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第86話

「やっぱりそうなのか? 」 ルキアは机に近づいて行く。 ルキアが机に近づいてきた時、ピロンと音がして目の前に文字が現れた。 『おめでとうございます。ゲームクリアしました。元の世界に戻れます。ボタンを押して下さい』 目の前の画面には《戻る》というボタンしか無かった。 「ボタンが、1つ…はい、いいえじゃないのか…押さなければ戻らなくていいんだよな? でも、ここからは出れない…」 ルキアはボタンを押せずに座り込んだ。 最初は軽い気持ちでこの世界に来たが今は戻りたくない。 でも戻らなくてもここから出られないなら同じ。 ルキアは涙を流しながら呟いた。 「俺は戻りたくないんだよ。アルフ様と一緒に居たい…」 ルキアの言葉に目の前の文字が消え別の文字が現れた。 『5分以上経ちましたがボタンが押されていません。元の世界に戻りたくないのですか? 』 その文字にルキアは飛び跳ねるように起き上がり訴えた。 「は、はい! そうです。俺はここに残りたいです! 」 ルキアの言葉にまた新たな文字が現れる。 『この世界に残りたいですか? その理由を教えて下さい』 「理由…もちろん、この世界の方が元の世界よりいいからです。俺は元の世界では1人だった。それでもゲームがあるから気にして無かった。でも、こっちに来て自分が人の役に立つ事の喜びを知りました。それに、初めて人を好きになったんです。俺にとっては大切な人です。アルフ様も俺を一番大切と言ってくれました。傍を離れたくないのです! 」 ルキアは泣きながらここでの生活を文字に訴えかけた。 ルキアが一通り説明するとまた新たな文字が現れる。 『分かりました。しかし、ゲーム上一度戻って頂かなければいけません。 こちらに住みたいのでしたら、向こうの生活を終了しなければいけません。全てを片付けた時、まだあなたとアルフが想いあってるなら戻れるでしょう』 「ほ、本当ですか? 」 『はい。元の世界のあなたの記録を消さなければいけません。やる事は説明します。しかし、戻る時にアルフがあなたを待っていなければ戻れません。元の世界でも生活出来ません。あなたは消えてしまいます。それでも良いですか? 』 「消える…どちらでも生活出来ないのか…」 文字を読んだルキアに迷いは無かった。アルフが待ってないなら、元の世界で生きていても意味がない。 「はい、大丈夫です。アルフ様は絶対待っていてくれます。俺は信じている」 『では、ボタンを押してください』 再度戻るボタンが現れた。 ルキアは深呼吸をし勢いよくボタンを押す。 ウィィィィーーーン 音をたてて、ルキアは緑色に包まれる。 「アルフ様の色だ…アルフ様、絶対戻って来ますから待ってて下さい…」 そう言い終わる前にルキアの姿は消えていた。 「お兄ちゃん、ルキアが戻ってきてる訳ないでしょ? 」 「いや、本当にいたぞ? お前も会えば分かるよ。ルキア、メイカを連れて来たぞ! あれ? 」 ディーンとメイカが部屋に入った時にはルキアの姿は無かった。 「ほら、居ないじゃない? 夢でも見たんじゃない? ルキアは、宮殿で楽しくやってるでしょ? 新しいアルフ国王のお気に入りなんだから」 「いや、確かに…おかしいな…」 ディーンは頭をかきながら部屋を見渡す。 「あれ? 机の引き出しなんて開けてたかな? 」 不思議そうに引き出しをしまい部屋を出て行った。 __________________ 「と言う訳で、元の世界に戻り片付けをして戻って来たのです」 笑顔でアルフに話す。 「ルキア、お前はそれで本当によかったのか? 」 「はい、もちろんです。元の世界に未練はありません」 「片付けとは何をしてきたのだ? 」 「部屋に戻ると、1枚の紙が机の上にありました。部屋を解約しろ、大学をやめろ、親に疑われないように説明しろ、等書かれていたので、1つずつ、やっていたら時間がかかってしまいました」 アルフはルキアを強く抱き締めた。この世界の為に全てを捨ててきたルキア、愛おしくて仕方がない。 アルフの目には薄ら涙が浮かんでいた。 「アルフ様、泣いてるのですか? 」 「ルキア、お前にもう一度会えて嬉しい、本当だ。しかし、お前に元の世界を捨てさせて済まない…」 ルキアはアルフの頬を両手で包み、自分のおでこをアルフのおでこにあてる。 「アルフ様、私に前の世界の未練はありません。父にも挨拶出来たので、思い残す事はありません。ここに居させて下さい。アルフ様のお傍に…」 「ルキア…」 アルフはルキアを抱き締めキスをする。 3ヶ月ぶりに触れる喜びを抑えられない。 ルキアも嬉しくて自分からキスを返す。 アルフはルキアを抱き上げ部屋に戻る事にした。 「ルキア、明日にでも皆に結婚すると言うぞ! 」 「はい! 」 ルキアは嬉しそうに頷く。 「突然、お前が戻ってきて驚くぞ」 「あっ、実はガフさんには既に会ってるのです…」 「なんだと? 」 「アルフ様の部屋に行ったらガフさんがいて、ここだと教えてくれました。なので既に皆に知られてるかと…」 ルキアの申し訳なさそうな言葉にアルフは不貞腐れた。 「し、仕方ないじゃないですか? アルフ様に一番に会いに行きましたよ? でも、居なくて…」 「分かっているが…部屋に戻ったら皆居そうだな…」 アルフはため息をつきながらルキアをお姫様抱っこしたまま部屋に戻った。 部屋を開けてまたため息をつく。 「ほらな…」 予想通り部屋には、ガフ、カオ、サニー、チヒロがいた。

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