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第77話
アルフの裁判当日。
広場には大臣達が集まっていた。ほとんどアリーンに買収されている者達だ。
アリーンとフルーク、カオが壇上に立ち、アルフが連れてこられるのを待っていた。
ルキアは広場の外でガフの帰りを待っている。
昨日の夜出かけてからガフはまだ戻って居ない。
頼んだ事に難航してるようだ。
しかし、時間がない。ルキアは祈るようにガフの帰りを待つ。
その時、兵士達に抱えられアルフが現れた。
ルキアの前をチラッと横目に見ながら通り過ぎる。
ルキアも黙って頷く。
アルフの登場に場内はザワザワした。
綺麗な顔が傷だらけだからだ。
《あんなに拷問して…》
《あれは酷い…》
《だがアリーン様に反論すれば我々も飛ばされてしまう…》
アルフ派の大臣達は仲間がことごとくアリーンに飛ばされたり消し落とされたりしているのを見ていたのだ。
「皆さん、お静かに! これからアルフ王子の裁判を始めます」
国防大臣が丸めた紙を広げアルフの罪状を読んでいく。
アルフは黙って聞いていた。
「よって、アルフ王子には王位継承権剥奪、王子の称号の剥奪、打首の刑に処します」
国防大臣が、読み終えると一層ザワザワした。
この国で1番重い刑だったからだ。
「アリーン様、流石に打首は…」
反対を申す大臣も現れた。
「それは、今からのアルフ王子の発言しだいです。素直に罪を認めるのなら、流刑だけで留めてあげても良いのですよ? 」
アリーンは誇らしげにアルフを見ながら言う。
その顔は勝ち誇っていた。
ようやくアルフに勝てた。
王妃を排除してもアルフにその面影があり、常にイライラしていた。
自分を脅かす者は徹底的に排除する。
それがアリーンの考えだ。
この国でトップになると嬪妃になるとき決めた。
その為なら息子さえも利用する。
「さあアルフ王子、素直に罪を認めなさい」
再度問いただすアリーンにアルフは微笑みながら答えた。
「やってもない罪をどうして認めるのですか? 証拠もないのに? 」
「証拠はオーム国王陛下の遺書があります」
「だからその遺書が兄上の書いた者となぜわかるのですか? 誰か書いてる所でも見たのですか? 」
「筆跡が同じだったのですよ? 」
アルフの言い返しにアリーンはだんだんイライラしてる態度をだした。
「筆跡なんて字が上手い者が書いたら真似なんて簡単です。もちろん父上が書いたという物も偽物たと私は思ってますがね」
「なんですって? あなたは前国王陛下も侮辱するの? 」
「侮辱も何も本当の事ですよ? アリーン様が良く分かってるではないですか? 」
「アルフ王子、私までも侮辱するの? もういいわ! お情けをかけてあげようとしたのが間違いだわ! 予定通り…」
「ちょっと待って下さい! 」
アリーンの言葉を遮りガフが走りながら中に入って来た。
「ちょっと、大臣以外は入室禁止ですよ! 早く追い出しなさい! 」
アリーンが外に出すよう兵士達に指示する。
「失礼ですがアリーン様。裁判との事で証人を連れて来ました。この者達は部外者ではありませんよ」
そう言うとガフは連れて来るよう指示した。
ヤンデレ率いる兵士達に連れられて入って来たのは、国王の侍医コーンと、知らない男だった。
コーンは全身傷だらけで、殴られたのがよくわかる。
もう1人の男は無理やり連れてこられたのか不機嫌そうだ。
コーンはアリーンを見ると気まずそうに目を逸らし下を向く。
コーンの登場にアリーンが動揺するのが分かった。
「な、なぜ、その者がここにいるの? 」
ガフはアリーンを見ながら説明を始めた。
「実はこの侍医は賭け事がお好きなようで。昨晩、賭け場で借金が返せず取り立て屋に痛め付けられていたのです。たまたま通りかかった私が助けて借金を肩代わりしました。その変わりに知っている事を話すと約束してくれたのです。さあ、話して下さい」
ガフに促され、コーンはアリーンを見ないまま話し出した。
「オーム様を死に追いやったのはアリーン様です! 私がシムドという麻薬をアリーン様に渡しました! 」
「なんだと? アリーン様が? 」
「本当か? 麻薬だって? 」
「シムド? 相当危険な薬だぞ? 」
コーンの告発に大臣達は驚きが隠せない。
アリーンはコーンを睨めつけ怒りが顔に現れる。
「なんというデタラメを! 私を侮辱するつもり? 」
「とんでもございません。本当の事だけ申しております。オーム様の生前元気な時の薬も少量のアスキロを処方しておりました」
更に会場がザワザワしだした。
コーンの告発に皆動揺が隠せない。
「皆さんお静かに! これは本当です。ここに薬のやり取りを書いた帳簿があります。この男は売人でコーン侍医に売っていたと認めました」
「そんなの嘘よ! アルフ王子が私を陥れる為に連れて来たのよ! 」
アリーンは怒りを見せながら反論する。
そんなアリーンを見ながらアルフが口を開く。
「なぜ、私がそのような事をしなければいけないのです? アリーン様を陥れる理由はありませんよ? 」
「あるわ! あなたは次の国王になりたいのよ! 陛下の手紙に多数決で国王を決めると書いていたわ。自分が選ばれないと思って私に罪を擦り付けてるのよ! 」
アリーンの言葉にアルフは大笑いをしだした。
緊迫した雰囲気の場には相応しくない位明るく楽しそうだ。
「な、何がおかしいのよ! 」
アルフの態度に益々イライラする。
「そりゃおかしいですよ? 私は父上から直接時期国王になるようお話を頂いたのですから。もちろん手紙もありますよ? 」
「そんなの嘘よ! 」
「本当ですよ。今からお見せしましょう」
そう言うと、アルフは両手を広げ力を入れた。
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