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第13話 【アールサス視点】衝撃の連続

その日ウルクの父親から聞かされた話は、僕にとっては衝撃の連続だった。 いや、お父様に「婚約者が決まった、ひとつ年下の男の子だよ」と言われた時の方がそりゃもっと驚きはしたけど。 どんなに嫌だろうと三年は我慢しろと言われた婚約は、二年で確実に解消すると告げられた。 しかも、会う頻度はこれまで毎週末だったのが月に一度に減らされ、三ヶ月後にはもっと頻度を減らしていくと言う。 突然緩和された条件に何故だと問えば、ウルクの父親は、ウルクに叱られたのだと豪快に笑った。 ウルクを見れば、なぜか申し訳なさそうに深く頭を下げる。いくら嫌味な事を沢山言われたとはいえ、先日酷い扱いをしたのはこちらだと言うのに、彼は終始目を伏せてあまり僕と視線を交わそうとはしなかった。 怒っているのだろうか。 でも彼から怒りの感情は感じない。 この婚約について父親に異を唱えてくれたらしい彼が何を考えているのか分からなくて、気になってチラチラ見ているうちに、彼の頬や手にいくつかの小さな傷があるのに気がついた。先週にはなかった傷だ。 どうして。 疑問に思うも僕たちが話せるような時間は確保されず、淡々と話が進んでいく。 「今日はこれで帰ります。では、またひと月後に」 人好きのする笑みでそう言った父親に連れられて、ウルクは僕とひと言も会話する事なく背を向けた。 「ま……待ってくれ」 もう一度謝りたくて声をかけたら、何か察してくれたのか、ウルクの父親がフッと優しく微笑んだ。 「ウルク、お父様は伯爵様と少しだけ話があるから、お前はアールサス様とお話ししておいで。失礼がないようにな」 「……はい」 ウルクが急に緊張したような顔をした。 やっぱり僕と一緒に居るのは、ウルクにとっても苦痛なのかもしれない。だから、会う回数を減らすように言ってくれたのかも。本好きの僕でもなきゃ、身体が冷え切るまで暗い書庫で放置されるなんて、お仕置きに等しい。 ふと、先週ウルクに言われた言葉が脳裏に蘇る。 「聞こえませんでしたか? 茶の一杯だけ付き合ってくれれば、あとは自室に戻って欲しいと言ったのです」 「そんなつまらなそうな顔で側にいられても、私だって気詰まりです。私は書庫で大人しくしていますから、やりたい事があるならどうぞ、お好きに」 「アールサス様もこの婚約は不本意なのでしょう? 二人でいる時に取り繕う必要などありません。互いの親の前でそれなりに仲良くしておけば良いのでは?」 あの時は、歳下の癖に、こっちの気持ちなんてお見通し、と言わんばかりの高飛車な言い方に物凄くムカついたんだ。

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