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第69話

国王とアルフが話してから数日がたっていた。 相変わらずオームはアルフを避け話をしてくれない。 ガフは調べる事が多くて外に出ている。 カオは自分も何か役に立ちたいと、アリーンの元を尋ねた。 「母上、今よろしいですか? 」 「カオ、どうしたの? 大丈夫よ」 「最近母上が忙しいので中々話も出来ないからお菓子をお持ちしました。一緒に食べませんか? 」 「あら、嬉しいわ。ちょっと、お茶を入れてちょうだい」 メイドに言うとソファに座った。 「カオは最近どうなの? 前に踊ったシュリム国のローレン王女は? 手紙を出したと聞いたわよ」 確かにローレンから手紙は届いていたが当たり障りのない文章で返していた。 「お手紙のお返事はしましたよ。ただ、私にはまだ結婚は早いと思いますし、するなら自分で選びます」 アリーンはカオの手を取り自分の方へ寄せる。 「カオ、私はあなたが心配なの。何事にもマイペースで競争心がない。そんなんじゃ将来国王になれないわよ? 」 突然の国王発言にカオは驚いた。自分にそんな事を言われるとは思っていなかった。 「は、母上、私に国王なんて務まりませんよ! 今はオーム兄上が国王です。それにフルーク兄上もいます! 」 「分かっているわ。でもフルークは向いてないと思っているのよ。あの子は怒りっぽいでしょ? すぐカッとなって相手を殴ったりするから、私でも制するのは大変なのよ。それに比べあなたは心がとても綺麗で優しい。国王に必要な事よ」 カオは母親の言葉に唖然とした。まさかフルークの事をそう思っていたとは思わなかった。 今まで汚い仕事はフルークを巻き込んでいた。 それなのに、いざ国王にするとなるとその息子を切り落とそうとしている。 自分の母親ながらアリーンが怖いと思った。 自分の息子さえ駒のように使い捨てようとしている。 「母上、父上はオーム兄上にもしもの事があったら、フルーク兄上かアルフ兄上と言っていました。私はそこに入ってませんし、私には無理ですよ」 「カオ、心配しなくていいのよ。私の言う通りにしていれば。あなたは国王になる器があるわ。どうか私を支えて」 アリーンはそう言うとカオを強く抱き締めた。 「陛下もお倒れになって不安で仕方ないの。オーム王子はまだなれないのかイライラしてるし、フルークは怒っているし、私の味方がいないのよ。カオ、私の力になって」 白々しく嘘を並べるアリーンにカオは悲しくなってきた。 自分を産んではくれたが大事にされていない。ガフやアルフ、ルキアがいなかったら耐え難いものだった。 「母上、私がお役に立つなら協力はしますが、国王の話はまだ実感が湧きません」 「そうね、急ぎすぎたわ。今はオーム王子を支えましょう! 最近特にイライラしていて、大臣達にも当たり散らしてるのよね」 「分かりました」 カオは頷くしかなかった。 __________________ 「アリーン様、薬はないのですか? 頭が痛くて辛すぎる! 」 その夜オームはアリーンに訴えていた。 片手には酒を持ち痛みを酒で紛らわせている。 オームの顔には大きなクマが出来ていた。元気と言う割には頬は痩け、目だけギラギラしている。 「オーム、落ち着いて。そんなに薬を増やすと体に悪いわよ」 「悪くなんてない! あれがあれば私は強くなれる! お願いだ、薬をくれ! 」 オームはアリーンの腕を掴む。 「痛いわ、オーム。分かったから離して 」 アリーンが顔を顰める。 「す、すいません。そんな強く握るつもりは…」 アリーンは手を擦りながら袖から薬を出した。 「オーム、これを飲んだら暫くはダメよ? その代わり強いやつを持ってきたわ」 オームはアリーンの手から薬を奪い取ると、酒と一緒に飲み干す。 アリーンの言葉など耳に入っていない。 暫くすると薬が体にまわりオームは大人しくなった。 「これです、これ! これで私は最強だ! あなたも抱ける、さあ早く…」 フラフラしながらアリーンの元に近づく。 だが足はおぼつかなく途中で転んでしまった。 「あれ? 立てない? なんでだ? アリーン様、立たせて下さい…」 オームは座り込み手を伸ばす。 その様子を黙って見ているアリーン。その目は冷ややかで氷のようだ。 「ア、アリーン様…」 自分を立たせてくれないアリーンを不思議そうに見る。 「大分薬が回ったようね。 思ったより早かったわ。オーム、あなたはここでおしまいよ」 「そ、それは…どうゆう…意味…ですか? 」 意識が朦朧としてきた。アリーンの姿がボヤけて見える。 「私の役に立ってくれたって事よ。陛下を排除して、あなたを国王にした。あなたが死ねばフルークが国王になる。そうすれば私の思い通りになる。これで王妃の息子達に、王位継承権はなくなる。フルークの子供達か、カオが国王になり、私の一族が政権を握るのよ! 」 アリーンの言葉にオームは息を飲む。 「あなたは…私を騙したのか? 」 絞り出すように言う。怒りが込み上げてくるが、体に力は入らない。 「そうよ。あなたは違法麻薬と知らず薬を飲み続けたの。私の体を使って思い通りにするのは楽だったわ。簡単に信じてくれた」 アリーンはしゃがみオームの顎に手を添え持ち上げる。 「私を…愛してたのは…嘘だったのか? 」 「当たり前でしょ? 作戦のひとつよ。でもあなたもいい事あったでしょ? 死ぬ前に女を抱けたのだから」 アリーンはそう言って手を離し立ち上がる。 オームは睨む力もない。 「オーム、さようなら」 振り返る事もせず旧執事家を後にする。 外には待機していた者達がいた。 「後はお願いね」 「かしこまりました! 」 数人が中に入っていく。 アリーンは満足気に微笑み自分の部屋に戻って行った。

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