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第14話 【アールサス視点】僕の方こそ捻くれてる

でも言われた事は当たってて、それがまた悔しかった。 言われた通りにするのは癪で、でも一緒に居るのも嫌で。 なんでこんなヤツと婚約なんてさせられなきゃいけないんだと思ったら涙が込み上げて来て、ウルクを書庫に案内したその足でお父様に泣きついて。今思い返すと十五にもなって恥ずかしい。 でも、どんなに努力してもお母様の病を癒す事もできず、お父様からは破産寸前なんだと衝撃的な事を告げられて、しかもそれを回避するために歳下の男と婚約するんだって告げられた挙句に嫌味をたらふく言われたあの時は、なんかもう、何もかもがうまくいかなくて、世界中にそっぽを向かれたような気持ちだったんだ。 泣き止んで顔や目から赤みが引くのを待ってたら、思いの外時間が経ってしまっていて、書庫に戻った時にはウルクの体はすっかり冷え切ってしまっていた。 ひとりで書庫に放置されたのがよほど辛かったのか、声をかけても謝ってもさっきまでの威勢の良さはすっかり無くなっていて、ウルクは借りて来た猫みたいに大人しくなっていた。 「先ほどは失礼な物言いをしてしまい、申し訳ありませんでした」 「アールサス様の貴重なお時間をいただくのは申し訳ないので、もうお部屋にお戻りください。私は本があれば時間が潰せますので」 申し訳なく思って謝ったけど、ウルクから返ってくる言葉はそれまでとは全く変わってしまっていて、よく聞けば同じ事を言ってるのに、僕の顔色を窺うような言葉に変換されていた。 高飛車だと憤ったのに。 今度はそれが寂しく感じるなんて、僕の方こそ捻くれてる。 そもそも僕だって態度がずっと悪かった。 何もかもうまくいかない憤りを、僕はウルクにぶつけてしまったんだと思うと自分が情けない。 やっぱりもう一度、ちゃんと詫びよう。 部屋に入ってウルクをふかふかの椅子に座らせると、僕は改めて頭を下げた。 「先週は、本当に申し訳なかった。風邪をひいたりしてないか?」 「大丈夫です。本当に全然、気にしてないですし、健康そのものです」 控えめに笑って見せるウルクを見て、僕の胸はツキンと痛んだ。ウルクはもう、僕に本心を見せる気はないのかもしれない。 二年後には確実に婚約は解消されるんだから、それでいい筈だ。 なのに、なぜか胸が痛い。 目を逸らした時に自分の机の上に昨日錬金術で生成した傷薬があるのが目に入って、僕はそれをそっと手に取った。 「あの……良かったらこれ、使ってみてくれないか? その程度の傷なら多分一瞬で治る」 「!」 明らかに、ウルクの目が輝いた。

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