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第78話
アルフの手の平から風の渦が出てきて小さな竜巻がおきた。
それはどんどん大きくなり会場全体に突風が巻き起こる。
大臣達は飛ばされないようお互いにしがみつく。
「なんだ、あれは? 」
「まさか、アルフ様は風もお使いになられるのか? 」
「そんなまさか! 皇族は1つだけじゃないのか? 」
「しかし、実際アルフ王子が風を使ってるではないか! こんな力があるならすぐ国王になれるはず、オーム国王を陥れる理由はないでは無いか! 」
「確かに、では今回の事は? うわっ! 」
風はどんどん強くなりアリーンもフルークにしがみつく。
「アルフ王子! 止めなさい! 」
大きな声で怒鳴るが風にかき消され聞こえない。
「フルーク、アルフ王子を止めて! 」
「しかし、俺が離れると母上は飛ばされますよ? 」
フルークは冷静に言った。
「もうっ! ! 一体何なの? いい加減にしてー! 」
アリーンがありったけの声で叫ぶと風が止まった。
「ハアハア、アルフ王子! 何がしたいの? 」
「これですよ」
そう言ったアルフの手には1枚の手紙が握られていた。
「これは、父上が私に託した手紙です」
国防大臣がアルフの元へ行き、その手紙を受け取る。
中を読むと顔が驚きの表情へ変わった。
「こ、これは…アルフ王子、どうゆう事ですか? この日付けは国王が倒れた日ですよ? 」
「実は父上は意識が戻りました。襲われたので危機を感じ、私だけを呼んだのです。その時に渡されました」
「そんなの嘘よ! 陛下は今も意識が戻らないとコーン侍医が言っていたわ。アルフ王子は私に罪を擦り付ける為に嘘の手紙を持ってきたのよ! 」
「アリーン様、嘘かどうかは今分かります。もう1つの手紙を見てくれ」
「わ、分かりました」
国防大臣がもう1つの手紙を取りに行きアルフのと見比べる。
「どうだ? 少しだが、字が違うだろ? 前の手紙が嘘だと分かる」
アルフの言葉に大臣達はどよめく。
「どういう事だ? 」
「前の手紙が嘘なら誰が書いた? 」
「アリーン様は陛下が書いたと言っていたぞ? 」
「アルフ王子、今になって突然そんな事を言っても信用出来ません! 私が嘘をついてると言うの? 」
「その通りですよ、アリーン様。あなたは私を陥れる為に嘘の手紙を用意した。そしてオーム兄上を唆し自分の味方にしたのです! 」
アリーンはその言葉に怒りを示す。
ここにきてのアルフの反撃にイライラが顔に出てきた。
「アルフ王子、コーンを唆したり嘘の手紙を見せつけたり罪を増やすつもり? 」
「罪を増やすのは私ではなくアリーン様ですよ。ガフ! お前が戻って来たという事は連れて来たんだな? 」
「はい、今連れて来ます」
ガフはそう言うとヤンデレに合図した。
ヤンデレと共に入ってきた人物を見てアリーンの顔色が変わる。
「おや? アリーン様、顔色が変わりましたね? この人物を知っているのですか? 」
「し、知らないわ。誰なの? 」
「おかしいですね、この人物はアリーン様を知っていますよ? さあ、話しなさい」
アルフが声をかけるとその人物は1歩前に出て話し出した。
「はい、私は本書きです。以前何回か陛下の元で、本書きの指導をさせて頂いていました。その時に陛下の字を覚えました。少し前にアリーン様のお仕えの者が突然来て、私を拘束しました。陛下の字を真似て手紙を書けと…」
「なんだって? 」
「やっぱり、あれは偽物なのか? 」
会場がザワザワとしだした。
「そんなの嘘よ! 私はあなたの事なんて知らないわ! 」
明らかに動揺が出てきたアリーン。何とか冷静を保とうとしていた。
「続けて」
「はい、最初は断りました。そんな違法行為は許されません。しかし、アリーン様は私の家族も拘束し、書かないと妻と娘を殺すと言われました。私は従うので家族を解放するようお願いしました。しかし、書いた後も拘束されたままで、解放してくれませんでした。そのせいで、私は罪を償う事も出来ず、公にする事も出来ませんでした…しかし、昨日ガフ様が訪れ私達家族を救って下さったのです! お陰で本日罪を公に出来たのです! 」
物書きはアルフに頭を下げた。
「アルフ様、家族を助けて頂きありがとうございます! 」
「気にするな、お前の存在に気づいたのは私ではない。私の愛する人だ。その人物が、アリーン様の悪事を見つけてくれた。ルキア! 」
アルフは会場の外にいたルキアを呼んだ。
ルキアはヨリムと共に会場に入ってきた。
「アルフ様、こちらになります」
ルキアは布に包まれた物を渡す。
「アリーン様、これが何か分かりますか? 」
「そんなの知らないわ! 」
「本当ですか? 私には見覚えがありますが? 」
アルフはそう言うと、布を解き、器を見せた。
「そ、それは…どうしてここに? 」
アリーンは思わずよろめく。
「これは、アリーン様の寝室に保管されていた私の母上が亡くなった時に使っていた器です! 」
アルフは大臣達に見えるように器を上に掲げて見せた。
「あ、あれは! 」
「王妃様が愛用されていた器ではないか! 」
「陛下の紋章が入ってるぞ! 」
「なぜそれがアリーン様の部屋にあったのだ? 」
アリーンは立って居られなくなりフルークに支えられる。
なぜあの器がここにあるのか分からなかった。
厳重に保管していて鍵も自分が持っている。
誰にも開ける事は出来ない。
誰が取ったと言うのか? 分からなかった。
「アルフ王子、なぜ私の部屋の物と? あなたは私の部屋に勝手に入ったのですか? それなら重罪ですよ? 」
「私は入ってないですよ? 塀の中にいましたからね」
アルフはお茶目に言って「持って来たのはその者ですよ」と壇上を見ながら言った。
「母上、私です」
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