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第68話

「アルフ様、ルキア殿、大丈夫でしたか? 陛下のご様子は? 」 ガフの所に戻り姿を表した2人に質問する。 「ガフ、話は私の部屋で! ルキアを運ぶぞ! 」 アルフの腕の中でぐったりしているルキアを抱き上げる。 さすがに意識はあるがハァハァと辛そうだ。 「分かりました。急ぎましょう! 」 __________________ 「ルキア、大丈夫か? 」 心配そうにアルフが覗き込む。 ルキアはアルフのベッドに寝かされた。 「はい、大丈夫です。ヨリムさんに貰った薬で落ち着きました」 ルキアの顔色はだいぶ良くなってきていた。それでもアルフは心配そうな顔をする。 「毎回お前の魔法に頼って済まない」 「アルフ様、そんな事言わないで下さい。今回はアルフ様にもお力を頂いたので前より辛くはありません。それに…」 「それに? 」 「こ、婚約者の役に立てて嬉しいです…」 恥ずかしくて顔を布団で隠して答えた。 「こら、それは反則だぞ? 可愛すぎて離れられないではないか! 」 アルフは布団を下ろしルキアにキスをした。 「ンッ…ダメですよ、ガフさんが待ってますよ? 」 「分かってるがもう少しだけ…」 そう言ってキスを続ける。 後ろから咳払いが聞こえた。ガフが渋い顔で立っている。 「アルフ様が戻ってこないから、ルキア殿の体調が悪いかと心配して来てみたのですが…違いましたね。続きは夜にでもして下さい」 ガフに睨まれ仕方なくルキアから離れた。 「分かったよ。ルキア、もう少し休んどけ。全くお前はすぐ邪魔をする」 「アルフ様も前に私の邪魔をされました」 「あ、お前仕返しか? 大人気ないぞ? 」 「どっちがですか? 全く…」 ブツブツ文句を言いながらアルフをリビングに連れていく。 「カオも来ていたのか? 」 ソファにカオが座っている。 「はい、ガフ殿に呼ばれて。父上の所に行ったんですね? どうでしたか? 」 「ああ、色々分かったよ」 アルフは2人に国王の部屋の出来事を説明した。 「やはり、アリーン様とオーム様が絡んでいたのですね? 」 「でも、どうして母上はオーム兄上を国王にしたのでしょう? 前はフルーク兄上をと言ってましたが…」 「どうだろう、オーム兄上が政権を握っても長くは続かないから、次にフルーク兄上を推薦するつもりだったのか…」 「ですが、王位継承権はアルフ兄上の方が上ですよね? 」 「確かにそうだが、偽の父上の手紙だと多数決で決める事になっている。多分アリーン様は自分寄りの大臣を多数集めているのだろう」 「その偽物の手紙を書いた人物を見つけなければいけませんね。調べてみます」 「ガフ、頼む。父上の筆跡を見たことがある人物で、アリーン様とも繋がりがるはずだ」 「かしこまりました」 「兄上、これからどうしますか? 早くなんとかしないと、国民の声が大きくなってきています」 オームに変わってから更に税金を上げた王室に反発の声が上がっている。 中にはアルフを国王にしろと声をあげる者もいたが、アリーンの部下に捕まってしまった。 「ああ、分かっている。だがオーム兄上は私が会いに行っても断られる。会ってもくれない。別の所から探らなければ…」 「フルーク兄上はどこまで知っているんですかね? 」 「発表の時の様子からは何も知らされていないはずだ。だから余計にイライラしている」 「ファーストに聞いてみますか? 」 ガフが提案をする。 「話してくれるか分からんが、ガフから聞いてみてくれるか? 私はもう一度オーム兄上の所に行ってくる」 「私は母上の所に行って様子を見てきます」 「カオ、お前には迷惑をかけてるな。母親との板挟みで苦しい思いをさせて」 すまないとアルフが謝る。カオは微笑んで、アルフの手を握る。 「兄上、私は大丈夫です。1度はショックを受けましたが、ガフ殿のお陰で大丈夫です。母上にこれ以上を罪を重ねて欲しくはありません。早く終わりにしたいんです」 真面目な話をしていたがその言葉にアルフがニヤリとしと。 「そうか、ガフがお前を慰めてやったんだな? 」 「なんですか、兄上! その顔は? 」 ニヤニヤしだしたアルフにカオは顔が赤くなる。 「いや、別に。お前達が羨ましいだけだよ」 「兄上の方こそルキアが居るではないですか? 」 「確かにそうだが相変わらずお預けをくらっているからな」 「えっ? 兄上まさか…まだなのですか? 」 「アルフ様が? 」 2人して驚く。既に手を出していたと思っていた。 「うるさいな、仕方ないだろ? 今はゴタゴタしているし。この件が決着着けばとは思っているが…」 珍しく真顔になった。 「ルキアは元々違う世界の人間だ。私が国王になったら帰るかもしれない。確定ではない相手に簡単に手は出せないだろ? 」 「兄上、ルキアはなんて言ってるんですか? 」 「帰りたくないとは言っているが、本人の意思でそれが叶うかは分からない。帰ってしまったら二度と会えないかもしれない」 「兄上が国王にならなければこちらにいられるのですか? 」 「それも分からない。だが、今の国民を見ていて、オーム兄上やフルーク兄上に政権を任せていいとは思えない。私がやるしかないのだよ。私の気持ちだけで、ルキアを留めさせる事は出来ない」 「兄上…」 カオはアルフを抱き締めハグをした。アルフも抱き返しカオの頭を撫でる。 「お前はガフを大切にしろ」 「もちろんです…」 「とりあえずその事はいい。今は目の前の事に集中するだけだ。ガフ、調べを任せたぞ。カオも気をつけろ。私は兄上の所に行ってくる」 各々目標を定め部屋を出ていった。 3人が居なくなったのを確かめルキアが寝室から出てきた。アルフの言葉を聞いていたのだ。 「アルフ様、そんな風に考えていたのか…俺も帰りたくないな…」 ルキアの頬を涙が落ちる。危険な場所だがアルフの傍にいたい。それが一番だった。

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