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第63話

国王が倒れて一週間が過ぎたがまだ目を覚まさない。 政務室には大臣達が集まり話し合いをしている。 「もう一週間だぞ? このまま目を覚まさなかったらどうするんだ? 」 「そんな縁起悪い事言ってはいけませんよ。侍医の見解では、脈は弱いが少し落ち着いたと言っていたぞ? 」 「それでも政務に戻られるまでは時間がかかるだろう? このまま国王陛下の椅子を空けとく訳にはいかない。国民が不安がるぞ? 」 「確かに代理でも誰かを置かないと…しかし、誰を? 」 「それはアルフ様じゃないのか? 今一番政務に関わってるではないか」 「しかし、オーム様が最近お元気になられて、積極的に政務に関わられてる。王位継承権の順番だとオーム様だろ」 「それは、アリーン様が許さないだろ? 自分の息子のフルーク様を推すに決まってる」 「確かにフルーク様の方が兄だから上だが、正妻の息子ではないだろ? 」 「でもアリーン様は政務に関わりが多い。アリーン派もいっぱいいるぞ? 多数決を取ると…」 『うーん…』 大臣達は頭を抱える。突然の事態にどうして良いか悩んでいる。 「アリーン様だぞ! 」 その時アリーンが政務室に入ってきた。皆一斉に立ち上がり頭を下げた。後ろにアリーン派の大臣達を引き連れている。 一番前の席に座り皆を見渡す。 「皆様、お待たせ致しました。今後について話し合いをしたいと思います」 「アリーン様、陛下のご様子はどうですか? 」 「変わらないです。少し安定はしていますが、予断は許されません」 アリーンの言葉にザワザワとする。まだ目が覚めないとなると、いよいよ代理を立てなければいけないからだ。 「皆さんお静かに! 本日は国王陛下の席が空いたままでは国民の不安を煽るので、代理をたて陛下の代わりを決めようと思っております」 更にザワザワしだした。ここまで堂々としているって事は、フルークを代理にしようと企んでいると、大臣達は推測した。 「あの…代理はどうやって決めるおつもりですか? 」 1人の大臣が質問した。 アリーンは、その大臣を見て微笑む。 「それは多数決で決めようと思ってます。ただ国王陛下のお言葉もありますので、そちらを読ませてもらってからの判決になります」 「国王陛下の? そ、それは…」 アリーンが1枚の封筒を差し出した。 「こちらは国王陛下がお元気な時に万が一の事があればと、一筆書かれていた物です。私もまだ見ておりません。今から開封して読みたいと思います」 「そ、そんなのがあったのですか? 」 アリーンの言葉に大臣達はざわめく。 「皆さん、お静かに! 」 そう言うとアリーンは開封して読み出した。 「それでは読みます。私に万が一の事があれば、王位継承権一位のオーム王子に政権を任せる。その時オーム王子が生存していなければ、フルーク王子、アルフ王子のどちらかを多数決で決めるとする」 「オーム様だと? 」 「本当か? 」 益々大臣達が騒ぐ。 「お静かに! 今からこちらの手紙を回します。国王陛下の字に、陛下の刻印も押されております。本物と証明されるでしょう」 アリーンが大臣達に手紙を回す。皆、手に取り国王の字に驚いた。 「本当だ陛下の字ですよ? 」 「陛下しか持ち出せない、刻印も押されている。これは本物ですよ! 」 大臣は一通り騒ぎ手紙をアリーンに渡した。 「確かに国王陛下の物です。その通りですと、オーム様が国王陛下代理になりますが、アリーン様もそれでよろしいのですね? 」 アリーンはニッコリ微笑み大臣達を見渡す。 「皆様の考えは分かっています。しかし最近のオーム王子は政務にも積極的で、覚えも早いですわ。体調もよろしいみたいで、見違える様に元気になられています。反対する理由はありませんわ」 アリーンが騒ぎ立てたりしないので大臣達はホッとした。 「ではそうゆう事で直ぐにでも発表しましょう」 アリーンの言葉に大臣達も立ち上がり、大広間に集まる様に執事達に命令した。 __________________ 「アルフ様、アリーン様が大広間に集まれとの事です」 アルフの部屋に入ってきた執事が説明する。 「そうか、分かった」 アルフは険しい顔をする。アリーンが動き出した事が分かった。 「アルフ様、どうされますか? まだ国王陛下の件は…」 ガフの言葉を遮る。 「分かっている。今は、アリーン様の出方を見るだけだ。大体予想はついている」 「では、アリーン様はやはりオーム様を国王陛下代理に推薦するのでしょうか? 」 「そうだな、あの2人の関係を知っている者はいないから、王位継承権一位の兄上を代理にするのは、不自然ではない。しかし…フルーク兄上が納得するか…」 「確かに最近アリーン様はフルーク様に余り構ってないようです」 「どうするつもりなんだ? 」 2人は考えながら大広間に急いだ。 大広間には、宮殿内の大臣達が集められ壇上に、アリーン、オーム、フルーク、カオがいる。 アルフもそこに向かい壇上に上がる。 「皆様、お揃いになりました。今から国王陛下代理の発表を致します! 」 国防大臣がアリーンから預かった国王の手紙を皆に見せる。 「こちらは、国王陛下が病に倒れる前にお書きになった物です。今から、皆様の前で読ませて頂きます! 」 アルフはその言葉に驚いた。 (父上の手紙だと? そんな物があると聞いてないぞ? ) 倒れる前にアルフは国王からそんな話は聞いていない。 むしろ紙に残すのは危険だからと避けていた。 時期が来たら自分の口で国王を決めるとアルフに言っていた。 それなのに急に手紙の話が出てきたので、アルフは不審に思った。 アルフはアリーンの横顔を見る。満足そうな顔をしている。自分の思い通りになっていると、自信満々だ。 (おかしい、裏で何かしている筈だ。早く調べないと…) 「では、お読みします! 」

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