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第67話
「父上、お話があるのですが…」
突然オームが尋ねてきた。
「どうした? 」
オームは話す前に人払いをと皆を下げさせた。
「なんだ? そんな大事な話なのか? 」
オームは国王の前に行くと、
「父上、私に政権を渡して下さい! 」
「なんだと? お前、何を言っているか分かっているのか? 」
オームの突然の申し出に国王は問いただす。
「はい、分かっています。今の父上は、役立たずです。全部アリーン様に任せているではありませんか? 私なら、任せず一緒に国を守っていきます! お飾りだけの国王なんていりません! 」
オームの言葉に驚きが隠せない。確かに最近精力的に政権に関わってきていたが、まさか交代を迫られるとは思わなかった。今までのオームでは考えられない発言に国王は戸惑いが隠せない。
「オーム、父親に向かってなんて口の聞き方だ! 」
「父上ですが、国王には向いていません! 」
「お前…」
国王は壇上から降り、オームの元に行く。オームの胸ぐらを掴みビンタをした。
「国王に向かって、その口の聞き方はなんだ? 少し前まで病人だったお前に、政権を任せられる訳ないだろ? 帰って反省しろ! 」
床に倒れたオームは父親を睨む。
「では、父上は役に立たないのに国王の椅子に座り続けるのですね? 」
「お前に役に立たないと言われる筋合いはない! 次の国王はもう決めている! お前でないのは確かだ! 下がれ! 」
手を払い帰るよう指示した。
「分かりました」
立ち上がり、後ろを向き帰ろうとした。その動きに国王は油断をしていた。
突然オームが振り返り国王を押し倒す。
自分の下に羽交い締めにし、首の後ろに何かを刺した。
「お前、何を! うっ! 」
「父上、警告です! 私に政権を譲らなければ次は容赦しません! 」
そう言うと立ち上がり今度こそ部屋を出て言った。
国王は立ち上がり考え込んだ。
まさかオームがこんな暴挙に出るとは思わなかった。
首の後ろを触ると少し血が着いた。針みたいな物で脅したのだろう。
国王は部屋の扉に行きオームを見た者に黙ってるよう指示をした。
その後急いで机に戻り筆を取る。
ある文章を書くと、刻印を押し引き出しにしまった。
「その後、普通に政務に参加していた。そしたら、急に心臓が痛くなり意識がなくなったのだ…」
国王は倒れた日の事をアルフに説明した。
「父上、何故兄上が来たことを黙っていたのですか? 」
アルフの言葉に国王は上を向きため息をついた。
「あれでも息子だ。私の育て方が間違っていた。だから誰にも言わずどこかへ静養に出すつもりだったのだ。まさか、私を殺してまで政権を乗っ取るとは思わなかった…」
少し悲しそうな表情をした。
「父上…私が調べた情報があるのですが、体調が回復されてから…」
「言え」
「ですが…」
「大丈夫だ、大体予想は出来てる。オーム1人で行動してるとは思えん。誰かそそのかした人物がいるのだろ? 」
アルフの顔を見ながら「アリーンか? 」と尋ねた。
「はい…」
「そうか…たまに意識が朦朧してる時、アリーンと侍医が話しているのが聞こえた。今はオームが国王になっているのだな? 」
「はい、代理という事ですが…もうそれを忘れて行動しております」
「何故そうなったんだ? 」
アルフは国王の手紙の事を説明した。
その言葉に顔色が変わる。
「そうか、その手紙は私は書いていない。アリーンが似ている者に書かせたのだろう。刻印もアリーンなら出せない訳ではない。鍵は閉めてるが、大体の場所は調べていたのだろう」
「父上、これからどうしますか? 意識が戻られた事は…」
「うむ、それはしばらく黙っといてくれ。ヨリム、あれを持って来てくれ」
「かしこまりました」
ヨリムが、1枚の手紙を持ってくる。
それをアルフに差し出す。
国王はそれを読むようアルフに言った。
封を開け、中を見る。
そこには【時期国王はアルフ・シート・アデウスに任命する】と書かれていた。
「ち、父上…これは…」
驚くアルフ。しっかり刻印もされていて、日付も書かれている。
「これは私が倒れた日に書いていた物だ。これをお前に渡しとく。あの手紙が偽物だと調べてくれ」
国王はアルフの手を強く握り頼んだ。
「アルフ、私が間違っていた。妻が亡くなり寂しく、アリーンに頼りきりになっていた。今回の事で目が覚めた。私はもう国王に相応しくない。アルフ、お前がこの国をまとめてくれ」
父親の言葉にアルフはしっかり頷き手を握り返す。
「分かりました。今回の事は必ず私が解決します! 」
アルフの力強い言葉に安心し国王は眠りについた。
「アルフ様、もうすぐアリーン様が来ます、早くお帰りを! 」
ヨリムが声をかける。
「分かった?ヨリム、あとは頼んだぞ! ルキア! 」
「はい、ここに」
「もう一度やるがいけるか? 」
「はい、大丈夫です! まだ力は残っています! 」
その時、扉がノックされる。
「アリーン様がご到着です」
《アルフ様、開けますのでその間に! 》
《分かった! 》
ルキアも力を入れて集中する。
ヨリムが2人が消えたのを確認して扉を開けた。
「アリーン様、どうぞお入り下さい」
「開けるのが遅いわよ! 私を待たせないでちょうだい! 」
「申し訳ございません。丁度脈を測っておりました」
「陛下のご様子はどうなの? 」
ヨリムとアリーンのやり取りの横をルキアとアルフは素早く通っていく。
「一応安定をしておりますがまだ弱いです」
そう言いながらヨリムが扉を閉める。
扉が閉まった時には2人の姿は廊下の奥にあった。
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