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第3話 どうするべきか
ふんわりと柔らかそうな淡い水色の髪、白磁の肌に憂いのある表情、穏やかで優しい声。気遣うように囁きながらその実課金を促してくるのだから恐ろしい。課金しなくても足繁く通うと冒険のヒントをくれたり労ったりしてくれるものだから、オレもしょっちゅう通っていた。
好みどストライクのアールサス様の微笑みに、何度課金したか知れない。
むしろアールサスに貢ぐためにクエストを先に進め、アールサスに貢ぐために現実で稼いだ結果、もちろん友好度はマックスで、恋愛モードに切り替わってからは、貢ぎに貢いで恋愛度も爆上がり中だったんだ。
酷い。
画面の向こうから、あんなに愛しそうな目で見つめてくれてたのに。アールサスが忌み嫌ってた高飛車婚約者ウルクの記憶としては、不機嫌な顔とイヤそうな顔と面倒臭そうな顔しか覚えがない。
おっと、前世の記憶が生々し過ぎてアールサス呼ばわりしてしまっていた。
アールサス様は貴族。
アールサス様は貴族。
自分に言い聞かせる。そもそもたてついていい相手じゃなかった。それに、オレだってさっきまで自分の境遇を理不尽だと思ってたけど、それ以上にアールサス様の方が理不尽だと思っていたんだろう。
あんなに悔しそうな顔をして。
「……」
ふう、とひとつため息をついた。
あのゲームを途中まででも進めていたからこそ分かる。アールサス様がこの婚約をどう感じていて、これからオレ達がどんな関係性になっていくのか。
さっきアールサス様の父親は、「三年我慢してくれ」なんて言っていたが、ぶっちゃけ婚約は結局三年ごときでは解消されない。
あのゲームでアールサス様は二十歳になっていた。つまり今から五年の時を経てもオレことウルクとの婚約は解消されなかったわけだ。あんなにもアールサス様はウルクを嫌っていて、二人はどうしようもなく険悪な関係性だったというのに。
しかもあの容赦ない金の搾り取りよう。あの時点でも巨額の借金が残っていたに違いない。
オレも可哀想だが、アールサス様だって十分可哀想だ。
またひとつ大きなため息が出た。
「……」
さて、どうするべきか……。
さっき聞いたばっかりの、アールサス様の悲痛な声を思い出す。
もうあんな悲しい声なんて聞きたくないよなぁ。
まずは非礼を謝って、これからは出来るだけ嫌味なんて言わないように努力しよう。
それから。
オレは、ゲームの中でのアールサス様の言葉を一生懸命に思い出す。アールサス様は本当に稀に、婚約者の愚痴を言ってた筈だ。控えめにだけど。
少しでも、アールサス様が感じていた苦痛を取り除ければいいって、そう思った。
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