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第66話

「アルフ様、大丈夫ですか? 」 ルキアはアルフの顔が厳しいので心配していた。 ルキアはアルフの部屋に泊まりに来ているが、甘い雰囲気ではなく今後について話していた。 「ルキア、心配かけて済まないな、大丈夫だ。だいぶ色々分かってきたぞ」 アルフはルキアを抱き寄せおでこにキスをしながら言った。 「オーム様の事ですか? 」 「ああ。兄上はアリーン様にのめり込んで、自分がない。今の政権も全部アリーン様に従っている。何も変わってない。むしろ悪くなってきている」 「そうですね、ヨリムさんに聞くとオーム様に、麻薬の症状が少しずつ見えてきていると言っていました。イライラする事も増えてるようで…逆に薬が効いている時はとても陽気で…このままですと、倒れてしまいます」 「そうだな…麻薬入手ルートは分かった。その売人も押さえている。いつそれを出すかタイミングを見ないと…」 その時寝室の扉をノックする音がした。 「お休みの所すいません。アルフ様、緊急です! 」 「入れ」 ガフが中に入ってきた。険しい顔をしている。 「父上に何かあったのか? 」 ベッドを出てガウンを羽織りながら聞いた。 「いえ、今ヨリム殿から連絡がありまして。陛下が目を覚ましたようです」 「なんだと? 本当か? 」 アルフとルキアは驚き顔を見合わせた。 「はい、ただ…」 「ただ、なんだ? 」 「まだ起き上がれる状況ではないので、予断は許されません」 「そうか、とりあえず父上の所へ…」 「待って下さい! 」 ガフが止める。 「なんだ? 何故止める? 」 「ヨリム殿からの伝言ですが、目を覚ました事は陛下が秘密との事で誰にも言うなと」 「なんだと? 」 「どうやら陛下は誰に薬を盛られたかご存知のようです」 「そうか…」 「陛下がアルフ様に誰にも見られないように来て欲しいとの事です」 「なるほど…だが、父上の部屋の前には護衛官達がうじゃうじゃいるからな。その隙を見て入るのは至難の業だぞ? 」 アルフとガフの話を聞いていたルキアが、ちょんちょんとアルフの肩を叩く。 「アルフ様、私が一緒に行きます!」 「ルキア、まさかお前の魔法で中に入ると言うのか? 」 「はい、それなら護衛の人達にバレないですよね? 」 「確かにそうだが…お前の体力が心配だ」 「大丈夫です! 他に考えてる時間はないですよ? アルフ様、行きましょう! 」 ルキアの言葉に渋々だか従う。 「分かった、後でしっかり看病するからな! ガフ、急ぐぞ! 」 アルフ、ルキア、ガフは人目を忍び国王の部屋の近くに来た。 「よし、誰かが部屋に入った隙に行くぞ! 」 「そろそろヨリム殿が出て来ますのでその隙に入って下さい」 ガフの言葉にアルフは眉を顰める。 「お前、ルキアの魔法で入ると分かっていたな? だから事前にヨリムに言っといたのだろう? 」 「左様でございます。今回ばかりはルキア殿のお力が必要なので…申し訳ありませんが、予測しておりました」 ガフの言葉に舌打ちをして不貞腐れた。 「お前は私の許可も取らずに…」 「まあまあアルフ様、私は大丈夫ですので行きましょう! 」 「まて、ルキア。効くか分からないが私の力を少し分けておく。倒れるまではいかないだろう」 そう言うとルキアの手を自分の両手で包み、力を入れる。 「うわっ! 」 ルキアは自分の中に何か入って来るのを感じた。それはとても暖かく、ルキアを包んでくれた。 「どうだ? 少しは力が入ったか? 」 「はい、なんだかポカポカします! 」 「しっ! アルフ様、ヨリム殿です! 」 覗くとヨリムが護衛官達と話している。 ルキアはアルフの手を取り全身に力を集中させる。 2人の姿が徐々に消えていった。目の前で初めて見たガフは驚いた。 本当に完全に消えている。声だけはするが姿が全く見えない。 ルキアの魔法に改めて感心した。 「では、行ってくる」 その言葉を最後に何も聞こえなくなる。ガフは2人の無事を祈った。 ヨリムがこちらをチラッと見た。ガフは頷いてみせる。 「さてと、休憩は終わりだ。また陛下のお傍にいるかな」 そう言いながらヨリムは部屋に戻り扉をバタンと閉めた。 《アルフ様、アルフ様? いますか? 》 キョロキョロしながら、小声でヨリムが声をかける。 するとヨリムの目の前にルキアとアルフが現れた。 「うわっ! ルキア、アルフ様! 」 「シッ!ヨリム小さい声で! 」 「は、はい。すいません…」 ガフから聞いていたが、本当に現れて改めてマジマジとルキアを見た。 「ルキア、お前は凄い奴なんだな? 」 「ヨリム、それより父上は? 」 「あ、はい。こちらです。寝てはいますが意識はあります」 「分かった」 急いで国王の所に行く。ベッドには目を閉じて国王が寝ていた。 「父上、父上。アルフでございます」 アルフの言葉に国王が目を開ける。 「アルフか…よく来たな」 「父上! 」 アルフは国王の元に寄り手を握る。 「大丈夫ですか? 」 「ああ、心配かけたな。私のせいだ…まさかこんな仕打ちを受けるとは…」 「父上、一体何があったのですか? 本当に発作を起こしたのですか? 」 アルフの言葉に国王はゆっくり首を振る。 「違う、意図的に病人にされたのだ。まさか、息子に裏切られるとは…」 「父上…やはりオーム兄上が…」 「ああ、私が倒れた日…オームが私の所に訪ねに来たのだ…」 国王は時より咳をしながら倒れた日の事を話し出した。

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