに母上は少し大人しくしていろ、と言って何も言わないのだ! クソッ、こないだ私が失敗したからか? 」 「とんでもないです。あれは私がガフを止められ無かったからです。申し訳ございません」 頭を下げるファーストに、舌打ちをする。 「別にお前のせいとは言っていない。ガフの腕がお前より上なのは知っている」 不機嫌そうに言い、殴られた所を見る。 「あいつに殴られた傷はもう大丈夫なのか? 」 「はい、フルーク様に頂いた薬が良く効いたので、跡にも残っておりません」 「それはそうだ。あの薬は貴重な物だからな」 フンッと満足気に笑う。 その貴重な薬を自分が貰えただけで、ファーストは死ぬほど嬉しかった。 そう思っていると、突然フルークがファーストの顔を触ってきた。 「フ、フルーク様? 」 ファーストの顔を触り左右に傷がないか間近で確認する。 だいぶ酔っているのでいつもより顔が近い。 「うん、全くないな。お前は顔がいいから傷が残るのは勿体ない」 「とんでもございません。フルーク様のお顔に比べたら…」 「お前は、なんでもフルーク様、フルーク様だな? そんなに私が好きか? 」 笑いながら席に戻りまた酒を飲む。 「それにしても…母上は何故オームなんかと? あんな病弱な男に抱かれてもつまらんだろ? 」 「フルーク様、オーム様はお兄様でございます。呼び捨てがバレたら…」 「フンッ! あんな病弱な兄などに様なんか付けなくてよい。王位継承権一位だが、あんな体では数ヶ月も持たないだろ」 「ですが、最近お元気というお話を聞きます。その…アリーン様のお相手を出来る位には回復している様ですし…」 言葉を濁しながらファーストはオームの現状を伝える。 「そこが不思議なのだ。なぜあんなに元気なのか? 母上に聞いても、何も教えてくれない! 」 イライラしながらまた酒を煽る。 「フルーク様、本当にそろそろおやめに…明日の政務にも匂いが残りますし、お体を壊してしまいます」 ファーストの言葉に、舌打ちをしながらも渋々従う。 「本当にお前はうるさいな。そんなんなら、拾わなければよかった」 不貞腐れ気味に言うとファーストが出した水を一気に飲む。 改めて、ファーストの顔を見ながら質問した。 「お前はなんで私の所にきたのだ? 他にも仕事先はあるだろ? 家柄はガフより上だろ? 直接政務に加われる大臣とかに、なりたくは無かったのか? 」 酔っているせいか、いつもよりファーストに質問をしている。 「フルーク様、私は伯爵家の出と言っても、母の身分が低いのです。そんな私に仕事先などありません」 __________________ ファーストが14歳になろうとした時、父親に呼び出された。 「父上、お呼びでしょうか? 」 「ファースト、来たか。実はお前の仕事先なんだが…」 「はい、王宮に上がり大臣になれと言われていましたが…」 ファーストの言葉に、父親は言葉を濁しながら申し訳なさそうに話した。 「その事なんだが…その仕事はディーンに就かせる事にした」 「えっ? 弟のディーンにですか? 」 「ああ、あの子ももうすぐ14歳になるしな」 「父上! ディーンより私の方が、勉には優れております! 成績も…」 「知っている。お前の方が優秀なのは、だから推薦したのだ」 「だったら…なぜ? …私が愛人の子だからですか? 」 ファーストの言葉には怒りが込められている。 「うむ…向こうがディーンが欲しいと言ってきてな。私としても悩んだが、ディーンだと、私の立場もワンランク上がると言われてな…」 ファーストは心底父親に失望した。最後は自分の保身に走るとは。子供の事を何も考えていない。 「分かりました…」 ファーストは黙って頭を下げた。 少し申し訳なく思ったのか父親はファーストに媚びてきた。 「お前は優秀だ。他にも実力で仕事を勝ち取れるだろう。私も他にないか探してやろう」 「結構です。自分の仕事は自分で見つけますので」 ファーストは冷たく言い放ちその場を去った。 「クソッ! 私だって好きで愛人の子に生まれたかった訳ではない! 勝手に作って! 何が譲れだ! クソッ! 」 ファーストは裏山で剣を振るいながら大きい声で叫んでいた。 愛人の子と言われ虐げられてきた。見返すために死ぬほど勉強もした。 正妻の子供達が手を抜いていても、自分は絶対抜くことはしなかった。 それなのにこの仕打ち、流石に叫ばずにはいられなかった。 「クソッ! クソッ! クソッー! 」 「随分うるさいな? 散歩の邪魔だ! 」 「うわっ! 」 突然声がしてファーストは驚いた。 後ろを振り返ると綺麗な少年が立っている。 「こ、これはフルーク様! 失礼致しました! 」 慌てて剣を置き頭を下げる。 そこに現れたのはフルーク、同じ学校で学んでいる、王族の王子だ。アルフと違い、冷たくてクールな印象。この時から、女を取っかえ引っ変えしていて、いい噂は聞かなかった。 ただ月明かりに映るフルークの姿はとても美しく、ファーストは見とれてしまった。

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