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第79話

カオが名乗り出た。 「カ、カオ…? ど、どうしてあなたが…」 カオの言葉にアリーンは驚く。 「母上、私がその器を持ち出しました。王妃様の突然死の事を不審に思っていたアルフ兄上に協力しました」 「あ、あなた…」 アリーンは怒りのままカオをビンタした。 バチンッ! と大きな音が響く。アルフの横にいたガフが思わず前に乗り出す。 「ガフ、落ち着け」 アルフに制されなんとか留まる。 「カオ、私を裏切ったのね? 母上を裏切るとはどうゆう事! 」 カオは叩かれた頬を悲しそうに手で抑え涙目でアリーンを見た。 自分を産んでくれた母親だがここまでしても息子に怒りをぶつける。 自分の邪魔をした人物は息子さえ邪魔だと思っている母親に涙が零れる。 しかし今の自分にはガフがいる。アルフやルキアも。 カオはキッとアリーンを睨み返した。 「母上、何を怒るのですか? 器を調べて 何も出なければ母上の潔白が証明されるのですよ? 」 「あなた、いつの間に変わったの? 母親思いのカオはどこに行ったの? アルフ王子に騙されてるのね? アルフ王子は自分が国王になりたいから、あなたを騙してるのよ? 」 「それは、母上ですよ? 私を利用しようとしましたね? フルーク兄上より私を国王にしたいと唆して! 」 「カ、カオ、その話はよしなさい! 」 アリーンは慌てて遮る。まさかここでその話をするとは思わなかった。 フルークは冷静に母親とカオのやり取りを見ていた。 自分の予想が当たっても何も思わない。国王だの、皇族など、どうでも良かった。 全てが馬鹿らしい。 冷ややかな目でアリーンを見る。 壇上で繰り広げられている親子のやり取りを見ていたアルフは咳払いをした。 「その話は後でお願いします。こちらの器の説明をさせて下さい。ヨリム」 「はい、調べた事をお話します」 ヨリムは器を大臣達に見せながらそこが黒ずんでいる理由を説明しだした。 「この黒ずみはシムドによる物です。金の器の場合、シムドを使用すると化学反応を起こし黒くなるのです」 ヨリムの言葉に会場中の大臣達は顔を見合わせながらお互い囁き合う。 アルフはヨリムの説明が終わると、アリーンの方へ向き問いかける。 「アリーン様、もうこれで言い逃れは出来ませよ? 母上を殺めたのはあなただ! 罪を重ねる前に終わりにしましょう」 アルフの言葉にアリーンは睨み返し反論した。 「嫌よ! あなたが私を陥れたのに罪を認めろですって? あなたの裁判よ! いいわ、とにかく多数決で次の国王を決めましょ! こんな嘘つきより私の息子フルークの方がいいでしょ? そう思う人は手を上げなさい! 」 ヒステリックに叫びながら大臣に呼びかける。 本来フルークに手を上げる予定だった大臣達はお互い顔を見合わせ下を向く。 これ以上関わると自分達も仲間だと思われ罪に問われてしまう。 それは避けたかった。 「何を黙ってるの? 早く手を上げなさい! 」 どんどんヒートアップしたアリーンが叫ぶように言った。 「母上、落ち着いて下さい。そんな声を荒らげたら、誰も言う事なんて聞きませんよ。ここは国王陛下に判断してもらいましょう」 カオはそう言うと「入って来て下さい! 」と、大きな声を出した。 入口の扉が開き大臣達は一斉にそちらを見る。 「な、なんと…」 「ま、まさか…」 ヨリムに支えながら入ってきたのは国王だった。 ゆっくりだがしっかりした足取りでアルフの横まで来て、アルフの肩に手をかける。 「アルフ、良くやったな」 「父上、ありがとうございます」 国王の登場に大臣達は皆ひれ伏せる。 「陛下! 」 「陛下、ご無事で何よりです! 」 「陛下、万歳! 」 アリーンはよろめき膝をついた。国王の登場に立っている事も出来ない。 カオもフルークも支える事はしなかった。 「へ、陛下…意識が戻られたのですね…」 「ああ、大分前にな。危険を感じて隠していたが、その通りだったな。アリーン、やりすぎだ」 国王はそう言うとゆっくり壇上に上がり皆を見渡した。 「この通り、私は生きている。話は全部聞いていた。アリーンの手紙は偽物だ。アルフが持っているのが本物で私が書いた」 国王は手紙を渡すよう国防大臣に言った。 その手紙を開き、 「ここに書いてる通り次期国王にアルフ王子を任命する! 」 と、宣言した。 オー!! とどよめく。 ルキアとアルフは抱き合った。 ルキアの念願が叶った瞬間だった。 (良かった! 本当に良かった! アルフ様が国王だ! ようやく叶った! ) 読み上げると国王はアリーンを見た。 「アリーン、お前は称号を剥奪して、流刑の罪にきす。しかと、反省しなさい」 兵士達に手を取られても放心状態で暴れもしなかった。 長年の希望が打ち砕かれ、息子にも見放され、抵抗すり気力もなくなっていた。 アリーンは大人しく連れられ出て行った。 国王はフルーク、カオの方を向く。 「フルーク、お前の話は聞いている。アリーンに協力した事も多いのだろ? 」 「はい、父上。言い訳はしません。どうぞ罪に…」 フルークは覚悟を決めていた。 散々、悪事をしてきた自分を国王が許すとは思わなかったし、それで良かった。 「フルーク、お前には王子の称号を剥奪する。それに加え5年の奉仕活動をしろ。場所は決めている」 「えっ? 」 驚いて国王の顔を見る。当然母親と同じ流刑だと思っていた。 「お前は小さい時からアリーンに洗脳されていた。止めなかった私も悪い。お互い反省しなければいけない。奉仕活動には、ファーストを同行させて監視させるから真面目にやるように」

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