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第80話

その言葉でフルークは分かった。 ファーストがなんかしら動いたのだと。 フルークの読みは正解だ。 ファーストがガフに頼んでいたのだ。 最近のフルークの変化を伝え、アリーンの裏切りを理解して国王になりたいと思っていないと言う事を。 それをガフがアルフに、アルフが国王に伝えていた。 (あいつはいつも余計な事を…) ファーストに心の中で文句を言う。 「父上、寛大な処置ありがとうございます」 フルークは頭を下げた。 「カオ、お前はどうしたい? 王子のままで良いが、この宮殿を出たいならそれでも構わない」 国王はアルフからカオとガフの事を聞いていた。 「父上、私は…」 「陛下! 私からお話があります! 」 カオが話だそうとしたのをガフが遮る。 「ガフ、なんだ? 」 「こんな時にお話、失礼します」 ガフは国王の元に行き、膝まづく。 「陛下、私はカオ様を愛しています。カオ様と結婚させて下さい! 」 突然のガフのプロポーズに、今日一会場が揺れる。 扉の外で覗いていたメイド達から歓声が聞こえる。 「ガ、ガフ殿? 」 カオも狼狽えていた。突然、父親の前でプロポーズをされたら誰だって動揺する。 国王はガフの言葉を聞いて驚いた後に笑った。 「ハハ、お前は堂々としているな? だ、そうだ。カオ、どうする? 」 「は、はい。父上、私もガフ殿と結婚したいです。王子の称号はいりません。ですが、ここで働かせて下さい! ガフ殿と一緒にアルフ兄上を支えたいのです」 「そうか、分かった。では、王子を剥奪する。これで誰とでも結婚出来る。伯爵の称号で、アルフに仕えるとよい」 「父上、ありがとうございます」 「陛下、ありがとうございます」 2人で頭を下げる。 ルキアはその様子を見て本当に嬉しかった。 長かったカオの思いが実りしかも結婚まで出来る。 友達として嬉しくて仕方がなかった。 「さ、今日はこれでおしまいだ。アルフの国王認定式は3日後に行う! しかと準備するように! 」 『はい! 』 大臣達は一斉に返事をした。 __________________ 「カオ、結婚おめでとう! 」 アルフの部屋に戻り改めてサニーが抱きついて喜ぶ。 「サニー、ありがとう」 カオも嬉しそうに言った。 「お兄様も無罪が分かったし、アリーンも排除出来た! ようやく皆、ハッピーエンドね! 」 サニーの喜びに皆が笑顔になる。 「サニー、ありがとうな。霧を出してくれたんだって? 疲れたろ? 」 アルフがルキアを会わせてくれた時のお礼をする。 「大丈夫よ、役に立てて嬉しいわ。ガフにもお姫様抱っこしてもらったし」 ウインクしてガフを見る。 「サニー様、誤解を招くような言い方はお止め下さい」 ガブに諭される。 「フフ、冗談よ。さ、チヒロ、私達は帰りましょ。この人達はお互い、積もる話もあるでしょ? 」 「そうですね。私は、この甘い雰囲気に耐えられません」 チヒロは顔を顰める。 「そうだ、早く帰れ。ようやくルキアを腕の中で抱けるのだから。ガフ、お前もカオを連れて自分の部屋に行け」 シッシッと、手で皆を追い払う。 「ア、アルフ様、皆心配したのですよ? 」 「ルキア、大丈夫よ。お兄様はちゃんと分かってるから、じゃあまたね」 サニーはそう言うと、皆を促しアルフの部屋を出て行く。 「ルキア、今日は寝かせて貰えないわね。明日、話を聞くのが楽しみだわ! 」 「サニー様、下品な想像はやめて下さい」 サニーの喜びにチヒロは益々顔を顰める。 この少女は全く自分の恋愛に興味がない。チヒロのゲームは一体どうなったのか。 チヒロはため息をついたが、この自由奔放なサニーも気にいっているので諦める事にした。 (でも、アルフ様が国王になるのが決まったからルキアのゲームはどうなるのかしら? ) 少し不安に思いつつも黙ってサニーの後をついて行く。 「カオ様、私の部屋に来ますか? 」 「はい、もちろん」 「では…」 突然ガフがカオを抱き上げた。 「ちょっ…ガフ殿! 突然何を? 」 急にお姫様抱っこされて慌てる。 「さっき、サニー様のお話の時に少し嫉妬をされていたお顔をされていたので」 「えっ? 気づいていたのですか? 」 カオは恥ずかしくて赤くなった。 「もちろんですよ。私が見逃す筈がないでしょ? 」 カオのおでこにキスをするとそのまま自分の部屋に連れて行く。 その様子を遠くからサニーが見ていたのは言うまでもない。 __________________ 皆が帰って2人きりになる。 アルフはルキアを抱きしめて離さない。 「アルフ様、このままでは動けません」 「動かなくていい、ルキアを堪能させろ」 後ろから抱きつかれているので傷を治せない。 「とりあえず、顔を見せて下さい」 ルキアは体を捩り後ろを向く。 「もう、とりあえず傷を治させて下さい」 両手でアルフの顔を覆い力を入れる。 少しづつ傷が消え、本来の綺麗な顔に戻った。 「ルキア、ありがとう。全然痛くない」 ルキアの頬にキスをして更に抱き締める。 「ア、アルフ様、次は入浴しましょう。体を洗い流さなくては」 ルキアの言葉にムウッと膨れる。 「そんな、私は臭いか? 臭い私は嫌いか? 」 アルフのむくれた姿が可愛くて思わず笑ってしまう。 「違いますよ。臭くはないですが、何日も入ってないので気持ち悪いと思っただけです」 「でも、もう少し、ルキアを抱き締めていたい…」 駄々をこねるアルフにルキアはため息をついた。 「全く、次期国王がこんなんで良いのですか? 威厳なんてないですよ? 」 「婚約者の前で威厳なんていらない」 「もう、では私も一緒に入りますから」 「本当か!? 」 ルキアの言葉に嬉しそうに尋ねる。 「はい、それなら入ってくれますか? 」 「もちろんだ! 直ぐに準備しろ! 」 そう言うと、ルキアを抱き上げ急いで入浴場に連れていく。

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