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第72話
中に入ると一部屋に灯りが点っていた。
ルキアはかけより中に声をかける。
《アルフ様、アルフ様》
《ルキアか? 》
中でアルフが声を出し近づいてきた。
ルキアだと確かめたアルフは、柵の中から手を出しルキアの頬に触る。
《本物だ。幻ではないのだな? 》
《はい、私です。アルフ様、お風邪は引いていませんか? 》
ルキアの手を握り甲にキスをする、
《私は大丈夫だ。ここによく入れたな? 》
後ろのガフを見た。
《はい、サニー様が》
《サニーが? そうか霧を出したのだな? 》
《はい。入口に知り合いの兵士さんがいたので、入れてもらえました》
《そうか、みんなに感謝しなくちゃな。こうしてルキアに会えた》
アルフの言葉にルキアは涙をこぼす。
《アルフ様、すいません。全然役に立たなくて…アルフ様をこんな所に入れてしまいました…》
《ルキア、泣くな。私は大丈夫だ。お前は私の役に立っている。ルキアの事を思うだけでどこにいても頑張れる》
アルフはルキアの顔を両手で挟み、おでことおでこをつけた。
《ルキア、愛してるぞ》
《私も、愛しています…》
アルフは柵越しにルキアにキスをする。
《さっ、もう戻らないとまずいぞ。帰りなさい》
ガフが1枚の紙をアルフに渡した。
《アルフ様、この中に細かい事は書いております》
《分かった。早く行け、次は塀の外で会おう》
《はい》
ルキアとガフは急いで外に出る。
外はまだ霧に覆われて視界が分かりづらい。
さっきの兵士が相槌をうち、向こうに行くように促した。
ガフとルキアは、霧の中に飛び込みたちまち姿が見えなくなった。
サニーがいる所まで急いで戻る。
「サニー様、お待たせしました! 」
「戻ってきたのね! よかった、そろそろ限界だったのよ」
そう言うと全身の力を抜いて座り込んだ。
たちまち当たりは霧がはれ綺麗な星空が見える。
ルキアは空を眺め誓った。
(絶対、アルフ様と一緒に星空を見るんだ! 諦めないぞ! )
「ルキア殿、戻りましょう! 」
ガフがサニーを抱き抱え声をかける。
「はい。サニー様、大丈夫ですか? 」
「大丈夫よ力が入らないだけ。ガフにお姫様抱っこされるなんて、カオに怒られるわね」
「冗談を言える元気がおありなら大丈夫でしょう」
「ガフ、酷いわ! 私、頑張ったのよ? 」
「分かってます。暴れると落ちますよ」
3人は急いで宮殿内に戻った。
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ローレンに手紙を出してから数日たった時、カオはアリーンに呼ばれた。
ローレンが尋ねてきたのだ。
カオは直ぐにガフに知らせた。
「来ましたね」
カオの部屋にみんなが集まる。
「はい、思ったより早かったですね? 」
「アルフ様を思うと早い方が良いでしょう。カオ様、大丈夫ですか? 」
ガフが心配そうに声をかける。
「はい、大丈夫です。王女に殴られる覚悟で行きます」
「私とチヒロさんが後ろからついていきますので、安心して下さい」
「お願いします」
カオは深呼吸をして覚悟を決めた。アルフの事を考えると躊躇してる暇はない。
カオはアリーンの部屋に向かい扉をノックした。
「母上、カオです」
「入りなさい」
「失礼します」
中に入る時扉を大きく開けた。その横をルキアとチヒロが通り過ぎて、ソファの裏に回る。
カオは中に入りソファにローレンが座っているのを確認した。
「ローレン王女、お久しぶりです」
「カオ王子、ご招待ありがとうございます」
「カオ、ローレン王女が手紙を見て会いに来てくれたわ。ちゃんと相手するのよ」
「はい、わざわざ来て頂きありがとうございます。道中は大丈夫でしたか? 」
「はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
ローレンはカオに気にかけてもらって嬉しそうに頬を赤くした。
その様子にカオは胸が傷んだ。
これからこの子を傷つけてしまう。仕方ない事とはいえ辛かった。
アリーンは2人の様子に満足し席を立つ。
「カオ、私は会議に行くから、ローレン王女をよろしくね」
「母上…」
カオが言いづらそうに声をかける。
「どうしたの? 」
「出来ればローレン王女と2人だけでお話がしたいのですが…」
カオの言葉に驚く。自分の息子がこんな積極的な言葉を言うとは思わなかった。
「そ、そう。ローレン王女が大丈夫ならみんなを下がらせるわ」
アリーンはローレンを見た。
「私は、大丈夫です…」
恥ずかしそうに顔を下に向け答える。
以外に大胆な子ねと、心で思いながらも2人が乗り気なら話が早い。これを機会に婚約に持っていけば、シュリム国との貿易もスムーズに話がいく。
「そう、ならいいわ。皆、下がりなさい」
メイド達を下がらせ自分も部屋を出ていく。
アリーンの部屋で2人きりになりカオは息をはいた。
「ローレン王女、ありがとうございます」
カオは事前に手紙に大事な話があるから2人きりになりたい。それでも良ければ来て欲しい、と書いていた。
「私は、大丈夫です。何か大切なお話があったのですね? 」
「はい、大事な話です…」
カオは覚悟を決めて立ち上がった。
そしてローレンを見るとその前にひざまずき、土下座をした。
「カ、カオ王子? 」
突然のカオの土下座にローレンは驚いた。
「ど、どうされたんですか? どうか、立って下さい! 」
慌ててカオを立たせようとする。
カオは立たずに頭を床につけたままローレンに言った。
「ローレン王女、お願いです。今から見る事は誰にも言わないで下さい! 兄上の命がかかっています! 」
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