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第71話
「ルキア、どうするの? 」
チヒロが聞いてきた。チヒロもアルフが捕まると、自分も元の世界に帰れないかもしれない。
自分のせいでチヒロにも迷惑をかけたくなかった。
「うん、やっぱりアルフ様が前に行っていた、王妃様の器を探した方がいいと思うんです。その器に毒が残ってるかは分かりませんが、軽く洗っただけなら底にこびりついてる可能性もある」
「そうね、私達が調べたら分かるかもしれない」
「うん、ただアリーン様の部屋のどこにあるか…カオ様、予想とかつきますか? 」
「母上の部屋の寝室に入る事はないから、大事な物はそこかもしれない。ただ、母上の寝室には側近のメイドしか入れないから、入るのは大変だと思うよ」
「そうね…そのメイドを買収する事は出来ないかしら? 」
「サニー様、それは難しいと思いますよ? 私もカオ様もお金を渡されても裏切らないので、一緒だと思います」
「それならやはり黙って入るしか…母上が政務をしている時とかに…」
「それも難しくないですか? コーン侍医の様に護衛の者がいない部屋には入りやすいですが、常に護衛官が立っています。私の魔法でも扉が開かない事には中に入れません。入れたとしても出る時も難しいでしょう? 」
「それだと、どうするのが…」
「一応…一かバチかの作戦はあるのですが…」
ルキアの言葉にみんながルキアを見た。
「それは、どんな作戦なの? 」
「余りおすすめは出来ません。他に良い案があればそちらで…」
「ないから悩んでるんでしょ? 言いなさいよ! 」
チヒロが詰め寄る。
「私も聞きたいですね! 」
後ろから声がしガフが入って来た。
「ガフさん! 戻って来られたんですか? 」
みんなが立ち上がりガフに駆け寄る。
「はい、アルフ様の事が耳に入り、戻って参りました。ちゃんと証拠も持ってきましたよ」
「では、陛下の筆跡を真似た人物を見つけたのですね! 」
「はい、今は別の場所に匿っています。家族を殺すと脅され従ったようです」
「そんな…母上はどこまでいくのでしょう…」
「カオ様、お気持ちはわかります。早く止めてこれ以上罪を重ねるのは止めてもらいましょう」
ガフはカオを抱き締め優しく慰めた。
「ルキア殿、その作戦とはどのようなものですか? 」
「実は、カオ様に協力をしてもらう形になります」
「カオ様に?」
「私が役に立つならなんでも言ってくれ! 」
「えっと、シュリム国のローレン王女がいますよね? アリーン様がお気に入りの…」
「ローレン王女は確かに母上のお気に入りで、私に婚約するよう言っているが、なんの関係が? 」
突然ローレンの名前が出てきてみんなびっくりした顔をする。
ルキアは続けて説明した。
「そのローレン王女に来て貰って、アリーン様のお部屋で会うんです。それで2人にして欲しいとお願いしてメイド達を外に出します。その隙に、私とチヒロさんが中に入ります。その後、ローレン王女が帰る時に一緒に出るという作戦です…」
ルキアの大胆な作戦にみんなが驚く。
「ただ、ローレン王女を騙す形になりまます。今後の関係に問題があるなら難しいと思います。でも、カオ様がローレン王女と婚約を結ぶおつもりがないなら、早めにお伝えするのもこの先を考えると良いのかもと考えた次第です」
「なるほど…だから一かバチか、なのですね? ローレン王女の心が分からない限りとても危険ではあります」
ガフの言葉にカオは悩んだ。ルキアの言う通りローレンと婚約は出来ない。ガフを愛している。
いつかは伝えなければいけない、先延ばしにするとローレンの結婚も遠のいてしまう。
このタイミングが正しいかは分からないが、急いでる今他の案を考えている暇もない。
「ルキア、分かった。ローレンに手紙を出してみる。母上にも会いたいと伝えとく。その後はどうなるかは、やってみないと分からないけど…」
「カオ様、よろしいのですか? 」
ガフの言葉にカオは微笑んだ。
「はい、兄上を救うためには私も覚悟を決めます! ローレン王女にバラされたら一緒に逃げてくれますか? 」
ガフはカオの手を取りキスをしながら、もちろんですと言った。
「はいはい、そこの2人。イチャつくなら終わってからにして。カオ、頼んだわよ? 」
「うん、分かった! 」
「ガフさん、アルフ様の所へ行く事は出来ますか? 」
ルキアが気になっていた事を聞いた。
「アルフ様のいる収容所はとても警備が厳しくて、入れるか分かりません。ただ、兵士に知り合いがいるかもしれません。それなら可能性はあるかと思いますが、それでも少しだけだと思います 」
「それでも大丈夫です! 心配なので顔が見たいのです! 」
「ルキア、それなら私に任せて! 」
サニーが自信たっぷりに言った。
「えっ? 」
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夜になり辺りが暗くなる。
ルキア、サニー、ガフは、宮殿内の収容所にいた。
入口には兵士達が立っている。
「ガフさん、知り合いの人はいますか? 」
「ああ、あそこに後輩がいる。話をしたら分かってくれるだろう。アルフ様にも良くしてもらっていたから」
「じゃあ他の人は任せて! 」
「サニー様、何をするのですか? 」
「いいから見てて! 」
そう言うとサニーは両手を前に出しクロスする。
暫くすると辺りがモヤにかかってきた。
霧だ。サニーが魔法で霧をだしている。
どんどん辺りが霧で覆われていく。少し前も見えなくなった。
兵士達がザワザワしだした。
「おい、火をつけろ! 」
「ダメです! この霧で消えてしまいます! 」
「さっ、今のうちに! 」
「サニー様、ありがとうございます! 」
ガフとルキアは兵士達の所に行き後輩に声をかける。
《おい、私だ》
《ガフ様! もしかしてこの霧は…》
《そうだ、済まないが少しだけアルフ様に会わせてくれ》
ガフの言葉に少し戸惑ったが直ぐに頷いた。
《分かりました。ここは私に任せて、中に入って下さい。入れば直ぐに分かります》
《恩にきる。ルキア殿、急ぎましょう》
《はい、ありがとうございます》
2人は霧に紛れ中に入る。
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