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第75話

「ルキア殿、どうでしたか? 」 アルフの部屋に戻ると、ガフとサニーが待っていた。 「はい、器を手に入れました! 至急調べて頂きたい事があります! 」 ルキアは器を見せながらガフに調べて欲しい事を要求した。 「はい、分かりました! 直ちに調べます」 その時カオとローレン王女が入ってきた。 「カオ様、大丈夫でしたか? 」 ガフが駆け寄る。 その様子を見たローレンは2人が恋人同士と気づいた。 「カオ様、そちらが噂のガフさんですね? 」 「はい。ローレン王女、私の大切な人です」 カオの紹介にガフはローレンに挨拶をした。 「ローレン王女、今回はご協力頂き感謝致します」 ローレンはマジマジとガフを見ながらガフの周りを1周した。 「カオ様、素敵な人ですね。この方ならカオ様の恋人でも文句は言えないわ」 「ローレン王女、今回は危ない事に巻き込みご迷惑をかけました。王女がいなかったら鍵は開きませんでした。本当に感謝しています」 ルキアは改めてローレンに感謝を伝えた。 「ルキアさん、いいんですよ。私も久しぶりに楽しかったです! あんなドキドキしたのは初めてですわ! また何かあれば誘って下さい! 」 ローレンが目をキラキラしながら話す。 サニーとチヒロは楽しそうに笑った。 「ローレン王女はサニー様と同じで好奇心がおありなんですね? 」 「あら、チヒロ? 私がいつそんな事を? 」 「いつも誰かの恋にギャーギャー言ってるではありませんか? 自分の恋人探しはさっぱりなのに」 「酷いわね、あれは私の楽しみなのよ! ローレン王女、よかったら私の部屋でお茶しない? 女同士で楽しみましょ! 」 「いいんですの? ありがとうございます! 」 ローレンは、サニー、チヒロと共に部屋を出て行った。 「女の人って強い…」 ルキアがボソッと言った。 その時、慌てた様子の執事が入ってきた。 「ガフ様、大変です! 」 「どうした? 」 「さっき大臣達が話していたのですが、明日にアルフ様の裁判をすると! 」 「なんだと! 」 「えっ? どうゆう事ですか?」 ルキアは執事に詰め寄り問いただす。 「詳しくはわかりません。まだ内密みたいなので。たまたま通りかかり聞いたのです」 執事はこっそり聞いた内容を2人に話し始めた。 それは、明日にアルフの裁判をし王位継承権、王子剥奪の罪にした後、フルークを国王に決めると説明した。 「そ、そんな…急に? 」 ルキアは立って居られなくなりその場に崩れ落ちる。 「ルキア殿、しっかりして下さい! 教えてくれて感謝する。この事は秘密に…」 執事は力強く頷いた。 「もちろんです! 私はアルフ様が無実だと信じております! ここで働いている、執事やメイド達も同じ意見です! どうか頑張って下さい! 」 執事の言葉に胸を打たれルキアは立ち上がる。 (そうだ! ここで、諦めてたまるか! ) 「ガフさん、さっきの事を急いで下さい! 私もヨリムさんに、用意してもらう物があるので、行ってきます! 」 「はい、ルキア殿もくれぐれもお気をつけて! 」 2人はタイムリミットまで諦めないと心に決め、行動に移す。 __________________ その夜アルフは柵の中で痛みに苦しんでいた。 アリーンの部下の拷問が酷すぎて体中が痛い。 しかし、どんなに拷問されても頷く事はしなかった。 ルキアやガフ達が絶対助けてくれると信じていたからだ。 「はあ、ルキアに会いたい…」 その時、足音がして1人の兵士が入ってきた。 《アルフ様、私です》 ルキアをアルフに会わせてくれた兵士だ。 《お前か、こないだは済まなかったな感謝する》 《いいえ、私はアルフ様が無実と信じております。今入った情報ですが…》 兵士は明日に裁判がある事をアルフに伝えた。 《そうか、思ったより早かったな…分かった、わざわざ教えてくれて感謝する》 《はい、それと…》 兵士が横にズレるとルキアがいた。 「ルキア? 」 《しっ、外に声が聞こえてしまいます! 》 《すまない、驚いてな…》 《では、ルキアさん、少しだけですよ? 》 そう言うと兵士は持ち場に戻って言った。 《ルキア、ここに来るのは危険だぞ? 》 《分かってます、ですがガフさんから拷問を受けてると聞いて…じっとしてられません! 》 ルキアは傷だらけのアルフの顔に手を当て涙をこぼす。 《痛いですよね? 今治します…》 《待て! 治されたらアリーン達に怪しまれる。このままで大丈夫だ!》 そう言いながらも苦しそうに咳き込む。どうやら肋骨を数本折れてるようだ。 《そんな…このままじゃあ合併症で命を落とすかも知れません! せめて骨折だけでも…》 《お前そんな怪我治したことないだろ? 》 《ないですが、やります! 消える魔法も回数をこなすと倒れなくなりました! 力はついてきてるはずです! 》 アルフに柵ギリギリまで来てもらいアルフの胸に手を当てる。 消える魔法を使う時より神経を集中させ力を込める。 (お願いだ! せめて骨だけでもくっついてくれ! ) ルキアの願いが通じたのかアルフは次第に呼吸が楽になったのを感じた。 《ルキア、もう大丈夫だ。これ以上やるとお前が倒れる。ここから帰れなくなるぞ! 》 ルキアは力を抜き床に手をつきハアハアと息を出す。 かなり体力を使ったが意識は失わなかった。 《アルフ様、これくらいしか出来ずにすいません…》 《ルキア、大丈夫だ。危険な中会いに来てくれて嬉しいぞ》 《アルフ様、明日の事ですが…》 ルキアは今日の出来事を話し明日に備えて動いてる事を伝えた。 《そうか、皆に感謝しないとな》 《はい、みんなアルフ様の帰りを待っています。アルフ様、あの陛下から頂いた手紙はどこにありますか? 》 《あれか? 大事な所に保管してるぞ。明日裁判に持ってきてくれ》 《それなんですが、お願いが…》 ルキアの説明に驚いた。 《そうか、それも一理あるな。分かった、お前の言う通りにするよ》 《はい、では私は戻ります》 《今度こそ塀の外で会おうな》 そう言ってルキアを帰させた。

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