73 / 88

第73話

「兄上? カオ様のお兄様ですか? 」 「はい、第三王子のアルフ兄上です」 ローレンは訳が分からなかったが、カオが土下座したままなのがいたたまれない。 「カオ様、どうゆう事かわからないので、とにかく座って説明をして下さい。このままでは私が困ってしまいます」 それでもカオは土下座をしたまま言葉を続ける。 「ですが、私はあなたを騙してここに来て頂きました。あなたの心を利用したのです。全てお話しますが、ここでの事だけは黙ってて欲しいのです。身勝手なお願いなのは分かっています」 「騙すとは? お手紙の内容が事実とは違うのですか? 」 手紙にはローレンの事が気になっている。もう一度会って話がしたい。と書いていた。 「はい。ローレン王女、申し訳ございません。私には好きな方がいます。あなたと婚約は出来ません」 カオは土下座をしたまま1番言いづらい事をローレンに伝えた。 ローレンは、カオの言葉に力が抜けソファにストンと座る。 「そうでしたの…確かに、少し不思議に思ったのです。今までのお手紙と内容が違ったので…それでも、私は嬉しくて…でも、私を連れて来る為なんですね? 」 「はい、その通りです」 ローレンはしばらく黙ったままカオを見ていたが、ふぅーと長い息を吐きカオに声をかけた。 「カオ王子、話は分かりました。どうか、お座りになって下さい。詳しくお話して下さい」 「ローレン王女、よろしいのですか? 」 「そこまでのご事情がおありなんですよね? もちろんショックはありますが、カオ王子を恨むつもりはございません」 「すいません…」 カオは立ち上がりソファに座った。 今回何故ローレンを呼ぶ事になったかを、説明した。 ルキアが異世界から来た事は言わず、自分の母親と王妃の事、アルフが今拘束されている事、この部屋に証拠があるかもしれない事などを、隠さずローレンに話した。 カオの話を聞いていたローレンは、驚きが隠せない。 アデウス国がこんな状況になっているとは知らなかった。 「という次第で来て頂いたのです。母上のお気に入りのローレン王女とでしたら、疑われないと思いまして…」 「そうでしたの…それはとても大変でしたね。分かりました。私の恋心など大した事ないですわ。ご協力致します」 少しお茶目にローレンが言った。 「すいません…あなたまで巻き込んで…」 「カオ王子、先に1つだけ教えて下さい」 「はい」 「カオ王子のお好きな方はどんな方なんですか? 」 「えっ? 」 急にふられカオは赤くなる。それを見たローレンは自分に全く脈がないのを実感した。 好きな人を思い出し顔が赤くなるカオはとても可愛かった。自分ではそんな顔にする事は出来ないと分かったのだ。 「カオ王子をそんな風にするなんて、とても素晴らしい方なのですね? どこかの王女様ですか? 」 ローレンの言葉にカオは更に赤くなりながら説明した。 「えっと…実は、アルフ兄上の側近のガフ殿という方なんです」 「えっ? アルフ王子の側近? 」 素っ頓狂な声が出た。 ローレンはアルフ王子を社交界で見かけたが、隣には男の人がいたはず。 「もしかして、カオ王子のお好きな方って男の人なんですか? 」 「は、はい…」 「そうだったのですね? そうですか…」 しばらく驚きで声も出なかったが、カオが正直に話してくれた事に感謝をした。 「カオ王子、正直に話してくれてありがとうございます。約束通りご協力しますわ 。その器を一緒に探せばよろしいですか? 」 なんだか吹っ切れて笑顔になる。 「あ、いえ、ローレン王女は私と一緒にお話をしていてくだされば…その間に2人が探しますので」 「2人とは…? 」 『私達です、ローレン王女』 「きゃ! 」 突然後ろから声がしびっくりして飛び上がる。 振り向くとルキアとチヒロが立っていた。 「えっ? いつの間に? どうゆう事なの? 」 「驚かしてすいません。ローレン王女、こちらは兄上の侍医ルキアと、サニー王女の侍医チヒロです」 「は、はあ…あら? あなた、社交界でアルフ王子と踊っていた方ね? 男の人だったのね」 「はい」 次から次へと色々出てきてローレンは困惑が隠せない。 「はあ…よく分かりませんが、分かりました。私は大人しくしてるだけでお役にたつのですね? 」 「はい、ご無理を言ってすいません。私も医学はわからないので、こちらの2人に任せた方が早いと思います。ルキア、急いでくれ! 」 「はい。チヒロさん、行こ! 」 「分かってるわよ」 ルキアとチヒロはアリーンの寝室にはいる。 至る所に棚がありどれも鍵がかかっている。 「大事なのをしまいそうな場所は…」 「アリーン様のメイドから、絶対掃除しなくていい棚があるって聞いたわ。きっとその中にあるのよ」 ルキアとチヒロは跡が残らないように慎重に探していく。 その間、ソファでカオがローレンにガフとの馴れ初めを追求されていた。 吹っ切れた様に明るく接してくれるローレンに感謝しつつも、根掘り葉掘り聞かれるから早くルキア達に戻ってきて欲しかった。 「ルキア、きっとこれだわ! 」 チヒロがルキアを呼ぶ。急いでそこに行くと、小さな棚があった。 他の棚より頑丈な南京錠がついていて容易く開けられそうもない。 「この鍵は開けるのは難しそうだな…鍵はどこかにあるかな? 」 周りを探していたが中々見つからない。 声を聞いたカオとローレンが入ってきた。 「ルキア、分かったのか? 」 「カオ様、多分この棚だと思うのですが鍵が見当たらなくて…」 「鍵か…」 ローレンが思い出した様に口を開いた。 「あの…」 「なんですか? ローレン王女? 」 「前にアリーン様にお会いした時、ドレスの胸元から、ネックレスが出たのですが、そのネックレスの先に鍵らしき物がありました」 「本当ですか? 」 「はい。外に出さず閉まっていたので、不思議に思い覚えていたのです…」 ルキアとカオは顔を見合わせた。アリーンが、肌身離さず持っているとは想定していなかった。 「そうなると、壊すしかないのか…」 「でも、壊すと直ぐにバレてしまいます。ここに居たお2人に疑いがかかります。今回は見送って、鍵を確保する方法を考えないと…」 ルキアはアルフを今すぐ助けられないと落ち込んだ。 その様子を眺めていた、ローレンは再度口を開いた。 「あの…鍵がなくてもこの扉が開けば良いのですよね? それでしたら私出来ますよ」

ともだちにシェアしよう!